1.歯石とはなにか?
歯石とは、石のような硬さになったものを指します。歯石は歯磨きがが十分にできていないと、歯の表面に残ったプラークが唾液に含まれるミネラルやリンが沈着して石灰化したものになります。なお、プラークが石灰化して歯石へと変化するまでには、2週間ほどかかります。
ちなみにプラークは、食べ物などの残りカスのなかで細菌が増殖することで、ねばねばとした白いかたまりのことです。食事をしてから8時間ほど経過するとプラークが形成され、1mgのプラークには1億個ほどの細菌が存在するといわれています。
歯石は大きく2種類に分けられ、それぞれ「歯肉縁上歯石」「歯肉縁下歯石」と呼ばれます。
歯肉縁上歯石とは、歯ぐき(歯肉)より上にできる歯石で、比較的軟らかく白っぽい色が特徴です。歯肉縁上歯石の形成には、唾液中のリン酸カルシウムが関わっているとされます。一方、歯周病が進み、歯と歯ぐきの間にできた深い溝(歯肉溝)のなかに形成されるのが歯肉縁下歯石です。
歯肉溝からの浸出液成分を含む歯肉縁下歯石は黒褐色で、高い硬度を持ちます。プラークの段階では歯磨きで取り除けますが、歯石になると歯科医院で専門の器具を用いなければ除去できません。
歯石自体は虫歯の原因にはなりませんが、ざらざらした歯石の表面に細菌が増殖すると歯周病を招くおそれがあります。
2.歯石ができる原因
歯石はプラークが石灰化したものです。そのため、口腔内の清掃が不十分でプラークが形成されると、歯石ができやすくなります。
また、歯磨きでしっかり歯が磨けていないだけでなく、入れ歯や舌の表面の清掃が十分ではないときにもプラークが生じます。
歯石対策のためには、歯磨き・舌の清掃・入れ歯の手入れを行ない、口腔内の環境を清潔に保つことが重要です。
3.歯石を予防するためのポイント
歯石予防のためには、原因であるプラークを作らないことが第一です。プラークの予防と対処は、自分でできることと歯科医院でしてもらえることがあるので、それぞれ見ていきましょう。
自分でできる対処法は、毎日丁寧に歯磨きを続けることです。磨くタイミングは、ご飯を食べたあとや寝る前がよいでしょう。
磨くときは歯の表面の汚れだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを利用して歯と歯の間も忘れずに行なってください。また、強い力で磨くと歯ぐきや歯の根元を傷付けるだけでなく、歯ブラシの毛先が広がって正しく磨けなくなるため注意しましょう。
歯ブラシを選ぶポイントは、年齢や口のサイズのほか、虫歯・歯周病といった病気の有無を考慮することです。歯磨き粉を選ぶ際は、成分にこだわってみましょう。歯石予防には、デキストラナーゼ(酵素)が含まれている歯磨き粉がおすすめです。デキストラナーゼはプラークを分解することで、プラークの除去をサポートしてくれます。
セルフケアに加えて重要なのは、定期的に歯科医院で専門ケアを受けることです。歯科医院では、硬い歯石や歯周ポケットのなかといった、自分で除去できない汚れを取り除いてくれます。
歯科医院で行なう、専用の器具を使用したプロによる歯面清掃のことを、Professional Mechanical Tooth Cleaning(PMTC)と呼びます。PMTCでは、歯ぐきの3mmほど下までの歯石やプラークの除去が可能です。その他、一人ひとりの口の状態に合わせた歯ブラシの選び方や、磨き方の相談もできます。
こまめな歯石ケアで健康な歯と歯ぐきを保とう
十分に歯が磨けていなかったり、口腔内の清潔が保たれていなかったりするとプラークができやすくなり、歯石を形成してしまいます。
歯石は、歯周病の発症リスクを高めるものです。歯周病になると、歯を支える骨を溶かして抜歯せざるをえなくなるケースもあります。
このような事態にならないためにも、まず自分でできるケアとしてしっかりと歯を磨きましょう。そして、取り除けなかったプラークやできてしまった歯石は、定期的に歯科医院を受診してクリーニングしてもらうことが大切です。
こまめに歯石対策を行ない、いつまでも元気な歯と歯ぐきを維持しましょう。
監修者情報
氏名:福田尚美(ふくだ・なおみ)
歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院に勤務。現在は一般歯科・小児歯科非常勤勤務のかたわら歯科医師としての知識と経験を生かし、歯科医師webライター、歯科企業やオンラインセミナーのサポートなども行なっている。