自宅でできる正しい血圧測定方法とは?
基準となる数値や測定時間を解説

血圧が気になりだしたら、健康診断や病院だけでなく、ご自身でも血圧測定をしてみてはいかがでしょうか。家庭用の血圧測定器も数多く商品化されており、誰でも気軽に血圧を測定できるようになっています。

自宅で血圧を測定するときに注意するポイントや、チェックしておくべき基準の数値について解説します。

1.自宅で血圧測定をする目的

そもそも、健康診断や病院で血圧を測定できるのに、なぜ自宅で血圧を測定する必要があるのでしょうか。自宅で血圧測定をする目的は、日常の血圧変動を知ること、そして高血圧による合併症などのリスクを回避することにあります。

1-1.日常生活を行なっている際の血圧を把握することが重要

心臓には、全身に血液を送るポンプとしての役割があり、心臓から流れ出た血液が動脈の壁を押す力を血圧と呼びます。

血圧は一日のなかでも常に変動していますが、健康診断や病院では、その時点の血圧しか測定できません。そのため「測定する場所や時間を変えてみたら、健康診断の結果とは異なる数値になった」というケースも少なくないでしょう。

例えば、医師の前では緊張してしまい、血圧が高くなる「白衣高血圧」というものが知られています。この場合、自宅で血圧を測定すると、病院で測定するよりも低値であるケースが大半です。

その他に、病院で血圧を測定すると正常範囲内でも、早朝などに血圧が高くなる「仮面高血圧」も存在します。

このように、病院で測定する血圧値はある時点の状態を反映しているにすぎないため、自宅でも血圧を測定し、しっかりと管理することが重要です。

1-2.高血圧で起こりうる体へのリスク

高血圧による自覚症状は、ほとんどありません。そのため、健康診断などで高血圧を指摘されても、病院を受診せず治療していない人もいます。

しかし、適切な治療をせず放置しているとやがて血管に負担がかかり、さまざまな合併症を引き起こすリスクが高まります。そのため、血圧測定で高血圧かどうかを知り、自覚症状がない状態でも医師に相談をしてみましょう。

2.基準の数値はどのくらいか

血圧を測ると、2つの数値を知ることができます。1つは心臓が収縮して血管に最大圧力がかかったときの値を示す「収縮期血圧」で、もう1つは心臓が拡張して最も血管内の圧力が低下したときの値を示す「拡張期血圧」です。この数値のどちらかが基準値を超えていると、高血圧と判断されます。

高血圧かどうかを判断するには、病院で測定したときの収縮期血圧が140mmHg以上、もしくは拡張期血圧が90mmHg以上になっていないかを確認しましょう。

また、一般的には自宅で測定した血圧(家庭血圧)のほうが、病院で測定した血圧(診察室血圧)より低いと考えられているため、家庭血圧の場合は基準値が異なります。家庭血圧の場合は、収縮期血圧が135mmHg以上、もしくは拡張期血圧が85mmHg以上となっていないかで判断してください。

その際、診察室血圧と家庭血圧の数値に大きな差がある場合には、日常生活を送っている際の血圧である家庭血圧を基準に考えたほうがよいでしょう。

3.正しい血圧測定の仕方

前述のとおり、血圧は常に一定のものではないため、自宅で血圧を測定する際には、以下のポイントを押さえておきましょう。

3-1.血圧測定の時間帯

血圧測定は、毎日朝と夜にそれぞれ1回以上行なうのが理想的です。毎日同じ時間帯に、同じ環境下で測定するようにしましょう。

朝は起きてから1時間以内の朝食をとる前、夜は寝る直前に測定するのがよいでしょう。数値に影響を与えかねないため、運動や入浴の直後は血圧測定を避けてください。

また、喫煙は血管を収縮させて血圧を上昇させる働きがあるため、喫煙直後の血圧測定も控えましょう。

3-2.測定する体勢と部位

血圧を測定するときは背筋を伸ばして椅子に座り、リラックスしましょう。会話なども血圧を上昇させかねないため、できるだけ控えて静かな場所で測定してください。

なお、家庭用の血圧測定器には、上腕にカフ(腕帯)を巻いて測定するタイプのほか、指先や手首で測定するタイプなどがあります。指先や手首では血管が細いため測定誤差が出やすく、正確な数値を得られない場合もあるため、上腕で測るタイプがおすすめです。

上腕式の血圧測定器で正しく血圧を測定するには、カフを心臓の高さに合わせることが重要です。肘の内側から指1本分上を目安にカフの端を合わせ、カフが肘にかからないようにしっかり巻き付けます。

そして、測定の際には、手のひらを上に向けた状態で、姿勢を維持してください。

1回の測定だけでは誤差が大きい場合があるため、同じ時間帯に2回測定し、その平均をとるようにしましょう。

毎日血圧測定をして血圧を把握しよう

高血圧は、適切な治療をせずに放っておくと、さまざまな合併症を引き起こすおそれがあります。

健康診断や病院でも血圧は測定できますが、診察室血圧と家庭血圧には乖離があることが多く、さらに病院での血圧測定だけでは、仮面高血圧を見抜くことができません。日常生活を送っているときの血圧を把握するためには、家庭での血圧測定が重要です。

自宅で血圧を測定するときは、朝と夜にリラックスした状態で行なうようにしましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。