1.顎関節について
顎関節とは、下顎の骨を動かすときに使う、耳の前にある関節です。
顎関節は側頭骨のくぼみに、下顎の骨から上に突き出ている下顎頭がはまった形で存在しています。
顎関節は、口が開くたびに下顎が側頭骨のくぼみから外れますが、これは顎関節脱臼のように外れたら戻らないものではなく、顎関節の正常な動きです。
側頭骨と下顎の骨の間には、関節円板という組織が滑液と一緒に存在し、これがクッションの役割を果たしています。そのため、口を開くたびに関節が外れても問題なく顎を動かせるのです。
このほかに、顎関節に関係する部位として、口を閉じるときに働く咬筋(咀嚼筋)・口を開くときに使う舌骨筋群・内側翼突筋・外側翼突筋・側頭筋が存在しています。
2.顎が痛い場合に考えられる原因
顎が痛い場合には、下顎が出ている、顎が小さい、骨折、ねじれ、噛み合わせが悪い、顎関節症になっている、顎が外れたなど、いくつかの原因が考えられます。
下顎が出ているのは、一般的に受け口と呼ばれる状態で下顎前突症と呼ばれます。症状としては、噛んだときに上の歯よりも下の歯が前に出てしまうもので、歯が前に傾いていることや下顎が上顎よりも大きいことが原因です。
顎が小さい場合は小下顎症や、出っ歯によって下顎が小さく見える上顎前突症が疑われます。小下顎症は、先天的にも後天的にも起こるものです。
事故やスポーツ、けんかなどにより、外から強い衝撃が加わって顎が骨折する(外傷性骨折)と、痛みが発生します。また、炎症や腫瘍によっても骨折は起こります(病的骨折)。
顎のねじれは顎変形症と呼ばれ、上顎と下顎の大きさや形、位置に異常が起こって結果的に顔が変形したようになるものです。幼少期には小さかった変形が成長にともなって大きくなり、噛み合わせに影響が出て発生することが多くあります。
噛み合わせが悪い場合には、下顎前突や上顎前突だけでなく、奥歯は噛み合うのに前歯は噛み合わない開咬と呼ばれる状態が考えられます。
ここまで、顎自体に原因がある例を示しましたが、顎関節に関係する例では顎関節症や顎関節脱臼などが考えられます。
顎関節症のおもな症状は、顎関節からカックンと音がする、顎が痛くなる、口が開かなくなるなどです。顎付近は筋肉・関節・神経などが複雑に存在しているため、何らかの原因で動きにくくなったり痛みが生じたりします。
人によっては、肩こり・偏頭痛・耳や鼻への症状・腕や指の痺れなど、他の部位にも症状が現れることもあります。
顎関節脱臼は、一般的にいう顎が外れた状態です。口を大きく開けたときやあくび、打撲などの衝撃、硬くて大きいものを噛んだときに起こり、強い痛みや不快感があります。
口を閉じることができなくなり、頬骨の下へ下顎が飛び出したようになるといった症状が現れます。
3.顎が痛い場合は何科を受診したら良い?
痛みの原因にはいくつかの種類がありますが、基本的には口腔外科を受診するとよいでしょう。
口腔外科では顎関節症や顎関節脱臼だけでなく、顎骨や頬骨の骨折、親知らずの治療や歯の移植など歯に関係すること、顎の骨にできる嚢胞や腫瘍、唾液腺の疾患などの診療が行なわれます。
問診や触診だけでなく、症状によってはX線写真やCT画像を使って診断を行なうこともあります。
小下顎症・上顎前突症・下顎前突症のように、口腔外科と矯正科の連携による治療法が必要となる場合もあり、矯正術で治療しきれないときは外科的な手術を行なうこともあります。
顎関節症を放置しておくと思わぬ状態に陥ったり、すぐに自分で戻せないくらいの顎関節脱臼では、手術による治療が必要になったりします。そのため、顎に異常を感じた場合は、早めに受診して適切な処置を受けることが大切です。
少しでも顎に違和感を覚えたら口腔外科へ
顎関節とは何か、顎が痛いときの原因や受診するなら何科となるかを説明しました。
顎関節は、下顎を動かすときに必要な耳の前にある関節のことです。他の関節とは違って、口を開ける度に外れてその都度もとに戻せる特徴があります。
顎が痛いときに考えられる原因はいくつかありますが、顎に関係することで医師に診てもらいたいときは口腔外科にかかりましょう。なかには、放置しておくと思わぬ事態につながることがあるため、できるだけ早期に対処しておくことが大切です。
監修者情報
氏名:福田尚美(ふくだ・なおみ)
歯科医師臨床研修終了後、審美歯科・ホワイトニング専門医院に勤務。現在は一般歯科・小児歯科非常勤勤務のかたわら歯科医師としての知識と経験を生かし、歯科医師webライター、歯科企業やオンラインセミナーのサポートなども行なっている。