「不飽和脂肪酸」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取量について解説

脂肪酸は、人体の細胞を作るうえで必要な成分です。この脂肪酸は、分子構造の違いから、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類に大きく分けられます。

どちらも必要なエネルギー源ですが、飽和脂肪酸は血中のコレステロールを上げる脂質で、不飽和脂肪酸はコレステロールを下げる脂質として知られています。そのため、飽和脂肪酸の代わりに不飽和脂肪酸を摂取したほうがよいでしょう。

今回は、食事からの摂取が重要になる不飽和脂肪酸について紹介します。

1.不飽和脂肪酸とは

魚や植物の油に多く含まれるのが不飽和脂肪酸です。不飽和脂肪酸には血中コレステロールを下げるなど、さまざまな作用があります。

不飽和脂肪酸はさらに、炭素間の二重結合の数によって「一価不飽和脂肪酸」と「多価不飽和脂肪酸」の2つに大きく分けられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1.一価不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸のうち、炭素間の二重結合を1つ持つのが一価不飽和脂肪酸です。オリーブ油に多く含まるオレイン酸が、一価不飽和脂肪酸として知られています。

血中のLDL(悪玉)コレステロール値を下げる作用があることから、健康維持に必要な栄養素だといえるでしょう。

なお、一価不飽和脂肪酸は必須脂肪酸ではないため、厚生労働省の定める食事摂取基準では摂取目標量や目安量が設けられていません。

1-2.多価不飽和脂肪酸

不飽和脂肪酸のうち、炭素間の二重結合を2つ以上持つのが多価不飽和脂肪酸です。一価不飽和脂肪酸と同じく、LDL(悪玉)コレステロール値を下げる作用などを持っています。

なお、多価不飽和脂肪酸は炭素間の二重結合が入る場所によって、さらに「n-3系脂肪酸」と「n-6系脂肪酸」に分かれます。

  • n-3系脂肪酸

    n-3系脂肪酸は多価不飽和脂肪酸のうち、3つ目の炭素に二重結合を持つものを指します。n-3系脂肪酸として代表的なものは、α-リノレン酸、DHA、EPAなどです。

  • n-6系脂肪酸

    n-6系脂肪酸は多価不飽和脂肪酸のうち、6つ目の炭素に二重結合を持つものを指します。n-6系脂肪酸として代表的なものは、リノール酸、アラキドン酸(ARA)、γ-リノレン酸などです。

    これらも体内で作られない必須脂肪酸のため、普段の食事で補うことが重要になります。

2.不飽和脂肪酸の一日摂取目安量

先述のとおり、一価不飽和脂肪酸は体内で合成できるため、厚生労働省の食事摂取基準では摂取目標量や目安量は設定されていません。

そのため、ここでは摂取目安量などが定められている多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸)の一日の摂取目安量を紹介します。

2-1.n-3系脂肪酸の一日摂取目安量

n-3系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢 目安量 目安量
0~5(月) 0.9 0.9
6~11(月) 0.8 0.8
1~2(歳) 0.7 0.8
3~5(歳) 1.1 1
6~7(歳) 1.5 1.3
8~9(歳) 1.5 1.3
10~11(歳) 1.6 1.6
12~14(歳) 1.9 1.6
15~17(歳) 2.1 1.6
18~29(歳) 2 1.6
30~49(歳) 2 1.6
50~64(歳) 2.2 1.9
65~74(歳) 2.2 2
75以上(歳) 2.1 1.8
妊婦 1.6
授乳婦 1.8


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

2-2.n-6系脂肪酸の一日摂取目安量

n-6系脂肪酸の食事摂取基準(g/日)

性別 男性 女性
年齢 目安量 目安量
0~5(月) 4 4
6~11(月) 4 4
1~2(歳) 4 4
3~5(歳) 6 6
6~7(歳) 8 7
8~9(歳) 8 7
10~11(歳) 10 8
12~14(歳) 11 9
15~17(歳) 13 9
18~29(歳) 11 8
30~49(歳) 10 8
50~64(歳) 10 8
65~74(歳) 9 8
75以上(歳) 8 7
妊婦 9
授乳婦 10


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

3.不飽和脂肪酸を含む食べ物

一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸)を含む食べ物を、含有量が多い順に紹介します。これらの食べ物を、普段の食事で取り入れていきましょう。

なお、多価不飽和脂肪酸は空気や光、熱で酸化しやすい性質があります。

3-1.一価不飽和脂肪酸を含む食べ物

食品名 含有量(100gあたりg)
ひまわり油(ハイオレイック) 79.90
オリーブ油 74.04
サフラワー油(ハイオレイック) 73.24
なたね油 60.09
味付けマカダミアナッツ(いり) 59.23

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

3-2.多価不飽和脂肪酸を含む食べ物

n-3系脂肪酸を含む食べ物

植物性
食品名 含有量(100gあたりg)
えごま油 58.31
アマニ油 56.63
えごま(乾燥) 23.70

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

動物性
食品名 含有量(100gあたりg)
みなみまぐろの脂身(生) 6.77
干しやつめ 6.66
たいせいようさば(水煮) 6.13

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

n-6系脂肪酸を含む食べ物

植物性
食品名 含有量(100gあたりg)
サフラワー油(ハイリノール) 69.97
ぶどう油 63.10
ひまわり油(ハイリノール) 57.51

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

動物性
食品名 含有量(100gあたりg)
いわし類の缶詰(油漬け) 11.45
かつお類の缶詰(油漬けフレーク) 11.44
まぐろ類の缶詰(油漬けフレーク) 11.18

(文部科学省「食品成分データベース」をもとに作成)

不飽和脂肪酸は食事で上手に取り入れる

脂肪酸は、「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」があり、不飽和脂肪酸にはコレステロール値を下げるなどの作用が期待できます。

また、不飽和脂肪酸のなかにも種類があり、炭素間の二重結合を1つ持つ「一価不飽和脂肪酸」と、2つ以上を持つ「多価不飽和脂肪酸」に分かれます。一価不飽和脂肪酸は体内でも作られますが、多価不飽和脂肪酸(n-3系脂肪酸、n-6系脂肪酸)は作られません。そのため、普段の食事で摂取することが重要です。

コレステロール値などが気になっている方は、普段から飽和脂肪酸が多い食事をとっている方は、その一部を不飽和脂肪酸がとれる食品に置き換えるなどしてみるとよいでしょう。

監修者情報

氏名:西原 佑一(にしはら・ゆういち)
2018年慶應義塾大学医学部外科学大学院卒業(医学博士)。
現在は関東の病院で外科医として勤務。おもにがん治療 ・外科手術 ・教育などの外科医療を提供している。