1.コレステロール値はバランスが重要
コレステロールは体内で細胞膜やホルモン、胆汁酸の材料となる脂質です。
悪玉と呼ばれるLDLコレステロールと善玉と呼ばれるHDLコレステロールが存在し、両者のバランスが崩れることで脂質異常症という疾患につながります。
LDLコレステロールは全身にコレステロールを運ぶことで知られていますが、多過ぎると血管が詰まる原因となります。
一方で、HDLコレステロールは血管に蓄積したコレステロールを回収するため、血管が硬くなることを防ぐ役割があります。
コレステロールは少な過ぎると免疫系に影響することがわかっており、多過ぎても少な過ぎても寿命に影響することから、ちょうど良いバランスを保つことが大切と考えられています。
また、健康の観点からはコレステロールだけでなく、中性脂肪の値にも注意が必要です。
中性脂肪はエネルギーとして消費されなかった脂肪が体内に蓄積したもので、LDLコレステロールの性質や増加にも関与しているとされる成分です。
2.コレステロール値の基準
次にコレステロールや中性脂肪の基準値について説明します。
2-1.HDLコレステロール
HDLコレステロールにはLDLコレステロールを回収する役割があるため、値が低いと注意が必要になります。
異常:34mg/dL以下
要注意:35〜39mg/dL
基準範囲:40mg/dL以上
低値の場合、糖尿病、肝硬変、甲状腺機能異常などの基礎疾患も考えられます。
2-2.LDLコレステロール
LDLコレステロールは血管に蓄積して疾患の発症リスクを上げるため、基本的には数値が高くなることに注意が必要ですが、低過ぎても異常値となってしまいます。
異常:59mg/dL以下と180mg/dL以上
要注意:120mg/dL〜179mg/dL
基準範囲:60mg/dL〜11960mg/dL
高値の場合、原発性胆汁性肝硬変などの基礎疾患も考えられます。
2-3.中性脂肪
中性脂肪は高いと糖尿病、膵炎、高トリグリセライド血症、甲状腺機能低下症などが、低値だと低βリポたんぱく血症、肝硬変、アジソン病、低栄養などの懸念があります。
異常:29mg/dL以下と500mg/dL以上
要注意:150mg/dL〜499mg/dL
基準範囲:30mg/dL〜149mg/dL
3.コレステロール値のバランスを整える食事・生活習慣とは
では具体的にコレステロールや中性脂肪のために、どのようなことに注意すべきなのでしょうか。
ここでは食事と生活習慣の観点からできることを紹介します。
3-1.食事
コレステロールを含む食品や甘いもの、糖質を摂り過ぎないことが大切です。
動物性脂肪には飽和脂肪酸が多く含まれており、コレステロール値を上昇させてしましいます。そのため、バター、肉の脂身、鶏卵、魚卵などの摂り過ぎには注意が必要です。
また、甘いものや糖質については、摂り過ぎると中性脂肪が高くなる原因となるため、こちらも注意しましょう。
3-2.生活習慣
コレステロールを減少させたり、蓄積させないようにしたりするには、運動やストレスケアなどが大切になります。
LDLコレステロールを下げるためにはウォーキングや水泳、サイクリングなど適度な運動がおすすめです。肥満解消など生活習慣病の対策にもなります。
また、ストレスホルモンは血管や血液に影響してコレステロール値や血糖値を上げる原因になりますので、自分に合った趣味に触れてストレスのケアを行ないましょう。
喫煙をされている方はタバコを控えることも重要です。喫煙にはLDLコレステロールの上昇とHDLコレステロールの低下の両方のリスクがあります。生活習慣病などのリスクもありますので、禁煙を検討したほうがよいでしょう。
日々の食事内容と生活習慣を見直しましょう
コレステロールがおよぼす健康へのリスクや基準値、日々の生活で改善できることを紹介しました。
有害なものと思われがちなコレステロールですが、体にとってはなくてはならない物質です。摂り過ぎは良くありませんが、不足による悪影響もあるため、健康のためには適切なバランスを保つことが大切です。
体内で過剰にならないように、コレステロールの多い食事を摂り過ぎていないか、また、運動やストレスへの向き合い方など生活習慣を見直すことから始めてみましょう。
監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。