1.WHO憲章における「健康」の定義とは?
WHO(世界保健機関)のWHO憲章では、「健康とは肉体的、精神的および社会的に完全に良好な状態であり、単に疾病又は病弱の存在しないことではない。」と定義されています。
つまり、「ただ表面的に病気がなければ健康」という訳ではありません。こころも体も健やかであり、社会的にも好ましい状態でなければ真に健康とはいえないのです。
また、健康な人生を送るには、健康寿命を伸ばすための働きかけが大切です。
健康寿命とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことであり、健康寿命を延ばせば不健康な期間の短縮につながります。
日本は今後、世界でも前例のない超高齢社会を迎えると言われています。そのため、経済や社会保障制度を維持するためにも、一人ひとりが健康を維持して健やかに生きることの重要性が注目されているのです。
2.健康になるためのポイント
健康な状態を維持するには、食事や運動などさまざまな面で生活習慣が大切となります。具体的なポイントを解説します。
2-1.栄養と食生活について
栄養と食生活は生活習慣病に強く関連しており、QOL(生活の質)に影響する要素です。
栄養状態を良好に保つには、やせすぎや肥満を避けて適正体重を維持し、BMI(Body Mass Index:体格指数)を18.5以上25未満に維持しましょう。BMIは、「体重(kg)」÷「身長(m)の2乗」で算出することができます。
また、成人は脂肪エネルギー比率を1歳以上の男性および女性で20~29%とするのが目標値です。そのため、脂質の摂りすぎに注意し、動物、植物、魚由来の脂質をバランス良く摂りましょう。なお、脂肪エネルギー比率とは、「総摂取エネルギーに占める脂質から摂るエネルギーの割合」のことです。脂質の摂りすぎに注意し、動物、植物、魚由来の脂質をバランス良く摂りましょう。
骨や歯などの形成に不可欠なカルシウムも大切です。欠乏を防ぐためにもカルシウムを豊富に含む食品を摂取しましょう。具体的には、一日あたり牛乳・乳製品は130g、豆類100gが目標です。
野菜は一日あたりの平均摂取量を350g以上にして、緑黄色野菜は120g以上を目安にしましょう。なお、食塩は一日あたり平均10g未満が目標です。
2-2.身体活動と運動について
普段の生活で意識的に体を動かすことが、健康の維持・増進につながります。日常生活で身体活動量を増やすには、歩数を増やすのがおすすめです。
一日の平均歩数は男性が8,200歩、女性7,300歩となっていますが、まずは平均歩数より男女とも1,000歩増やし、男性9,200歩、女性8,300歩を目標としましょう。
また、高齢者の場合は、一日の平均歩数が男性5,400歩、女性4,600歩程度になるのですが、男女とも1,300歩増加を目指し男性6,700歩、女性5,900歩が目標です。
(参照:厚生労働省ホームページ「身体活動・運動」)
日常生活においては、歩くなどの身体活動を毎日60分、さらに少し汗ばむ程度の運動が一週間に60分ほどあると理想です。高齢者の方は、ラジオ体操や散歩なども含めて毎日40分くらい行なうことを目標にしましょう。
運動習慣は身体活動量を増やすために必要であるとともに、爽快感や楽しさを感じ、メンタル面でも健康に貢献します。
2-3.休養とこころの健康づくりについて
休養は疲労回復やストレス対処に欠かせない要素であり、こころの健康を保つためにも大切です。質の良い睡眠をしっかり取ると疲れた心身を回復させることができ、情緒を安定させたり適切な判断力を維持できたりとQOL(生活の質)の向上へとつながります。
ただ体を休めるだけではなく、自分を見つめる時間を作ったり、スポーツなどの趣味に打ち込んだりするなど、心身のケアが本当の意味での休養となります。
ストレスをためないようにして、うつ病などこころの病気への正しい知識を持つこともこころの健康に欠かせません。メンタル面での不調が長引く場合は、一人で苦しまずに医師へ相談しましょう。
2-4.その他の方法
長く健康でいるためには、タバコも控えたほうがよいでしょう。配慮をしないと周囲への受動喫煙にもつながります。
また、口腔内の健康は咀嚼機能の維持に関わり、健やかな食生活や全身の健康にとって重要です。定期的に歯科健診を受け、虫歯や歯周病を予防しましょう。
さらに、糖尿病などの生活習慣病の予防のためにも、定期的な健康診断や検診を受けることが大切です。
生活習慣を改善して健康な毎日を送ろう
心身ともに健康な状態でいるためには、日々の生活習慣を整える意識が欠かせません。
バランスの良い食事で栄養状態を保つ、運動習慣や睡眠の確保、禁煙などできることから一つずつ見直すことが将来の健康にもつながります。
無理なく楽しく続けて健康な毎日を築き上げていきましょう。
監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。