1.不規則な食生活とは?
そもそも不規則な食生活とは、どのような状態を指すのでしょうか。
例えば、食事をする時間が毎日違っているような生活は不規則といえます。
工場や医療現場などで交代制勤務をしている人はどうしても食事時間が乱れてしまうでしょう。その場合でも、なるべく食事をとる時間が大きく崩れないような工夫は健康を維持するうえで大切とされています。
また、朝昼夕のなかでどこかの食事を抜いてしまう「欠食」も不規則な食生活です。
近年では、食生活に関わる社会環境の変化にともなって、朝食欠食率が増えてきています。朝食をとらない理由としては「食事をとる時間がない」「体調に合っている」「食欲がない」などが挙げられていますが、朝食を抜くことで摂取する栄養素が偏り、健康への悪影響をおよぼすことが示唆されています。
2.不規則な食生活が体に与える悪影響とは
食事時間がバラバラであったり、欠食習慣があったりと、不規則な食生活が続くと体にどのような影響が起こりやすいのかを説明します。
2-1.肥満の原因となる
例えば夜間勤務の場合、夜中に食事をとることもあるでしょう。
しかし、夜遅い時間の食事は血糖値の増加をまねきやすく、結果的に肥満や糖尿病に罹患する確率を高めやすいことがわかっています。
また朝食を抜く、もしくは少ない量しかとっていない場合は、その分昼食に過食したり、間食が増えたりと、体重増加や肥満を引き起こしやすいといわれています。
2-2.生活習慣病の原因となる
先ほどお伝えしたように、不規則な食生活は肥満をまねきやすいですが、肥満は糖尿病・脂質異常症・高血圧などの生活習慣病のもとになります。
2-3.自律神経の乱れと疲れの原因となる
自律神経とは、呼吸・血液循環・消化吸収など、人間が生きるうえで必要不可欠な体の機能をコントロールしている神経です。
自律神経には2種類あり、おもに活動しているときに働く交感神経と、心と体を休めるときに働く副交感神経というものが存在します。
この2種類は対照的な働きをしていますが、活動時と休息時においてうまくバランスをとることで健康な体を維持しているのです。
しかし、この自律神経のバランスが何らかの要因で崩れてしまうと、体の不調が生じやすくなることがわかっています。
例えば体を休めるための副交感神経がうまく働かないと、疲れがとれにくく、睡眠不足の要因となったり、だるさを感じやすくなったりするでしょう。
自律神経のバランスが崩れてしまう原因には、運動不足、ストレスによる刺激、喫煙習慣、夜更かしなどが挙げられますが、偏った食生活も影響を与えるともいわれています。
2-4.腸の疲れと免疫力低下の原因となる
慢性的な便秘や下痢、お腹が張るような感覚が続いている人は腸の状態が芳しくない可能性があります。
腸内に悪玉菌が増えて環境が悪くなると、慢性的な便秘や下痢、お腹が張るなどの自覚症状を呈する傾向が見られます。この状態を放置していると、腸内に多く存在する免疫細胞の働きの低下をまねくことから、さまざまな病気の原因にもなるのです。
腸内環境を悪化させる要因として、睡眠不足やストレス、さらに不規則な生活や無理なダイエットのための食事制限などがあります。
3.不規則な食生活を改善する方法
ここまで不規則な食生活がまねく悪影響についてお伝えしました。では、食生活を改善するにはどうしたらよいのでしょうか。
まずは、一日3食を規則正しい時間にとることです。欠食をして一日2回以下の食事になってしまうと1回あたりの食事量が多くなりやすく、食後の高血糖や肥満の原因となります。
夜遅くの食事の場合は特に食事のバランスに配慮することが望ましいでしょう。
例えばおにぎりやパン、カップラーメンのみといった糖質に偏った食事をとると血糖値を上げることにつながるため、できるだけ主菜(肉・魚・卵などたんぱく質が多いメニュー)と副菜(野菜・海藻・きのこなどを中心にしたメニュー)も組み合わせるようにしましょう。
また、どうしても夜遅くに食事をとる必要がある場合には、分割食もおすすめです。
分割食とは、例えば夕食の一部を夕方に食べて、残りは夜間に食べることで夜遅い時間の食事量を減らす方法です。これによって夜間の血糖値上昇や肥満のリスク低下が期待できます。勤務状況により、食事回数を増やすことも一つの方法として挙げられるでしょう。
しかし、仕事などの状況で致し方ない場合以外は、基本的に食生活のパターンはなるべく一定にすることが大切です。
食事をとるタイミングが乱れてしまうことで、肥満やそれにともなう生活習慣病のリスクを高めることが示唆されています。
夜勤勤務の場合は難しいケースもあるかもしれませんが、なるべく普段の食生活と近いタイミングで食事をとることが望ましいとされています。
食事のタイミングや内容を見直しましょう
食事は日々の習慣づけが大切です。規則正しい時間にとることで、肥満や生活習慣病の予防にもつながります。
また仕事でどうしても夜遅い時間の食事になってしまう人は、糖質が多いものやスナック菓子などに偏らず、主食・主菜・副菜をバランス良く摂ることを心がけてみてください。
一食での調整が難しい場合は分けて食べる分割食もおすすめです。
ライフスタイルに合わせて食生活を見直すことが、将来の健康につながります。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。