睡眠不足が健康に及ぼすリスクとは?睡眠パターンごとに対策方法を紹介

現代人の多くが悩んでいる「睡眠不足」。睡眠を十分に取れない生活を続けると、疲労がたまって日中の活動パフォーマンスが落ちるだけでなく、さまざまな病気の引き金になる可能性も考えられます。

健康で健やかな毎日を過ごすためには、質の高い睡眠をとることが一番です。
今回は睡眠に関するお悩み別に、しっかり睡眠を取るために必要な生活習慣や対処法をご紹介します。

1.睡眠不足のおもな原因

睡眠不足を感じる原因としては、「睡眠習慣」に問題がある場合と「睡眠障害」を引き起こしている場合があります。多忙などが原因で睡眠時間が十分に確保できないときや、シフトワーク・夜型の生活などにより体内時計がくるってしまったときに、睡眠習慣は大きく崩れます。また、睡眠時無呼吸症候群、睡眠・覚醒リズム障害などの疾患は睡眠障害を引き起こします。

睡眠の問題を放置すると、産業事故を引き起こしたり、生活習慣病が悪化したりと、日常生活にさまざまな弊害をもたらします。

1-1.日本は睡眠時間が世界で最も短いといわれている

就労者の睡眠時間の国際比較調査において、日本人の睡眠時間は世界で最も短いというデータがあります。特に女性は男性よりも睡眠時間が短い傾向です。その理由として考えられるのは、家事や育児の負担があり、平日・土日祝日を問わず慢性的な睡眠不足になりがちであることが挙げられます。

2.睡眠不足が引き起こす症状や健康に及ぼす悪影響について

睡眠不足の状態が数ヵ月続くと、集中力、記憶力、活力などが低下し、不安、イライラ感、疲労感などの自覚症状が現れます。

また、慢性的な睡眠不足は、前述の精神的な面だけでなく、ホルモン分泌や自律神経の機能にも悪影響を及ぼします。
夜更かしをすると食欲抑制ホルモンであるレプチン分泌が減少し、食欲増進ホルモンであるグレリン分泌が亢進するため、食欲が増大するというデータもあります。このような生活や体質の変調から肥満などへのリスクが上昇し、ゆくゆく糖尿病などの生活習慣病にかかりやすくなってしまうのです。

さらに、肥満は睡眠時無呼吸症候群の原因にもなり、さらなる睡眠の質の低下が懸念されます。

3.睡眠不足の解消法

ここまでに述べたように、睡眠不足は精神面にも肉体面にも悪影響をもたらすものです。
では、睡眠を十分に取るにはどうしたら良いのでしょうか。ここからは、睡眠不足の原因別に、その解消法を紹介します。

3-1.寝つきが悪い場合

夜、なかなか寝付けない方には、以下のような対策がおすすめです。

  • 朝日をしっかり浴びる

    人間の体内時計は24時間より少し長い周期だといわれています。朝の光には、後ろにずれた体内時計を早める作用があるとされているので、朝日を浴び体内時計を早めると、適切な睡眠のリズムを作ることができるでしょう。特に、起床直後の光が最も効果的です。

  • 規則正しい生活をする

    体内時計を正確に機能させると、夜に眠気を催すような身体になります。

  • 適度な運動をする

    就寝3時間前くらいに、散歩などの軽い運動をするのも効果的です。運動によって脳の温度が上がり、床に入るときに温度が下がることによって、眠気が出てきます。しかし、就寝直前の運動や激しい運動は身体を興奮させてしまい逆効果です。

  • 入浴時間をコントロールする

    寝る2~3時間ほど前に入浴すると、徐々に体温が下がりはじめ就寝時間あたりになると眠気を催します。深い睡眠を取るには、寝る直前に入浴することが推奨されていますが、寝付きは悪くなる可能性があります。

  • 覚醒作用のある食品を避ける

    夕方以降のカフェイン摂取は睡眠の質を低下させるといわれています。そのため、緑茶やコーヒーなど、カフェインを多く含む食品は節度ある量を心掛け、夕方以降には摂取しないようにしましょう。

  • 飲酒は節度ある適度な量にする

    就寝前のアルコールは、一時的な眠気を催す一方で、中途覚醒が増えて浅い睡眠に陥り、熟睡をもたらしづらくなります。また、就寝前の飲酒を習慣的に行なっていると、慣れが生じて摂取量が増すこともあるため、適度な飲酒量にしましょう。

3-2.夜中に目が覚めてしまう場合

夜中に目が覚めてしまう場合、睡眠が浅くなっていると考えられます。睡眠が浅くなる原因を取り除くため、以下のような対策が有効です。

  • 寝る直前に多くの水分を摂らない

    寝る直前に大量の水分を摂ると、夜間頻尿となり、中途覚醒につながるおそれがあります。寝る前に摂る水分量には気を付けてみましょう。

  • 医療機関を受診

    夜間頻尿は、飲んでいる薬の影響などでも起こりえます。服用中の薬があり、睡眠に影響をきたすようであれば、一度担当の医師に相談してみるのも良いでしょう。
    また、睡眠時無呼吸症候群など、何らかの疾患のために中途覚醒してしまうこともあるので、不安なことがあれば医療機関の受診をおすすめします。

3-3.睡眠時間が短い場合

睡眠時間が短い場合は、生活時間を工夫し睡眠時間を確保することが第一の解決策です。しかし、仕事の都合などでそれが難しい場合は、下記の方法を取ってみてはいかがでしょうか。

  • 睡眠の質を上げるように努める

    寝る前の部屋の温度・寝具・照明の色などに配慮すると、睡眠の質を向上させることが期待できます。

睡眠を十分に取り、快適な毎日を

日本人の睡眠時間は世界で最も短いことが明らかになっています。

睡眠不足が続くと、集中力、注意力、記憶力、活力などが低下し、不安、混乱などの傾向が強まることもあります。精神面だけでなく、食欲の増進から肥満のリスクが上昇し、やがては糖尿病などの生活習慣病への懸念も増すでしょう。

睡眠不足でお悩みの方は、まず寝つきの悪さ、中途覚醒、睡眠時間が取れないことなど、何が原因となっているか分析してみましょう。原因に応じて、上記に挙げたような睡眠不足解消法を実践してみてください。

監修者情報

氏名:豊田早苗(とよだ・さなえ)
とよだクリニック院長。鳥取大学医学部卒。精神科・心療内科・内科・神経内科(認知症、物忘れ)の診療を担当している。総合診療医学会、認知症予防学会、精神医学会などに所属。現在は医師業務の傍ら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。