60代が「疲れやすい」と感じる理由は?
体のだるさを解消するためにできること

年齢を重ねると、なかなか疲れが取れなくなったなど、何らかの自覚症状を感じている人は少なくないのではないでしょうか。だるさや疲れやすさにはさまざまな要因があります。

この記事では、疲れやすさの原因と、改善するために取り入れたい習慣についてお伝えします。

1.60代になり疲れやすくなったと感じるのはなぜ?

疲れは大きく分けると「心の疲れ」と「体の疲れ」があります。

「心の疲れ」は精神的なストレスにより疲労感につながるものです。これは体の症状にも表れる場合があります。年代問わず誰でも起こりうるため、だるさなどの原因がわからないときには、心の疲れがないかどうかを自分自身に問いかけてみることが必要です。

また「体の疲れ」は筋肉に乳酸などの疲労物質がたまることで生じやすいとされています。乳酸が過剰にたまると筋肉がスムーズに働かなくなり、筋肉が張ったような感触やだるさ、疲労感などにつながるでしょう。乳酸は同じ姿勢が長く続くことでたまりやすくなることから、長時間の座り仕事や移動の際などはこまめに体を動かすことが大切です。

さらに運動不足が続くと筋肉は衰えていき、少しの運動でも疲れやすくなることにつながります。

筋肉量は年齢とともに減少し、50~60歳代に著しく衰えます。そのため、筋肉量を維持するための日々の運動が大切なのです。

2.女性は疲れを感じやすい

女性はホルモンバランスの影響で、男性よりも疲れを感じる人が多いといわれています。
脳にストレスが加わると、自律神経が乱れやすく、さらに女性ホルモンの分泌の乱れにも影響し、疲れを感じやすい構造となっています。

ホルモンバランスが乱れると肌の調子や月経の周期に影響が出たり、体調にも悪影響をおよぼしたりする可能性があります。

2-1.更年期の変化

女性の「更年期」とは、閉経前の5年間と閉経後の5年間をあわせた10年間を指します。

閉経とは月経が停止した状態のことです。日本人が閉経する平均年齢はおよそ50歳ですが、これには個人差があります。早期に閉経する人のなかには40歳前半に、遅い人は50歳後半に閉経を迎える人もいます。

更年期に生じるさまざまな症状のなかで、日常生活に支障が出るような症状は「更年期障害」とよばれます。更年期障害は女性ホルモンが徐々に減少していくことで起こるとされ、症状としては気分の落ち込み、イライラ、意欲の低下などの精神的なものから、ほてりやのぼせ、めまい、動悸、頭痛、関節の痛みなどの体の変化もあります。

また、ホルモンバランスの乱れによって脳の疲れを感じやすくなることがあるため、どうしてもつらいときには医療機関へ相談してみましょう。

3.疲れやすさを改善するために生活習慣の見直しが大事

近頃疲れやすいと感じている人は、以下に挙げるような生活習慣の見直しをしてみることがおすすめです。

3-1.食生活

  • 一日3食をバランス良く食べる

    人は体を動かすために、食事によるエネルギー摂取が必要です。特に、糖質の代謝に寄与するビタミンB1、B2や、運動能力の維持に寄与する鉄やカルシウムを中心に、朝食から夕食まで3食をバランス良く食べることが理想とされています。
    また、体に負担をかけないようによく噛んで食べることも大切です。よく噛むことは消化吸収を促し、胃腸に負担をかけにくくすることにつながります。

  • 低栄養に気を付ける

    「低栄養」とは食事から十分な栄養を摂れておらず、特にたんぱく質とエネルギーが不足している状態をいいます。
    たんぱく質不足の状態は体重の減少や筋肉量の低下をまねき、エネルギー不足にも陥りがちです。そこから疲れやすさや、免疫力の低下にもつながります。そのため、食事ではたんぱく質を積極的に摂取するようにしましょう。

3-2.運動

疲れやすさへの対策として、運動を習慣にすることも一つの方法です。体を動かすと血流が良くなり、疲れにくい体づくりにつながります。ただし、日頃運動していない人はいきなり激しい運動すると体が追い付かなくなってしまうため、軽めの運動から始めるとよいでしょう。

まずは近所をウォーキングしてみることが手軽でおすすめです。大股歩きを意識することで運動効果が高まります。

また、なるべく階段を使うことで自然と運動量を増やすことが可能です。上りよりも下りのほうが筋肉への負荷がかかりやすいため、下りだけでも階段を使ってみましょう。

ストレッチも筋肉の柔軟性を高めるのに効果的です。お風呂上がりや寝る前のストレッチを習慣にするとよいでしょう。

3-3.睡眠

睡眠をしっかり取ることは、脳や体を休めることにつながるため、疲れやすさを感じたときの対処法の一つとして重要です。どのくらい眠ればいいのかは個人差がありますが、ある研究では一日あたり6~7時間の睡眠が健康維持のために有効とされています。

また、睡眠は時間だけではなく、質も大切です。寝室の環境や寝具を整えて、質の良い眠りを確保するようにしましょう。

60代の疲れやすさは食事・運動・睡眠の見直しが大事

60代になってから疲れやすさが増してきたと感じる人は少なくないでしょう。年齢とともに筋力が急に減少しやすいため、ある程度は仕方がないことといえます。

特に女性の場合は、女性ホルモンの影響で男性よりも疲れを感じやすい傾向にあります。いわゆる更年期障害ですが、疲れ以外にもさまざまな症状が現れるため、つらいときは医療機関への受診がおすすめです。

また、食事・運動習慣・睡眠の見直しによっても疲れやすさは改善が目指せます。元気な毎日を過ごすためにも、無理のない範囲で生活習慣の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医