尿蛋白とは?おもな症状や基準値について解説

健康的な人の尿には、少量のタンパク質が含まれています。

しかし、尿の中から一定以上のタンパク質が検出されると、何かしらの異常が原因となってタンパク質が排出されている状況が疑われます。思わぬ病気が隠れている可能性もあるため、尿蛋白には注意しましょう。

そこで今回は、尿蛋白の特徴やおもな症状や基準値について解説します。

1.尿蛋白とは?

尿蛋白とは、尿に含まれているタンパク質が、正常時よりも多く出てしまうことです。おもに腎臓や泌尿器の機能障害が原因となっています。

腎臓は体内の老廃物を取り除き排出するために尿を作る臓器で、その過程で通常であれば、必要なタンパク質は体内に戻ります。

しかし、腎臓や泌尿器などが正常ではない場合、タンパク質は吸収されないまま尿として体外に出されます。

なぜこのような状態になってしまうのかを、次章で見ていきましょう。

2.尿蛋白の原因

尿蛋白のおもな原因には、腎臓に関連したものと全身の病気によるものがあります。例えば、腎臓に関連する病気は急性腎炎や慢性腎炎など、全身の病気では高血圧などが原因とされています。

ただし、尿蛋白がすべて病気によるものとは限りません。生理的タンパク尿といって、一時的にタンパク質が多く尿に混じるケースです。肉を食べすぎた結果、タンパク質の血中濃度が高くなり、腎臓の機能が追い付かなくなることもあります。また、激しい運動によりタンパク質が体内で過剰に作られることも、原因の一つです。

一般的には、試験紙を使った尿検査を行ないますが、尿の量によって検査結果が異なるため、正確に尿蛋白の検査をすることはできません。そこで、より確実に測定するために、尿を24時間ためてから尿蛋白の量をはかることもあります。

検査の結果、尿蛋白が多いほど、腎臓に重大な問題が起きていることが疑われます。治療法は原因によって異なるため、きちんとした検査をしなくてはなりません。

3.尿蛋白の症状や基準値

前述したように、尿蛋白は試験紙を尿の中に入れて、タンパク質の量を測定することで調べられます。尿蛋白と判断される目安は、尿中のタンパク質が30mg/dl以上だと陽性、15~30mg/dlの場合は疑陽性、15mg/dl以下であれば陰性です。

多くの人は、腎臓病になっていても自覚症状がありませんが、病気が進むにつれ、むくみや貧血などの自覚症状が出てきます。そのため、尿検査で早めに腎臓の異常を見つけ、対応することが重要です。

また、尿蛋白が続いているケースでは、尿検査と血液検査をセットで実施することが少なくありません。血液検査によって腎臓がきちんと機能しているのかをおおまかに調べ、さらに詳しい検査である腎生検が必要になるのか、専門医が判断します。

腎生検とは、背中から細長い針を挿入し腎臓から一部の組織を取り、細かく調べる検査のことです。腎生検を行なうことで、どのような腎臓病でなぜ尿蛋白が出ているのかがわかります。この結果は、治療方針を決める際に重要な情報です。

4.定期的な尿検査を心がける

腎臓の病気は、最初のうちは自覚症状がないことが多いでしょう。そのため、病状の悪化に気付きにくく、自覚症状が現れた頃には、深刻な状況に陥っていることもあります。

腎機能が低下したときにおもに見られる症状は、次のとおりです。

  • ・貧血

  • ・むくみ

  • ・高血圧

ろ過の役割を持つ腎臓がうまく働かないと、老廃物や過剰な水分が溜まり、このような症状を引き起こします。この状態が悪化し、腎臓の機能が停止すると、人工透析や腎移植を受けることになりかねません。

腎臓の機能は一度でも低下すると、正常な状態に回復させるのは容易ではありません。そのため、腎臓の機能が低下しているとわかった場合は、それ以上の悪化を防ぐために手を打つことが大切です。

腎臓の機能が衰えることを防ぐためには、次のことを意識しましょう。

  • ・塩分を摂りすぎない

  • ・適度に体を動かす

  • ・適正体重を目指す

  • ・禁煙する

塩分の摂りすぎは、高血圧の原因です。高血圧は腎臓の機能を低下させることにつながり、腎臓がしっかり働かなくなれば血圧がより高くなります。そのため、減塩を意識した食事習慣が大切です。

適度に体を動かすと腎機能の低下を防止できるため、ウォーキングや家事などで継続的に運動を続けてみてください。

また、体重が適正体重より上回っている場合は、減量が必要です。減量することで血圧や血糖値も下がり、健康的な体を維持できます。

次の計算式を使って、自分の適正体重を把握しておきましょう。

体重(kg)÷{身長(m)×身長(m)}

尿蛋白を早期発見して健康を維持しよう

尿蛋白は腎臓の機能低下によって起こります。腎臓の機能低下は、初期の頃は自覚症状がほとんどありません。そのため、気付いたときには病状が進んでいることもあります。

一度低下した腎臓の機能は、元通りにすることが困難なため、なるべく早く症状の進行を止める必要があります。体からのサインを見逃さないためにも、定期的に検査を受けて、異常がないかチェックすることが大切です。

尿蛋白が検出されたときは早めに医療機関を受診して詳しい検査を受けましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。