1.60代の特徴と健康課題
ここでは、60代におけるライフステージの特徴と健康課題についてお伝えします。
1-1.60代は老後に向けて健康を考える時期
60代以降は人生の完成期と呼ばれ、残りの人生を楽しむ時期です。
一方で、身体的には老化が進行し、健康の不安が大きくなる時期でもあります。症状としては、視力の低下・耳が遠くなる・歯の喪失による咀嚼機能の障害など、生活するうえで不自由に感じるものもあれば、寝たきりなどの介護を必要とする重い症状になるケースもあるでしょう。
1-2.自律神経の乱れは老化を招きやすい
自律神経が乱れると老化のペースを加速させます。なぜ自律神経の乱れが老化を招くのでしょうか。
自律神経は交感神経と副交感神経からなり、交感神経は心身が興奮・緊張するときに優位に働き、副交感神経は眠ったりくつろいだりするときなど、体も心もリラックスするときに優位に働きます。
これらの理想的な活動バランスは1対1といわれていますが、中高年では副交感神経の働きが急激に低下してしまうことがわかっています。
一方で、交感神経の働きは年齢を重ねてもあまり変化がないため、交感神経だけが強く働く状態になりアンバランスを招くのです。
交感神経ばかり高い状態が続くと、常に緊張した状態になるため心身ともに疲労が蓄積してしまいます。
また自律神経のバランスが崩れると血流の悪化を招いたり、腸内環境の悪化を引き起こしたりすることから、このままの状態が続くと体調不良や病気を招きやすくなり、老化のペースを加速させる要因となるのです。
1-3.60代から気を付けたいロコモティブシンドロームとは
ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)とは、筋力の低下・関節や骨の病気・バランス能力の低下によって骨折・転倒しやすくなることで自立した生活が困難になり、介護が必要になるリスクが高まる状態のことです。
日本人の平均寿命は約80歳です。これにともない筋肉や神経・関節や骨などの運動器は長い期間酷使されるため、体がうまく動かないことが増えてきます。
また、ロコモの初期症状でより多く見られるのが膝関節の痛みです。歩行の際には体重の約3倍もの圧力が膝にかかり、その大きな力は長年無意識に使われ続けます。その積み重ねにより、60代頃から膝の軟骨がすり減って痛みが生じやすくなるのです。
ロコモが進行すると、60代以降に体が思うように動かない状態になってしまう可能性もあるため、生涯にわたって健康的な生活を送るには運動器のケアをすることが大切です。
2.60代の不調を改善・予防する方法
年齢を重ねるごとに健康への課題は増えていきます。だからこそ、不調を自覚する前から、もしくは予兆を感じたときから、前向きな予防と対策を行なうことが重要です。ここからは、60代に起こる不調への予防と改善方法をお伝えします。
2-1.自律神経を整えて老化を予防
老化を予防するには、自律神経のバランスを整えることが重要です。自律神経のバランスが崩れる原因は、不規則な生活習慣や更年期による性ホルモンの乱れ・ストレスなどが影響しています。
自律神経を整えるための日々の対策として、まず朝起きたらすぐにカーテンを開けて朝日を浴びる習慣をつけましょう。朝に光を浴びることで体内時計のスイッチが入り、夜になると睡眠ホルモンがきちんと分泌されるリズムがつくことで快適な睡眠につながります。
また、ダンスや水泳・踏み台運動・ウォーキングなどのリズム運動もおすすめです。リズム運動は筋肉を継続的かつ規則的に動かすため、幸せホルモンである「セロトニン」の分泌を促します。
そして、栄養バランスがとれた食事・良質な睡眠など規則正しい生活を心がけ、ストレスをためすぎない工夫をしましょう。
2-2.ロコモ予防には適度な運動と食事コントロール
ロコモを予防するには、適切な運動と食事のコントロールが大切です。
運動は、一気に頑張りすぎるよりも「普段からこまめに体を動かすこと」が重要となります。
例えば、こまめに掃除をする・なるべく階段を使用する・テレビのリモコンは手が届くところに置かないなど、ちょっとした工夫で運動量を増やすことができるのです。
その他、一日10分からでいいのでラジオ体操やストレッチ・スクワットといった運動習慣を取り入れるのもよいでしょう。無理をせずに自分のペースで毎日続けることが肝心です。
また、食生活にも気を付ける必要があります。
太りすぎも痩せすぎもロコモの原因になります。食事は一日3回を心がけ、毎回主食、主菜、副菜をそろえて、果物や牛乳・乳製品を組み合わせるとバランスが整いますので、ぜひ意識してみてください。
毎日の積み重ねでセカンドライフをイキイキとしたものに
60代以降は人生の完成期と呼ばれ、残りの人生を楽しむ時期です。一方で、身体的には老化が進行し、健康の不安が大きくなる時期でもあります。
60代を健康に過ごすには、頑張りすぎる運動よりも「こまめな運動」を継続すること、そして規則正しい睡眠や栄養バランスの良い食事を毎日積み重ねていくことが重要となります。
無理なく自分のペースで取り組める方法を見つけて、セカンドライフをイキイキと過ごしてください。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。