肥満細胞(マスト細胞)とは?
働きやアレルギー反応との関係性について解説

みなさんは「肥満細胞」という言葉をご存じでしょうか?

肥満細胞はマスト細胞とも呼ばれているものですが、そもそも、私たちの体の中でどのような働きをしているのでしょうか。

そこで今回は、肥満細胞(マスト細胞)の働き、肥満との関係性の有無などを解説します。

1.肥満細胞(マスト細胞)とは?

肥満細胞とは、アレルギー反応に関与している組織です。別名マスト細胞とも呼ばれます。

肥満細胞は体中の血管周囲、特に皮膚や皮下組織、肺、消化管、肝臓などに広く存在しています。

肥満細胞の表面には、IgE(免疫グロブリン)と呼ばれる免疫に関与するタンパク質が付着します。そこで、アレルゲン(抗原)と反応するとヒスタミンなどの化学伝達物質を放出し、アレルギー反応を引き起こすのです。

例えば、ぜん息、アレルギー性鼻炎、じんましん、アナフィラキシーショックなどの病気と関連しています。

2.肥満細胞とアレルギー反応の関係

近年、先進国ではアレルギー疾患で悩む方が急増しています。日本では、人口の半数近くが、ぜん息、花粉症、アトピー性皮膚炎、食物アレルギーなどのアレルギー疾患を持っています。

アレルギー疾患はまだ完治が難しい慢性疾患であり、対症療法が中心で根治的治療法や予防法は確立されていません。

アレルギー疾患の発症には遺伝的素因、環境要因、食生活、運動などさまざまな要因が絡み、メカニズムは複雑です。

アレルギー反応は、肥満細胞が中心となってIgEとアレルゲンによって活性化することが知られています。

以下では、アレルギー反応として発症するアナフィラキシー、ぜん息、アレルギー性鼻炎を解説します。

2-1.アナフィラキシー

アナフィラキシーとは、全身のアレルギー反応のことです。

アレルギー反応でも特に重篤な状態を指し、血圧低下や意識障害をともなう場合をアナフィラキシーショックといいます。一刻も早く治療をしないと死に至るケースもあるため、注意が必要です。

2-2.ぜん息

ぜん息とは、気道にアレルギー性の炎症が起こることで狭くなり、呼吸が苦しくなる症状です。

気道に炎症があると、ダニや煙、ペットの毛などのわずかな刺激でも、アレルギー反応を起こしやすくなります。

ぜん息の大きな発作が起こると、気道がふさがって呼吸ができなくなり、死に至ることもあるため、注意が必要です。

2-3.アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎とは、連続したくしゃみやサラサラの鼻水、鼻の粘膜が腫れることで鼻詰まりが起こりやすくなる症状です。

ダニやホコリなどが原因で1年中鼻炎症状が出るタイプを通年性アレルギー性鼻炎、スギやヒノキなどの花粉が原因で飛散時期のみ鼻炎症状が出るタイプを季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)といいます。

くしゃみや鼻水の症状により勉強や仕事、家事に集中できなかったり、眠れなかったり、イライラしたりするなど生活にも支障が出ることもあるため注意が必要です。

3.肥満細胞は肥満と関係があるのか

肥満細胞の名称に「肥満」とあるため、肥満と関係があるかもしれないと思う方もいるかもしれません。
肥満細胞の由来は、ヒスタミンやプロスタグランジンなどの生理活性物質を細胞内に貯蔵するため、細胞自体が大きくなることからつけられた名称です。
そのため、肥満とは無関係といわれています。

肥満細胞はアレルギーと切っても切り離せない関係性がある

肥満細胞とはアレルギー反応に関与している組織のことをいい、マスト細胞とも呼ばれています。

アレルギー疾患は、まだ完治が困難な慢性疾患です。現在は対症療法が中心で根治的治療法や予防法は確立されていません。

しかし、さまざまな治療の研究が行なわれており、今後もアレルギー症状の根治に有効的な治療薬の開発が期待されています。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。