「マンガン」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取量について解説

マンガンは、健康を維持するために必要なミネラルの一種です。マンガンなどのミネラルは、さまざまな役割を持っているため、不足すると健康に悪影響が生じる可能性があるので注意が必要です。

今回は、マンガンの働きや含まれる食べ物、一日の摂取目安量を解説します。

1.マンガンとは

マンガンは、地表や岩石、海水、淡水など地球上に広く存在し、多くの食材にも含まれています。また、多くの生物の体内にも存在する元素です。成人の体内には10~20mg存在しており、そのうちの25%は骨、残りは体内のさまざまな組織や臓器に広く分布し、酵素を活性化させる成分や、金属酵素の構成成分として機能しています。

2.マンガンのおもな働き

人体に存在するマンガンの量は微量ですが、さまざまな役割を果たしています。おもな働きとしては、以下の4点が挙げられます。

2-1.酵素を活性化させる

マンガンは、酸化還元酵素や加水分解酵素、脱水酵素、転移酵素など体内の代謝で重要な多くの酵素を活性化させます。

2-2.酵素を構成している

マンガンは、アルギニン分解酵素やピルビン酸脱炭素酵素、マンガンスーパーオキシドジスムターゼの構成成分としての役割があります。

マンガンスーパーオキシドジスムターゼは、ミトコンドリアに存在し、酸化還元反応に関与している酵素です。

2-3.さまざまな代謝に必要

マンガンが欠乏した場合では骨代謝や糖脂質代謝、皮膚代謝などに影響があるとされ、それらの代謝にマンガンが必須だと考えられています。

2-4.体の機能維持に必要

マンガンは、体内でのさまざまな代謝の酵素活性に関わるため、体内の機能維持に必要な元素です。生殖能、脂質代謝、脳機能に関わるとされています。

3.マンガンの一日摂取目安量

マンガンは、男性では4.0mg/日、女性では3.5mg/日の目安量が設定されています。また、耐容上限量が設定されているので過剰摂取にも注意が必要です。

【マンガンの食事摂取基準(mg/日)】

性別 男性 女性
年齢等 目安量 上限量 目安量 上限量
0~5 (月) 0.01 0.01
6~11 (月) 0.5 0.5
1~2 (歳) 1.5 1.5
3~5 (歳) 1.5 1.5
6~7 (歳) 2.0 2.0
8~9 (歳) 2.5 2.5
10~11 (歳) 3.0 3.0
12~14 (歳) 4.0 4.0
15~17 (歳) 4.5 3.5
18~29 (歳) 4.0 11 3.5 11
30~49 (歳) 4.0 11 3.5 11
50~64 (歳) 4.0 11 3.5 11
65~74 (歳) 4.0 11 3.5 11
75以上 (歳) 4.0 11 3.5 11
妊婦 3.5
授乳婦 3.5


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3-1.マンガンの過剰摂取について

通常の食生活では、マンガンの過剰摂取が起きることはほぼありません。マンガン慢性中毒は、多量のマンガンを吸い込むことによって起こることがあります。

また、適量よりも多くマンガンを摂取している方や厳格な菜食主義の方は、マンガンの過剰摂取が起きるおそれがあります。過剰摂取によるマンガン中毒では、中枢神経の障害や重い精神障害、マンガン肺炎などが現れます。

4.マンガンを含む食べ物

マンガンは、さまざまな食材に含まれているため、不足することはあまりないとされています。しかし、食事の栄養バランスを整えることが健康維持には重要であるため、普段の生活から意識してみるとよいでしょう。

4-1.植物性食品

食品名 マンガン含有量
 (100gあたりのmg)
玉露茶 93
シナモン 41
紅茶 21
おろし生しょうが(皮なし) 5.12
焼き海苔 3.72

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

4-2.動物性食品

食品名 マンガン含有量
 (100gあたりのmg)
干しえび 3.93
シジミ 2.78
わかさぎ(あめ煮) 2.29
いなご(佃煮) 1.21
はちの子缶詰 0.76

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

マンガンを適度に摂取しバランスの良い食事を

マンガンは、地表や海水、淡水など地球上に広く分布する元素です。多くの動植物にも存在し、人間の体内でさまざまな役割をはたしています。

構成成分はアルギニン分解酵素やピルビン酸脱炭素酵素、マンガンスーパーオキシドジスムターゼで、骨の形成や脳機能維持などにも関わっています。

マンガンはさまざまな食材に含まれており、不足することはないと考えられていますが、過剰に摂取しすぎないようにするためにも、食事の栄養バランスを考えるとよいでしょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。