1.加齢にともない基礎代謝量は低下する
年齢を重ねると痩せにくく感じるおもな原因の一つは、基礎代謝量の低下です。
基礎代謝とは、生きていくために必要な呼吸・心拍・体温維持などに使われているエネルギーのことです。年齢を重ねると、筋肉量などが低下することで基礎代謝量も低下することがわかっています。個人差はありますが、男性は40代、女性は50代に顕著に減少しやすい傾向にあります。
活動量の低下などのさまざまな理由から、一日あたりの総エネルギー消費量も同時に低下しやすくなるため、結果的に痩せにくさや体重の増加につながると考えられています。
基礎代謝量や活動量の低下は、消費エネルギーよりも摂取したエネルギーのほうが多くなることも原因の一つです。余分な脂肪が体に蓄積されることになり、結果的に肥満を招きやすくなります。
肥満はさまざまな生活習慣病につながる要因となるため、健康のためにも予防は重要です。
2.【食事編】ダイエットのポイント
ここからは、食事の面で気を付けたいことをお伝えします。
2-1.サルコペニアを予防する
「サルコペニア」は、骨格筋が減少してしまい、筋力が低下する状態のことです。身体機能に支障が生じ、日常生活への影響が懸念されます。
たんぱく質の摂取量が少ない人はサルコペニアのリスクが高くなることがわかっているため、食事の際にはたんぱく質がしっかり摂れているかを意識できるとよいでしょう。
2-2.朝食を含めて3食きちんと食べる
平成29年の厚生労働省の調査によると、70歳以上で朝食を欠食している人は若い年代に比べて少ないですが、なかには「何も食べない」という人もいます。
同じエネルギー量を摂取しても、食事回数が少なくなるほど、体脂肪が蓄積されやすくなるなどデメリットが増え、肥満や脂質異常症を招きやすいことがわかっています。
そのため、朝食を含めた一日3食を規則正しく摂ることは健康のためにも望ましいでしょう。
2-3.「ヘルシースナッキング」を取り入れる
「ヘルシースナッキング」とは、食事と食事の間隔が空きすぎてしまうことによる過食を防ぐために、あえて間食をする食習慣のことです。3食の食事では足りない栄養素を補う役割もあります。
このときに選ぶ食品としては、食物繊維・ビタミン・ミネラル・オメガ脂肪酸などが補える果物やナッツ類、カルシウムを補える乳製品などがおすすめです。
一般的なお菓子・ジュース・菓子パンなどは高カロリーのものが多いため、回数や量を調整してうまく取り入れるとよいでしょう。
3.【運動編】ダイエットのポイント
ここからは、運動面で留意していただきたいことを解説します。
3-1.食後に軽い運動をする
ダイエットのためには運動が効果的ですが、実はそのタイミングも重要です。
食事から摂取した糖分は、食後30分~1時間ほどの間に運動することで、体脂肪として蓄積される前にエネルギー源として消費されやすくなります。ゆえに、このタイミングで運動を行なえば、糖が体脂肪になりにくくなるのです。
ただし、食事の直後に運動することは避けましょう。消化のためのエネルギーが運動のために使われ、消化不良の原因となるからです。また、食後30分~1時間ほどの間のタイミングでも、激しい運動をすると胃に負担をかけてしまいます。息切れをしない軽めのウォーキングなどの有酸素運動をしましょう。
また、70歳以上の人の一日の歩数は、男性の場合6,700歩以上、女性の場合5,900歩以上が望ましいとされています。日常的によく動く習慣は、生活習慣病にかかるリスクが低下することや、寝たきり予防にもつながるといわれています。そのため、目標の歩数を参考に歩くことから始めてみましょう。
3-2.脚を鍛える習慣づくりをする
運動をするときには、脚の筋肉を鍛えることを意識してみましょう。
脚の筋肉は人間の体のなかで比較的大きな筋肉です。そのため、脚の筋肉を鍛えることは基礎代謝量を効率よく上げることにつながり、ダイエットに役立ちます。
脚の筋肉は、立ったり歩いたり姿勢を維持するために重要な筋肉で、加齢にともなって衰えやすい部分でもあります。これらを鍛えることは日常生活の質を維持するためにも大切です。
日常生活ではなるべく階段を使う、車を使わずになるべく歩くことを意識してみましょう。
健康的なダイエットのためにも食事と運動を見直そう
70代からのダイエットは、健康の維持にも効果を発揮しやすいものです。
食後の適切なタイミングで運動を行なうことで、体脂肪の蓄積を防ぎやすくなり、生活習慣病の原因にもなりうる肥満の予防にもつながります。また、脚の筋肉の強化によって、加齢にともなって低下しがちな基礎代謝量の増加が見込めます。
生活の質の維持にもつながるなど、「ダイエットのために」と思って行なう行動が、健康に対してもメリットが非常に多いものとなります。
また、食事はたんぱく質を意識して、できれば3食摂ること、もし食間にお腹が空いた場合は乳製品や果物、ナッツ類などを摂取することで、ダイエットだけでなく、健康にも一役買うものとなるでしょう。
無理な減量は健康を害してしまうおそれもあります。健康第一で生活習慣を見直していきましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医