過敏性腸症候群のおもな症状・原因とは?
予防のためのポイントを紹介

「休日は大丈夫なのに、仕事の日になるとおなかの調子が悪い」
「いつ下痢になるかわからないから、電車やバスに乗るときに困る」

このような症状が日常的に起こっている方は、もしかすると過敏性腸症候群かもしれません。先進国に多いことから文明病の一つと考えられ、ストレスや不規則な生活習慣が発症に関わっています。状態の改善には、きっかけとなっている生活習慣の見直しが効果的です。

今回の記事では過敏性腸症候群で見られる症状や原因、予防のために毎日の生活のなかで注意すべきポイントをお伝えします。

1.過敏性腸症候群とは?

過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome:IBS)とは、消化器の異常が見つからないにも関わらず慢性的な便秘や下痢がある状態です。ストレスによって過敏になった自律神経が、生じるきっかけになっていると考えられています。例えば、次のような場面では過敏性腸症候群の症状が起こりやすいとされています。

  • ・転職や引越し、転校などの環境変化があったとき

  • ・大切な会議や試験など緊張や不安が強くなるとき

  • ・乗り物に乗っているときなどトイレに行きづらいとき など

日本人のおよそ10~20%が、過敏性腸症候群で悩んでいるとされています。若い女性や働き盛りの男性に多く見られますが、近年は低年齢化してきており小・中学生の患者も増えてきています。

2.過敏性腸症候群のおもな症状・原因

ストレスをきっかけに現れる、過敏性腸症候群に悩まされている人は少なくなりません。過敏性腸症候群ではどのような状態になるのか、またおもな原因について見ていきましょう。

2-1.おもな症状

過敏性腸症候群は、人によって現れる症状が異なります。おもに以下のような症状が現れます。

  • ・腹痛

  • ・下痢

  • ・便秘

  • ・残便感

  • ・腹部膨満感

  • ・おならが頻繫に出る

  • ・げっぷが増える

  • ・食欲不振

緊張や不安を感じる場面でこれらが生じることで、生活に影響が出る人も多いでしょう。なかには、不登校になる・公共交通機関を利用できないなど、不都合を生じるケースもあります。

また、現れる症状は1つに限らず、複数の症状が同時に見られたり、日によって異なる症状が出たりします。過敏性腸症候群は大まかに便秘型・下痢型・ガス型の3種類がありますが、数日おきに便秘と下痢を繰り返す混合型(不安定型)も存在します。

2-2.おもな原因

過敏性腸症候群の発症には、繊細な性格に加えて精神的なストレスや乱れたライフスタイルが関わっています。日々感じるストレスによって脳が興奮し、自律神経を乱すことで腸の動きに影響を与えるのです。また、内臓知覚過敏が起こると腹痛や膨満感が増します。そして、腹痛や不快感が刺激となって再び脳に伝わると、過敏性腸症候群をさらに悪化させるという悪循環になります。

栄養の偏った食事や、過労・睡眠不足・運動不足も過敏性腸症候群の引き金です。食事内容に関していうと、下痢が見られる場合、炭水化物・脂質・香辛料などの摂り過ぎが関係している可能性があります。また、便秘が見られる場合は、普段から食物繊維や水分が足りていないことがきっかけとなることも多いです。

3.過敏性腸症候群を予防するためのポイント

過敏性腸症候群を改善するには、普段から次のようなことに注意しながら過ごしてみましょう。

  • ・睡眠や食事の時間を一定にし、規則正しい生活を送る

  • ・暴飲暴食をしない

  • ・十分な休息を取る

  • ・適度な運動をする

  • ・ストレスの原因を解消・緩和する

規則正しく、過剰なストレスがかからない生活で自律神経を整えることで、腸の動きや内臓神経の働きを正常に保つことができます。おなかの調子がおかしい、と気付いたときは心と体に無理をさせない生活を心がけましょう。

過敏性腸症候群を疑う不調が現れたら心と体を休めよう

ストレスが多い現代では、過敏性腸症候群によるおなかの不調で悩む人は少なくありません。仕事や学校生活への支障が出るケースもあるため、生活を整えて改善を目指しましょう。

過敏性腸症候群の原因は、ストレスや不規則な生活による自律神経の乱れです。ストレス解消やバランスの良い食事、十分な休養、適度な運動を心がけましょう。そして、生活習慣の見直しをしても状態が改善しないときは、早めに医師に相談することが大切です。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。