目次
1.胃潰瘍の病態
胃潰瘍とは、胃酸によって胃の壁が傷付き、出血や痛みを起こしている状態のことです。同様の状態が十二指腸で起こったものは十二指腸潰瘍と呼ばれ、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称したものは消化性潰瘍と呼ばれます。
日本において、胃潰瘍は40~50歳代を中心に患者が多く、十二指腸潰瘍は20~40歳代が多めです。十二指腸潰瘍は欧米人に多く見られる疾患ですが、日本でも生活の欧米化にともない、患者数が増えてきています。
「胸やけがする」「胃がキリキリする」「吐き気がする」といった症状に、悩まされていませんか。これらは、胃潰瘍に見られる症状の一部であり、体からのSOSのサインです。
症状によっては治療が必要な場合もありますが、普段の生活を見直すことで、予防が可能です。
今回は、胃潰瘍の病態や症状・原因、治療法や予防方法について解説します。適切な対処法を実践して、一日も早く健やかな体を取り戻しましょう。
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胃潰瘍とは、胃酸によって胃の壁が傷付き、出血や痛みを起こしている状態のことです。同様の状態が十二指腸で起こったものは十二指腸潰瘍と呼ばれ、胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称したものは消化性潰瘍と呼ばれます。
日本において、胃潰瘍は40~50歳代を中心に患者が多く、十二指腸潰瘍は20~40歳代が多めです。十二指腸潰瘍は欧米人に多く見られる疾患ですが、日本でも生活の欧米化にともない、患者数が増えてきています。
ここでは、胃潰瘍の症状と原因について解説します。
胃潰瘍の状態であっても、まったく自覚症状を感じていない人は多くいます。内視鏡検査などをして、偶然に胃潰瘍を発見するケースは珍しくなく、そのうち約24~32%は無症状だったとの報告があるほどです。
一方、症状のある患者さんでは、以下のような症状が見られます。
・胃の痛み
・胃の不快感
・胸やけ
・食欲不振
・上腹部の痛み(夜間や空腹時に多い)
・吐き気・嘔吐
・お腹の張り
・吐血
・下血(ドロドロした便)
・貧血症状(息切れ・動悸・ふらつきなど)
通常、胃は強い酸性である胃液などの攻撃因子から身を守るために、防御因子である粘液で胃の粘膜を覆ってバリアをしています。これは、胃液が直接胃の粘膜に触れると、胃自体を消化しようとして傷付けてしまうためです。
しかし、何らかの影響で胃液と粘液のバランスが崩れると、胃潰瘍を引き起こします。おもな胃潰瘍の原因は、以下のとおりです。
・精神的・肉体的なストレス(環境の変化・精神的・肉体的・自尊心の喪失)
・まじめな性格(完璧主義・几帳面など)
・食べ過ぎ(胃が疲労する)
・塩分の多い食事(胃粘液の防御力が低下する)
・刺激の強い食べ物(熱い、辛い食べ物)
・熱い食べ物(胃粘膜を刺激する)
・不規則な生活(胃が疲労する)
・薬剤(非ステロイド系抗炎症鎮痛薬は粘膜を刺激する)
・喫煙(ニコチンが胃液の分泌を促進して、胃壁にダメージを与える)
・ピロリ菌(胃粘液に棲んでいる細菌で、アンモニアなどの毒素を作り出し粘膜を傷付ける)
最後に、胃潰瘍の治療方法や予防方法を解説します。胃潰瘍への理解を深めて、適切な対応をしましょう。
まずは、胃潰瘍の治療方法を紹介します。
出血が見られない胃潰瘍の場合は、胃酸を抑える薬の服用による治療を行ないます。
出血をともなう胃潰瘍の場合は、入院して内視鏡治療を行ないます。
検査の結果、ピロリ菌感染が陽性であれば除菌治療を行ないます。除菌治療を行なわないと、再発しやすいため注意しましょう。
胃潰瘍は、性格やストレスの影響を受けやすいものです。予防をするなら、無理なくできることから始めましょう。
・ストレスをためない
・薄味の食事にする
・高脂肪の食事を控える
・刺激の強い食べ物は控える
・適度な飲酒量にする
・規則正しい生活習慣
・禁煙
また、下記のいずれかに当てはまる方は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)によって胃潰瘍になりやすいといわれています。
・以前に胃潰瘍になったことがある
・ピロリ菌に感染している
・副腎皮質ステロイドを服用している
・70歳以上
・ピロリ菌に感染している
一つでも該当する場合は、医療機関を受診するようにしましょう。年齢が高い方は、出血をともなう胃潰瘍を発症すると回復に時間を要するため、予防が重要になります。
胃潰瘍は、まじめな性格やストレス、不規則な生活習慣によって引き起こされるケースが多く、日本では40~50歳代の方に多く見られます。胃の中で粘液と胃液のバランスが崩れることで胃壁が傷付き、痛みや出血を起こしている状態です。
胃潰瘍を予防するには、ストレスを上手に発散したり、食事内容や生活習慣を見直したりする必要があります。喫煙をしている場合は、禁煙することも大切です。
治療の方針は胃潰瘍の状態によって異なり、薬の服用や内視鏡による緊急治療が必要な場合もあります。気になる症状がある場合は、速やかに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。
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