1.健康寿命とは?平均寿命との違い
健康寿命とは、「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことです。
厚生労働省「健康寿命の令和元年値」によると、令和元年における日本人の健康寿命は、男性が72.68歳、女性が75.38歳となっています。
一方、平均寿命は0歳における平均余命を指す言葉であり、令和元年のデータでは男性が81.41歳、女性が87.45歳です。
平均寿命と健康寿命の差は、日常生活の制限を受ける不健康な期間を意味します。たとえ平均寿命が長くても、健康寿命との差が大きい場合には不健康な状態が長期にわたることとなり、医療費や介護費が増えるなど生活の負担も大きくなってしまいます。
2.日本人の健康寿命の推移
日本人の健康寿命・平均寿命は、男女ともに年々少しずつ延びています。さらに、近年では健康寿命の増加分が平均寿命の増加分を上回る状態にあり、不健康期間が短縮する傾向が見られます。健康寿命が長くなると、不健康な期間を短縮することにつながります。
具体的な数値は以下のとおりです。
<男性>
|
平均寿命 |
健康寿命 |
平均寿命と 健康寿命の差 |
平成22年 |
79.55歳 |
70.42歳 |
9.13年 |
平成25年 |
80.21歳 |
71.19歳 |
9.01年 |
平成28年 |
80.98歳 |
72.14歳 |
8.84年 |
令和元年 |
81.41歳 |
72.68歳 |
8.73年 |
<女性>
|
平均寿命 |
健康寿命 |
平均寿命と 健康寿命の差 |
平成22年 |
86.30歳 |
73.62歳 |
12.68年 |
平成25年 |
86.61歳 |
74.21歳 |
12.40年 |
平成28年 |
87.14歳 |
74.49歳 |
12.34年 |
令和元年 |
87.45歳 |
75.38歳 |
12.06年 |
参照:厚生労働省「健康寿命の令和元年値について」
高齢化の進む日本が活発な経済や社会保障制度を維持するためにも、国民の健康寿命を延ばすことの重要性が注目されています。
国民の健康増進のための指針である「健康日本21(第2次)」でも、「健康寿命の延伸」が基本的な方向の一つとして定められています。
3.健康寿命を延ばすためにできること
健康寿命を延ばすための3つのアプローチを紹介します。
3-1.食生活を見直す
食生活は生きるために不可欠な要素であり、生活習慣病の予防や生活の質を向上するためにも重要です。健康寿命を延ばすために、栄養豊富な食事を心がけましょう。
具体的には、主食・主菜・副菜をきちんと組み合わせた食事を一日2回以上、ほぼ毎日摂るのが理想的です。外食やコンビニ弁当の割合が多い方は野菜が不足しがちなので、サイドメニューでしっかり野菜や果物を摂るよう心がけましょう。
野菜だけでなく、乳製品、豆類、魚、卵などのタンパク質豊富な食品や、エネルギー源となる穀類なども摂取できるよう、バランス良く組み合わせることが大切です。
また、日本人は食塩摂取量が多い傾向にあるので、醤油や味噌などの味付けをしすぎないように気をつけるとよいでしょう。
飲酒も適量にとどめます。厚生労働省では、一日あたりの純アルコール摂取量20g程度を「節度ある適度な飲酒」としていますので、その範囲内におさまるようにしましょう。
肥満・やせを避けて適正体重を維持すると、脂質異常症や糖尿病、高血圧など生活習慣病の発症予防、重症化予防にもつながります。
3-2.日頃から活発に運動をする
意識的に運動を心がけることは、健康寿命を延ばすうえで有用です。まずは現状よりも、一日10分でも多く体を動かすことから始めてみるのが大切です。
目安は、歩行もしくは歩行と同等以上の身体活動を、毎日60分行ないます。さらに、1週間に60分くらいは息がはずんで汗をかくような運動があると理想的です。
高齢者の場合は運動強度を問わず、植物の水やりやラジオ体操なども含めて毎日40分程度の身体活動を行なうことが推奨されています。
3-3.定期的な健診・検診と口腔ケアを怠らない
定期的に健康診断を受診し、適切な検診を受けることが健康寿命を延ばすことにつながります。がんの早期発見・重症化予防のためには、がん検診を受けたり、肝炎ウイルス、ピロリ菌などの感染症検査を受けたりすることが欠かせません。
また虫歯や歯周病を避け、口腔内を健康にすることは、食べる喜びや話す楽しみを保つために重要で、生活の質にも大きく影響します。歯周病は循環器疾患などとの関連も注目されており、定期的な歯科検診が大切です。
日々の生活を見直して健康寿命を延ばそう
健康寿命を延ばすことは、健康上の理由で日常生活を制限されることなく暮らせる期間を長くすることを意味します。
バランスの良い食事や運動習慣を意識し、検診などで生活習慣病の早期発見・重症化予防に努めることが、健康寿命の延長につながるのです。
無理なく生活習慣を見直していきましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。