甜茶(てんちゃ)抽出物とは?
碾茶(てんちゃ)と甜茶の違いやおもな働きについて解説

甜茶(てんちゃ)は、非常に貴重なお茶として、国外への持ち出しが禁止されていた過去があるといわれています。さまざまな健康効果を持つという説があることから注目され、近年、研究が進められるようになりました。

今回は、甜茶抽出物と碾茶(てんちゃ)の違いや働きなどについて解説します。

1.甜茶とは

甜茶は、中華人民共和国南部地方原産のお茶で、バラ科のテンヨウケンコウシ、アカネ科のギュウハクトウ、ユキノシタ科のロウレンシュウキュウ、ブナ科のタスイセキカヨウの4種類が存在します。

1-1.同じ読み方でも違う植物?碾茶と甜茶の違い

碾茶は緑茶の一種で、被覆資材で2~3週間ほど覆った覆下茶園で摘み取った茶葉を蒸し、揉まずに碾茶炉で乾燥させて作られます。碾茶を茶臼などで粉末状にすりつぶしたものが抹茶です。

碾茶を含む緑茶は、ツバキ科カメリア属の植物が使用され、一方の甜茶は、バラ科キイチゴ属の植物が使用されています。碾茶と甜茶は読み方が同じですが、まったく別物なので間違えないように注意しましょう。

2.甜茶抽出物について

甜茶は、ポリフェノール成分や甘味成分などを含んでいます。ここでは、甜茶抽出物の成分について紹介します。

2-1.ポリフェノール成分

ポリフェノールは美容健康に役立つ成分として知られ、スキンケア商品などに添加されていることがあります。なお、緑茶に含まれているカテキンやビルベリーに含まれているアントシアニジン、コーヒーに含まれているクロロゲン酸なども、ポリフェノールの一種です。

2-2.甘味成分

甜茶の「甜」が「舌」に「甘い」と書くことからわかるように、甘味があるお茶です。甜茶の甘味成分はルブソシドと呼ばれ、低カロリー甘味料として紹介されています。

3.甜茶のおもな働き

近年の研究により、甜茶にはさまざまな健康効果が期待できると報告されています。ここでは、そのなかでもおもなものをピックアップして紹介します。

3-1.抗アレルギー作用

アレルギーは、人間の体の免疫機構が異常を起こし、食べ物やダニ、花粉などの原因物質に対して、過剰に反応する状態です。おもに、くしゃみや鼻水、発疹などの症状があらわれますが、重症化すると意識障害などに陥るアナフィラキシーショックを起こすことがあります。

原因物質が体内に入ると、異物を排除しようとして免疫細胞が動き、免疫細胞からIg E抗体が作られます。Ig E抗体が作られたあとに原因物質が再び体内に入り、Ig E抗体と肥満細胞が結び付いてヒスタミンを放出すると、現れるのがアレルギー症状です。

甜茶抽出物には、肥満細胞からヒスタミンが放出されるのを抑制する作用があるため、アレルギー症状緩和に期待ができます。

3-2.花粉症

花粉症は、花粉に対して免疫機構が過剰に働くアレルギー症状です。例えばスギ花粉の場合、鼻の粘膜の中にある肥満細胞が活性化し、ヒスタミンが放出されるため、その結果、鼻水やくしゃみが出るなどの症状が現れます。

アレルギー症状を抑える作用があるとされる甜茶は、花粉症の民間療法に利用されているケースがあります。

花粉症の方は、緑茶や甜茶などを飲むことにより、そのなかに含まれるポリフェノールが炎症を抑え、症状緩和につながることもあります。

甜茶は中国で古くから愛飲される健康茶

甜茶は、中国南部原産のお茶で、バラ科のテンヨウケンコウシ、アカネ科のギュウハクトウ、ユキノシタ科のロウレンシュウキュウ、ブナ科のタスイセキカヨウの4種類が存在します。

甜茶のなかでもバラ科のものが特に貴重であるとされ、中国では古くから愛飲されている健康茶です。

甜茶には、ポリフェノール成分と、ルブソシドという甘味成分が含まれ、さまざまな健康効果が報告されています。甜茶の健康効果として、抗アレルギー作用があり、花粉症の民間療法としても利用されています。季節変化やホコリに敏感な方におすすめです。

さまざまな健康効果が期待できる甜茶を、普段のお茶の代わりに飲んでみるのもよいでしょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。