栄養が不足するとどうなる?体におよぼす悪影響について解説

「日々の食事で、必要な栄養は十分にとれている」と、自信を持っていえる人はどのくらいいるでしょうか。毎日3食きちんと食べていたとしても、バランスが崩れていれば栄養不足になることが考えられます。

今回は、栄養不足が体におよぼすおそれのある影響について解説します。

1.栄養不足にならないために欠かせない栄養とは

私たちが健康で過ごすためには、炭水化物・脂質・たんぱく質・ビタミン・ミネラルの5大栄養素と呼ばれるものが欠かせません。

各栄養素にはそれぞれ、「体をつくる」「エネルギーになる」「体の調子を整える」などの役割があります。そのため、特定の栄養素ばかりに偏ったりせず、まんべんなく食べることが大切です。

2.栄養不足が体におよぼす悪影響

前述したとおり、5大栄養素はそれぞれ大事なものですが、不足するとどのような影響があるのでしょうか。

栄養素ごとに、考えられる不足時の影響を紹介します。

2-1.炭水化物不足

  • 炭水化物とは

    炭水化物は、エネルギーをつくるうえで大切な栄養素です。食品から摂取した際に、体内に取り入れられてエネルギーのもとになる「糖質」と、体内では消化ができない「食物繊維」に分かれます。

  • 不足するとどうなるか

    炭水化物不足になると、エネルギーが不足することで疲れや集中力の減少が見られたり、意識障害を起こしたりすることがあります。

    また、食物繊維は、腸内環境の改善や血中のコレステロール低下、血糖値の抑制に関わるとされています。そのため、食物繊維の摂取量が不足すると、便秘や生活習慣病につながることが考えられるでしょう。

2-2.脂質不足

  • 脂質とは

    脂質はエネルギー源となるほか、脂溶性ビタミンの吸収を助けたり細胞膜の構成に関わっていたりします。脂質にはいくつか種類があり、脂肪酸や中性脂肪、コレステロールなどもその一種です。

  • 不足するとどうなるか

    現代の食事では、脂質が不足することはほぼないとされています。

    ただし、n-3系脂肪酸は体内で合成ができない必須脂肪酸であり、不足すると皮膚炎や成長障害に関わるおそれがあります。

2-3.たんぱく質不足

  • たんぱく質とは

    細胞やホルモン、酵素など、体をつくるもとになる栄養素で、肉・魚・卵・大豆製品などに多く含まれています。たんぱく質は他の栄養素からつくることができないため、必ず摂取しなければなりません。

  • 不足するとどうなるか

    たんぱく質の不足によって考えられるのは。高齢者におけるフレイルとサルコペニアなどの状態です。

2-4.ビタミン不足

ビタミンは、体の機能の維持に欠かせない栄養素です。体内ではほぼつくることができないため、食事からの摂取が必要です。

なお、ビタミンにはいくつか種類があり、それぞれで不足した場合のリスクは異なるため、ここでおもなビタミンについて確認しておきましょう。

  • ビタミンA

    ビタミンAは、構造によっていくつかの種類がありますが、おもに目の細胞において重要な働きをする栄養素です。

    不足すると、成人の場合は暗いところで見えにくくなるとされています。ただし、ビタミンAは肝臓に蓄えられているため、肝臓内に一定量が維持されていれば、食事であまり摂取できていなくても欠乏症は起きにくいでしょう。

  • ビタミンD

    ビタミンDには、食事からとれるものと、日光を浴びた際に体内でつくられるものが存在します。

    カルシウムやリンの吸収を助ける働きがあるため、ビタミンDが不足すると、子どもは骨が弱くなりやすく、成人は関節に痛み生じやすくなるとされています。

  • ビタミンB1

    糖質に含まれるグルコースや、たんぱく質に含まれるアミノ酸を代謝する際に働く栄養素です。不足すると、神経炎や脳組織への影響があるといわれています。

  • ビタミンB2

    エネルギー代謝の際に働く栄養素です。不足すると、口内炎・口角炎・舌炎・皮膚炎・成長の抑制などと関わりがあるとされています。

  • ビタミンC

    ビタミンCは、細胞や皮膚のコラーゲンをつくる際に必須の栄養素であり、抗酸化作用として活性酸素の除去をする役割もあります。

    不足することで影響を受けるのは血管などで、血管がもろくなり出血しやすくなるとされています。

2-5.ミネラル不足

ミネラルもビタミンと同じく、健康を保つうえで大切な栄養素です。体内では合成できないため食事からとらなければなりません。

また、ミネラル同士でも互いに関与しているため、偏らずにバランス良く摂取することが重要です。以下で、おもなミネラルについて解説します。

  • カルシウム

    カルシウムは、歯や骨をつくるもととしての働きがあるほか、心臓・筋肉・神経が機能するうえでも必要な栄養素です。不足すると、骨の発達が悪くなるおそれがあります。

  • 亜鉛

    亜鉛は、体内の消化や代謝など、あらゆる生体機能に関わる酵素をサポートする栄養素です。不足すると、味覚・聴覚・嗅覚の低下や、免疫力低下に影響するといわれています。

  • カリウム

    血圧や心筋の動きを調整する働きがあります。不足すると、疲労感や脱力感、血圧の上昇などにつながるとされています。

  • 赤血球内のヘモグロビンに多く存在する栄養素です。

    不足すると、血中の酸素供給が不足し、頭痛、集中力低下、食欲不振などが見られます。

体のために栄養バランスのとれた食事を心がけましょう

健康を保つためには、毎日の食事からの栄養補給が欠かせません。また、特定の食品に偏ると栄養バランスを崩してしまい、足りないものも出てくるおそれがあります。

一日3食の食事をしっかりとって、健康的な日々を過ごしましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医