70代・高齢の方が疲れやすい原因は?
おもな症状や見直すべき生活習慣とは

高齢期を迎えると、疲れやすくなったり、以前よりも歩く速さが遅くなったりと体の変化を感じる人は多いでしょう。これは、加齢により筋肉量の減少が起こるため仕方がない部分があります。

しかし、疲れの原因次第では、生活習慣の見直しなどにより改善が期待できることもあります。

今回は70代の人向けに疲れやすい原因と症状、その対策についてお伝えします。

1.70代は疲れやすい?高齢になると感じやすい症状

70代になると体にどのような変化が起こるのでしょうか。

1-1.フレイルによる体の変化

フレイルとは、加齢により体の働きや精神的な健康が衰えたり、社会的なつながりが希薄になったりしている状態です。フレイルと判断する基準に「体重の減少」「疲れを感じる」「活動量の減少」「歩行速度の低下」「筋力の低下」などが挙げられます。

そのままの状態でいると、介護が必要となってしまう可能性があるため、早めに対処することが大切です。

フレイル予防のためには、3食バランスの良い食事をとること、ウォーキングやストレッチなどの定期的な運動、趣味やボランティアなどの社会参加などが有効といわれています。

1-2.ロコモティブシンドロームによる体の変化

ロコモティブとは、骨・関節・筋肉など体を動かすための運動器の総称です。加齢などでこれらの機能が衰えると、介護が必要となったり寝たきりになったりするリスクが高まるとされています。

ロコモティブシンドローム(運動器症候群)の初期症状として多いのはひざ関節の痛みです。歩く際ひざには体重のおよそ3倍の圧力がかかります。長年ひざを使っていることで、中高年を過ぎると徐々に軟骨がすり減り、痛みを感じやすくなるのです。

また、歩くときにひざを支える脚の筋肉量も年齢を重ねると自然と減っていきます。そうするとよりひざの痛みが出て疲れやすさを感じ、ますます動かさなくなるという負の循環に陥りやすくなります。

体の機能は使わないと低下していきますが、逆に意識して動かすことである程度の筋力維持が期待できます。まずは少しでも体を動かす習慣をつけることが大切です。

1-3.加齢による体の変化

いつしか、いつも使っている駅の階段などで息切れしやすかったり、歩いていると多くの人が追い抜いていったりと、以前はなかったようことが増えると体力低下を感じることがあるでしょう。

また、夜遅くまで起きていられなくなったと自覚する方もいるのではないでしょうか。2017年に行なわれた調査によると、就寝時刻は年代によって差があることがわかっています。20~24歳は24時半頃に就寝する人が多く、70~74歳では22時15分前後まで早まっている傾向が見られました。

若い頃に比べて無理が効かなくなったと感じることも、加齢が一因しているでしょう。

2.日常生活でできる疲れ対策

70代以降に起こる体の変化に対応するために、日頃意識しておきたい疲れ対策を紹介します。

2-1.普段から歩くことを意識する

歩行速度は、加齢において重要な指標とされており、速く歩ける人はそうでない人に比べ、10年後の生存率が高いことが判明しています。

歩く速さに影響を与える要素は「脚の筋肉が衰えること」です。これに対して何も対策をしなければ筋肉の量は20歳から80歳までの60年間で、平均しておよそ4割も減少するといわれています。

また、加齢によってひざ関節の軟骨成分が減っていくことも、歩行速度の低下につながる原因の一つです。

つまり、歩く速さをキープするためには、脚の筋肉とひざ関節両方のケアが重要になります。

体の衰えを加速させる原因は、「もう年だから」と年齢を理由に体を動かすことをやめてしまうことです。もちろん無理は禁物ですが、可能な範囲で歩くなどの運動習慣を意識して過ごしてみてはいかがでしょうか。

2-2.栄養バランスの整った食事も大切

野菜に多く含まれているビタミン類は、体内でエネルギーをつくるときのサポート役として働きます。

ビタミン類が不足している場合、人間のエネルギー源である糖質・脂質・たんぱく質を摂取したところで、それらが持つ役割を十分に発揮させられません。そのことから、体へのエネルギーの供給が不十分となり、疲れにつながる可能性があります。

また、成人が一日に摂りたい野菜の目標量は350gとされています。これは、かぼちゃの煮物や、ほうれん草のお浸しなど野菜中心の小鉢を一日5皿以上食べるという計算です。毎日野菜が摂れていないという人は作り置きして冷凍保存したり、汁物で野菜をたくさん摂ったりするなどの工夫をしてみるとよいでしょう。

自分の脚で歩き続けることを目指しましょう

70代以降に起きやすい体の変化の特徴や、疲れやすさへの対策についてお伝えしました。

脚の筋肉やひざの関節などは、年齢とともにどうしても衰えやすい部分です。しかし、適度な速さで歩けることが、元気で長生きするための秘訣といえます。運動することが筋力の回復や維持につながるため、日常的な運動習慣が大切です。

また、日頃の食生活を見直し、野菜を中心としたバランスの良い食事に改善することで、エネルギー不足の解消が期待でき、快適な日常生活をおくれるようになるでしょう。

いつまでも自分の脚で歩き、疲れやすさをなるべく軽減させながら生活するためにも、今からできることを実践してみませんか。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医