1.むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)とは?
むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群:RLS)は、おもに下半身において異常な感覚が起こる病気です。夜間に現れることから、不眠の原因になります。
体を動かすことで症状が治まるものの、安静にしているとムズムズした感じや、痛痒い感じ、虫が這っているような感覚、ほてりが再発してじっとしていられなくなります。
中年以降で男性よりも女性に多く、鉄欠乏性貧血や人工透析を受けている人によく見られる傾向にあります。加齢とともに、有病率が高くなる病気です。
むずむずした感じが原因で寝付くことができず、入眠できても足がピクピクと動いて眠りが浅くなってしまい、日中の過眠の原因にもなります。
場合によっては、過眠だけでなく不眠などの睡眠障害、やる気や食欲が起こらない抑うつ状態につながることもあるため、注意が必要です。
睡眠中に、四肢の筋肉が意図せず動くこと(不随意運動)で眠りが妨げられる症状は、周期性四肢運動障害(PLMD)と呼ばれています。これは、むずむず脚症候群の合併症として、確認されることがあります。
2.むずむず脚症候群の原因
むずむず脚症候群の原因は明らかになっていませんが、考えられる理由として鉄欠乏性貧血やドパミン(ドーパミン)の作用不足が考えられています。
血液中では、酸素を運ぶためにヘモグロビンの影響で鉄欠乏性貧血が起こります。
一方でドパミンは、快感を伝えたり感覚を制御したりする神経伝達物質です。ドパミン不足によっても、むずむず脚症候群が発生すると考えられています。
その他、胃の切除後などで鉄分の低下が起こる状態や、中枢神経系の病気によってもむずむず脚症候群が引き起こされる場合があります。
また、家族に発症者がいると起こりやすいことから、発症のしやすさには体質も関わっていると考えられるでしょう。特に遺伝の傾向が強いのは、45歳以下の発症者です。
3.むずむず脚症候群を治す方法はある?
むずむず脚症候群の治療法は確立されていませんが、症状の程度によって対処法が異なります。
症状が軽い方の場合は、生活習慣の改善が大切です。カフェインの摂りすぎが症状の悪化や睡眠の質の低下につながるため、コーヒーや緑茶、紅茶などに含まれるカフェインに注意する必要があります。
カフェインの摂取は夕方くらいまでにすること、お酒は寝る前以外で節度ある適度な量にすること、喫煙者は禁煙をすることが大切です。
むずむず脚症候群の症状が重い方の場合は、医師の指導のもと適切に薬を服用することになります。使用される薬はおもに、ドパミン系薬剤・非ドパミン系薬剤などです。
ドパミン系薬剤にはドパミンの働きを改善する働きがあり、非ドパミン系薬剤は神経に作用して症状を和らげる働きがあります。
むずむず脚症候群は、足を動かしたり叩いたりすることでも不快感が軽くなりますが、強い刺激を与えても不快に感じにくくなっているだけです。そのため、根本的な解決にはなりません。
早期発見や予防のために、足に不快感を覚えたときや不快感が睡眠に影響していると感じたときは、すぐに医療機関で診てもらうことが大切です。診療科は、神経内科や総合診療内科などがよいでしょう。
少しでも足に不快感を覚えたら医療機関を受診しましょう
むずむず脚症候群はレストレスレッグス症候群(RLS)として知られ、夜間に足がムズムズしたり、虫が這っているような感じがしたりして不眠などにつながる病気です。原因は明確になっていないものの、ドパミンの作用不足が考えられています。
むずむず脚症候群は、症状が軽い場合は生活習慣の見直し、重度の場合には専門医の指導のもと、ドパミン系薬剤などを適切に服用することで治療が行なわれます。
もし脚のムズムズした感じに心当たりがあれば、生活習慣の見直ししたり医療機関で診てもらったりしましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。