1.便秘とその原因
健康的な理想の排便は、1日1~2回とされています。体質や食事量によって便の回数が2~3日に1回でも、身体に不調や違和感がない場合は便秘ではない可能性もあります。
便秘の原因はさまざまですが、代表的なものとしては「食習慣や生活リズムの乱れ」「栄養素の不足」「水分不足」「運動不足」「腸の筋力低下」「精神的な要因や緊張」「体質」などが挙げられます。
そして、これらの原因の中でも、特に「栄養素の不足」と「水分不足」は便秘に関係します。便は腸を進むにつれ、水分が吸収されて固形に近づくため、水分が足りないと便が硬くなってしまうからです。そのため、排出時の不快感や残便感が生じてしまいます。また、食物繊維が不足することにより、便の体積が小さくなってしまうことも便秘の原因として挙げられます。
2.一般的な便秘解消法
便秘の解消方法としては「食習慣の改善」「適度な運動」「生活習慣の改善」が挙げられます。食事から食物繊維を積極的に摂取することに加えて、便を軟らかくして排便を助ける水分や、大腸を刺激する脂質(脂肪酸)も適度に摂取しましょう。
また、運動不足によって腹筋が弱くなり、腸の蠕動運動(ぜんどううんどう)が悪くなることも便秘の原因として考えられますので、適度な運動を心がけましょう。
そして、排便は人間の生命活動のための働きの一つであることから、通常は決まった時間に排出されることが多いです。しかし、生活習慣が乱れていたり精神状態が弱っていたりすると、排出のリズムも乱れがちになります。
3. 便秘解消方法(1)食べ物
便秘で悩んでいる場合、「栄養素の不足」と「水分の不足」が原因となっているケースが多くあります。快便につながる食品のキーワードは、「食物繊維」「酸」「炭水化物」「適度な脂質」「刺激」そして「水分」です。
3-1.積極的に食べたい食品
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食物繊維を多く含む食品
食物繊維は、人体では消化されない物質です。水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶けやすい水溶性食物繊維の2種類があります。
不溶性食物繊維は便のカサを増やし、腸の蠕動運動を促進します。水溶性食物繊維は、善玉菌のエサになり便の柔らかさを丁度良く調整する働きを持ちます。
不溶性食物繊維は、蓮根、ゴボウ、タケノコ、ブロッコリー、きのこ類、ひじきなどに多く含まれ、水溶性食物繊維は人参、大根、玉葱、トマト、キャベツ、ほうれん草などに多く含まれています。
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冷水・冷牛乳
適量の冷水・冷牛乳は、胃や腸への良い刺激となり、特に起床後の摂取をおすすめします。
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適度な脂質
脂質に含まれている脂肪酸は、大腸を刺激して蠕動運動を活発にしてくれます。また、便の排出をスムーズにする働きも持ちます。たとえば、ダイエット中で脂質摂取を控えている場合は、不足している恐れがあります。サラダにオリーブオイルをかけるなど、脂質の摂取を工夫してみましょう。
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有機酸や乳酸菌を多く含む食品
有機酸を多く含む食品を積極的に摂ることをおすすめします。酸味の強いパイナップルや梅干し、いちご、りんご、などがおすすめです。
また、有機酸を作り出す乳酸菌を含む食品を取り入れるのも良いでしょう。乳酸菌はヨーグルト、チーズ、漬け物などの発酵食品に多く含まれています。
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腸管内で醗酵し、ガスを発生させやすい豆類・カボチャ・イモ類
豆類やイモ類には、食物繊維と糖質が多く含まれています。糖質は腸内で発酵することでガスを発生させるため、便意を感じやすくなります。
3-2.食べ過ぎに気を付けたい食べ物
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刺激性食品
適度なアルコールや香辛料などの刺激性食品は、蠕動運動を活発にしますが、過剰摂取は腸内でも刺激となり腸内や肛門を痛めてしまうこともあります。そのため、激辛食品は控えるようにしましょう。
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硬い食品など
硬い食品・濃い味付け・炭酸飲料・過食などが便秘の原因になっている場合も考えられますので、これらによる物理的な刺激は避けましょう。
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揚げ物など
脂質に含まれる脂肪酸は大腸に良い刺激を与えますが、適量であることが肝要です。特に揚げ物による脂質の摂取は、脂質が過剰である可能性が考えられますので、揚げ物は控えるようにしましょう。
4.便秘解消方法(2)運動
適度な運動は、大腸の蠕動運動を促すためにも重要です。ストレス解消や精神状態の安定にもつながりますので、ストレッチや軽いウォーキングなどから始めて、少しずつ運動を習慣にしていきましょう。また、ラジオ体操やウォーキングなどは、筋肉の衰えを予防することができます。
5.便秘解消方法(3)生活習慣
生活習慣を改善することも、便秘を解消するために重要なポイントです。排便のリズムが整わない人や便意を感じにくくなっている人は、まず生活習慣を整えることを意識してみましょう。
起床後は水分や朝食を摂ることで腸が動きやすくなります。また、便意を我慢しない、便意がなくても毎日決まった時間に排便を習慣化させる、過度の緊張を避けることやストレスを溜め込まないなどを心がけましょう。
6.便秘解消方法(4)その他
個人差があるため一概にはいえませんが、マッサージ、下剤や浣腸によって便秘が改善されることもあります。ただし、これらは独学で行うと危険が伴うため、専門家や医師のアドバイスを受けて行うようにしましょう。
食事内容や生活習慣を変えても改善の兆しがない人や、便秘に長く悩んでいる人は、医師に相談してみることをおすすめします。
生活習慣を見直してみよう
原因に応じて、有効的な便秘の解消方法について解説しました。便秘を放っておくと、付随した症状や疾病を引き起こすこともあるため、注意が必要です。便が習慣的に出ないという人は、ぜひこの機会に食事内容や生活習慣を見直してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。