1.そもそも排泄とは?
そもそも排泄とは、食べ物を体内で分解・消化して体に必要な栄養や水分を吸収し、残った体に不要なものを便として体の外に出すことです。およそ24~48時間で、口から摂った食べ物は便となって排泄されます。
排泄は私たちの体にとって欠かせない生理現象であり、しっかり便が体の外に出ることは、健康である証拠です。
腸が健康であれば、一日に150~250g(卵2.5~4個ほどの重さ)、1~3回の排便があるといわれています。しかし個人差もあり、人によって排便の回数は異なるため、排便時になんらかの違和感を覚えることがなければ問題ないといえるでしょう。
なお、便秘の要因には不規則な食生活、食物繊維や水分の不足、ストレスなどさまざまな原因が考えられます。
2.食べ物の消化・吸収・排泄の仕組み
私たちの体には、口から胃、腸を通って肛門まで続いている消化管が存在しています。食べ物の消化・吸収・排泄はこの消化管の中で行なわれているのです。
口から肛門までの長さはおよそ9mであり、この長い道を通って便が体の外に出ていきます。では、それぞれの器官ではどのような状態になるのでしょうか。
ここでは、各器官でどのような働きがあるのかを解説します。
2-1.口
最初に食べ物を消化するのは口です。口から食べ物を摂り入れてかみ砕き、だ液と混ぜて飲み込む働きをしています。だ液には糖質を分解する酵素が含まれ、食べ物と一緒に胃に入ったあとも働きます。だ液の分泌を促すためには、よく噛むようにしましょう。
口の中でだ液と一緒に混ざった食べ物は、飲み込まれたあと食道へと運ばれます。
2-2.胃
食道を通り胃に入った食べ物は、胃液と混ぜ合わされて、お粥のようになります。胃液にはタンパク質を分解する酵素や粘液、塩酸などが含まれます。塩酸は、カルシウムが小腸で吸収されるのをサポートしたり、細菌の繁殖を予防したりする作用を持っているのです。
また、食べ物が胃に入ると「便を出す」という信号が脊髄・脳を経て腸に送られます。これは「胃・結腸反射」と呼ばれています。
2-3.十二指腸
胃で消化された食べ物が十二指腸に入ると、胃液の分泌が抑制され、胆のうから胆汁、膵臓から膵液が分泌されます。胆汁の役割は脂肪の乳化を行なうこと、膵液の役割は糖質・脂質・タンパク質を分解して消化吸収を助けることです。
十二指腸は胃から送られた内容物を膵液と胆汁と混ぜ合わせて、小腸に送ります。
2-4.小腸
十二指腸で消化液と混ざった内容物が小腸に送られると、今度は腸液が分泌されて大部分の栄養素が分解・吸収されます。吸収された栄養素は、腸の毛細血管やリンパ管を経由して全身へ運ばれてあらゆる器官で利用されたり、貯蔵されたりします。
2-5.大腸
大腸は、小腸では吸収されなかった水分やミネラルを吸収したあとに便をつくり、肛門の近くへ送ります。
大腸内ではあらゆる腸内細菌が活動しており、食物繊維などの未消化物を分解し、消化されず残った不要なものを便として排泄する働きもしています。
排便が滞ることは、体に不要なものがたまっていくということです。そのため、あまり長い間便秘が続くことは体に良くないと考えられます。
便の構造は70~80%が水分であり、残りは1/3が食べ物の残りかす、1/3が腸の細菌、1/3が腸の死んだ細胞でできています。便の状態は健康状態の指標であり、例えば便が硬すぎると、腸内の悪玉菌が多く便秘気味であることが予測されます。
良い便とは、排便時にいきまずに出て黄色または褐色の状態であることが理想的です。
便秘を予防・改善するためには、以下のことに気をつけてください。
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食生活
食物繊維を含む食べ物(野菜・果物・豆類・海藻など)や発酵食品(納豆・味噌・ヨーグルトなど)を積極的に摂りましょう。また、避けたい食べ物は油の多い肉類や菓子類などです。
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適度な運動
便を外に出すためには、腹筋などの力が重要です。運動不足が続くと筋肉の衰えにつながります。歩くときにはなるべく階段を使ったり、散歩を心がけたりして運動量を増やしてみましょう。
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ストレスをため過ぎない
ストレスも便秘の要因となります。あまりストレスをため過ぎないように、うまく解消する方法を見つけてみましょう。また、適度な睡眠も大切です。
健康的な排泄のために、生活習慣を見直しましょう
しっかりと便が出るかどうかは、腸の健康状態を知るために重要な指標の一つです。
口から摂った食べ物は食道に送られたあと、胃、十二指腸、小腸、大腸を通って消化され、体に必要な水分や栄養が吸収されたあとに最後まで残ったものは便となって体の外に排出されます。
快便を目指すためには食物繊維や発酵食品を意識した食事や適度な運動、ストレスをためないことなどが大切です。
健康的な毎日を送るためにも、今回お伝えした生活習慣を心がけましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。