1.疲労回復に必要なこと
疲労には活性酸素が大きく関わっています。人間が生きていくなかで、体内では活性酸素が発生しています。細胞に栄養と酸素が運ばれると、酸素を利用して栄養を燃やし、エネルギーを作りだします。酸素が燃焼するときに、一緒に発生するのが活性酸素です。
体の抗酸化力が十分な場合は、多すぎる活性酸素を取り去り、細胞はスムーズにエネルギーを作りだせます。
しかし、活性酸素が増えると、抗酸化力が追いつかず細胞がさびついてしまいます。栄養を細胞のなかでスムーズに燃やせなくなり、エネルギーの産生が低下。エネルギー不足から疲労を感じるようになってしまいます。
毎日を元気に過ごすには、活性酸素への対策を行なって疲れをためないことが大切です。また、エネルギー不足も疲労の原因の一つです。不足しているエネルギーを補うには、エネルギーの代謝に役立つ栄養素も、意識して摂る必要があります。
2.疲労回復に効果が期待できる栄養素と食べ物
疲労回復には、活性酸素への対策と、エネルギー代謝をサポートする栄養素を摂ることが大切です。ここでは、疲労回復に役立つ栄養素と、食べ物をご紹介します。
2-1.ビタミンB1
エネルギー源といえば、パンやご飯などの炭水化物が挙げられます。ビタミンB1は、炭水化物からエネルギーを作りだすときにサポートをしてくれます。
ビタミンB1が不足すると、炭水化物が入った食品を食べてもエネルギーに変換することができません。ビタミンB1はエネルギー産生のサポートをすることで、疲れをやわらげてくれる栄養素です。
ビタミンB1は、豚肉やカツオ、うなぎなどに多く含まれています。夏バテ予防にも、ぜひ積極的に摂りたい栄養素です。
2-2.α-リポ酸
じゃがいもやトマト、ほうれん草やブロッコリーなどの野菜に含まれているα-リポ酸はビタミン様物質の一つです。ビタミンB1と一緒に働いて、炭水化物からエネルギーを作りだすのを手伝います。
α-リポ酸が不足すると、炭水化物がうまくエネルギーに変えられず、肥満につながるおそれもあります。α-リポ酸が持つ抗酸化力はビタミンEやビタミンCの数100倍ともいわれています。
2-3.パントテン酸
脂質の分解とエネルギー産生をサポートするコエンザイムAのおもな材料となるのがパントテン酸です。パントテン酸は桜えびやほうれん草などに多く含まれており、ビタミンB5とも呼ばれます。
パントテン酸が不足すると、疲労のほか頭痛や手足のしびれ感があらわれることもあります。疲労対策はもちろん、健やかな毎日を過ごすためにも、パントテン酸をしっかり摂取しましょう。
2-4.L-カルニチン
L-カルニチンはカロリー消費に深く関わっているアミノ酸の一種です。体のなかのエネルギー産生システムをサポートすることで、アクティブな毎日に導いてくれます。
しかし、体のなかのL-カルニチンは、年を経るごとに少なくなります。L-カルニチンはラム肉や牛肉などの赤身肉のほか、カツオや赤貝などに多く含まれています。
毎日の食事で十分な量を摂取できない場合は、サプリメントを利用するのもよいでしょう。
2-5.クエン酸
体のなかにはエネルギーを作りだすシステムがありますが、このシステムのスムーズな働きを手助けするのがクエン酸です。
クエン酸のサポートによって、効率よくエネルギーを作りだすことが可能になります。クエン酸はレモンやグレープフルーツなどの柑橘類やお酢などに含まれている成分です。
2-6.コエンザイムQ10
ほとんどの細胞に含まれており、エネルギー産生に重要な成分がコエンザイムQ10です。
元気な生活に欠かせない栄養素ですが、年齢とともに減ってしまいます。コエンザイムQ10が不足するとエネルギーを作りだすシステムがスムーズに働かなくなってしまいます。
また、コエンザイムQ10は、抗酸化力も高く、エネルギッシュな毎日を作るために役立ちます。牛乳やイワシなどに多く含まれています。
2-7.イミダゾールジペプチド
イミダゾールジペプチドは2つのアミノ酸がくっついたもので、骨格筋に含まれている成分です。渡り鳥が休まずに飛び続けるパワーの源として注目されています。
抗酸化力があり、アクティブな毎日を過ごすのに役立ちます。ふだんの食事で取り入れるなら、鶏のむね肉やカツオ、マグロなどがおすすめです。
疲労回復に良い食べ物をバランス良く摂ってリフレッシュ
疲労の原因には、活性酸素や栄養不足によるエネルギー産生の低下があります。
元気な毎日を送るには、エネルギーを作りだすサポートをしてくれる栄養素を摂ることが大切です。
エネルギー代謝を助ける栄養素には、ビタミンB1やパントテン酸、α-リポ酸というビタミンの仲間や、L-カルニチンなどあります。
また、クエン酸やコエンザイムQ10は効率の良いエネルギー産生をサポートします。
栄養素は1つだけ摂っても、うまく働くことはできません。いろいろな栄養素をバランスよく摂取して、元気でリフレッシュできる生活を目指しましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。