胃潰瘍の原因とは?
胃潰瘍を予防するためのポイントについても紹介

何らかの原因で、誰しも一度は胃が痛くなったことがあるのではないでしょうか。

胃の内部は、強い酸性の胃液で満たされていますが、正常な場合は粘膜によって胃の内壁が守られているため、痛むことはありません。しかし、痛みを感じる場合、胃の粘膜が傷付く胃潰瘍を発症している可能性があるでしょう。

ここでは、胃潰瘍の原因や予防法について解説します。

1.胃潰瘍のおもな原因とは?

胃潰瘍の特徴やおもな原因を紹介します。

1-1.胃潰瘍について

胃潰瘍とは、胃酸によって胃の内壁が傷付けられ、痛みや出血がある状態のことです。通常、胃の内壁は粘液によって強い塩酸の胃液から守られていますが、胃液と粘膜のバランスが何らかの原因で崩れると胃を守る機能が弱くなり、胃潰瘍になります。

胃潰瘍になると、みぞおちに痛みを感じるほか、吐血したり、便に血が混じるタール便が出たりすることもあります。

その他、次のような現象も見られるでしょう。

  • ・胸やけやげっぷ

  • ・吐き気

  • ・嘔吐

  • ・貧血

  • ・食欲不振

胃潰瘍が悪化すると傷がさらに深くなり、胃に穴が空くケースもあるので注意しましょう。なお、胃潰瘍を発症する年代としては、40~50歳代が多いのも特徴です。

1-2.胃潰瘍のおもな原因

胃潰瘍は、おもに次のようなことが原因で起こります。

  • ・ストレス

  • ・不規則な生活

  • ・塩分の過剰摂取

  • ・喫煙

  • ・節度ある量を超えた飲酒

  • ・胃がヘリコバクター・ピロリ菌(以下ピロリ菌)に感染

喫煙は、胃酸の分泌を多くする作用があります。さらに、タバコに含まれるニコチンは、粘膜の血流を妨げて胃の防御を低下させるため、喫煙は胃壁を荒らす大きな原因です。

また、喫煙者はピロリ菌への感染率が高い傾向にあります。

ピロリ菌は胃の粘膜に存在する細菌で、粘液内にいるため胃酸の影響を受けることがありません。毒素やアンモニアを作り出して粘膜にダメージを与え、炎症しやすい状態にしたり、粘液の分泌を減少させて、胃の内壁が胃酸のダメージを受けやすい状態にしたりします。

ピロリ菌は食べ物を介して感染するケースが多く、しっかりとした衛生環境が確保できなかった頃には、多くの人が感染していました。

ただし、ピロリ菌に感染しても必ずしも胃潰瘍になるわけではなく、ピロリ菌保有者のうちのごく一部と考えられています。

2.胃潰瘍を予防するにはどうしたらよいのか?

胃潰瘍を予防するには、まず食生活などの生活習慣の改善が挙げられます。

  • 暴飲暴食をしない

    食事の際はお腹が苦しくなるまで食べず、腹7分目を目安にしてください。ごはんや麺類などの主食は、茶碗1杯ほどにするのがポイントです。

  • 栄養バランスの良い食事を心がける

    栄養バランスの良い食事をとることも大切です。特定の栄養素に偏らないように意識して、食事メニューを考えましょう。

  • 刺激物を控える

    わさびやトウガラシといった香辛料は刺激が強いため、控えめにすることを意識してください。塩分の過剰摂取も、胃の粘液の減少につながるため、おすすめできません。

  • 禁煙

    食生活以外では、禁煙をすることも大切です。前述したように、喫煙は胃酸の分泌を促進したり、胃の防御力を低下させたりするため、禁煙を心がけましょう。禁煙により、胃潰瘍の再発率は低下するとされています。

3.ストレスをため込まないことも胃潰瘍予防のポイント

胃潰瘍は、ストレスや性格などの影響で起こりやすくなります。ストレスがたまらないようにしっかり休み、胃腸に負担をかけない生活を送ることが大切です。前述した生活習慣の見直しを含め、少しずつ行なっていきましょう。

ストレス発散には、ウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動が効果的です。激しく動くのではなく、軽く汗ばんでスッキリしたと感じられる程度が適しています。継続することが大切なため、続けられる運動強度にしましょう。

このほかには、腹式呼吸やヨガ、ストレッチなども、ストレス発散につながります。

胃潰瘍の原因を取り除いて元気な毎日を過ごそう

胃潰瘍が発生するおもな原因には、ストレスや生活習慣、細菌感染が関係しています。そのため、胃潰瘍を予防するには、なるべくストレスを溜めないこと、規則正しい生活を送ることが大切です。

胃潰瘍は、治療で再発を防げます。治療を始めて状態が良くなったとしても自己判断でストップせず、医師の指示に従って最後まで治療を受けましょう。

まずは、健康的な日々を過ごすために、日頃の生活習慣を見直してみてください。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。