1.筋力低下の改善には筋力トレーニングがおすすめ
筋力を増強することは、転倒予防、姿勢を保つための能力や移動のための能力の向上につながるとされています。筋力トレーニングは、その筋力増強に一役買うものです。
また、筋力トレーニングは糖代謝異常の予防や脂質代謝の改善が見込まれることから、生活習慣病などを予防する効果があります。
加齢はあらゆる衰えをもたらすものです。例えば、加齢がもたらす虚弱から介護を必要とするフレイル、加齢によって起こる筋肉の衰えであるサルコペニアのほか、運動器の病気から日常生活に支障をおよぼすロコモティブシンドロームなどがあります。
しかしこれらは筋力トレーニングにより予防、改善が期待できるでしょう。
2.筋力低下を改善する筋トレ方法5選
それでは、筋力低下を改善するためにはどのようなトレーニングをすると良いのでしょうか。
筋力低下時に効果的なトレーニングを5つ紹介していきます。
2-1.スネの筋肉を鍛えるトレーニング
ちょっとした段差でつまずき、転倒しそうになることが多い人には、スネの筋肉を鍛えるトレーニングがおすすめです。つま先を持ち上げる前脛骨筋(ぜんけいこつきん)と、脚を持ち上げる股関節の腸腰筋の2つを鍛えましょう。
前脛骨筋を鍛える方法
腸腰筋を鍛える方法
-
1. 脚を腰幅に開いて立ってください。
-
2. 右膝をおなかの高さまで持ち上げ、両手で膝下を持つように軽く支えます。
-
3. 支えた両手で右膝を胸に近づけます。このとき、軸脚を曲げたり背中を丸めたりせず、体がまっすぐの状態を保つのがポイントです。
-
4. この動きを両脚10回ずつ、2セット行なってください。
2-2.太ももを鍛えるトレーニング
階段や坂道を上るのがつらいと感じる方は、太ももを鍛えるエクササイズを行なうと、体力の低下を感じにくくなるでしょう。
-
1. 座面に背を向けるように椅子の前に立ち、脚を肩幅に開いてください。両手を前方に伸ばして重ね、肩の高さに上げます。
-
2. 息を吸いながら、椅子の座面にお尻が少し触れるところまで、股関節と膝を曲げて腰を落とします。このとき、膝がつま先より前に出すぎないよう注意しましょう。
-
3. 息を吐きながら、ゆっくり膝を伸ばして立ち上がります。
-
4. 5~10回を1セットとして、2~3セット行ないます。きつい場合は膝の角度を浅くし、慣れたら深くしてみましょう。
2-3.膝への負担を抑えるトレーニング
生活の質を維持するためには、膝の痛みの予防が重要だといわれています。膝が痛むことによって、活発な活動が億劫になり、筋力低下につながる可能性があるでしょう。
-
1. 仰向けに横たわり、脚を腰幅に開いて両膝を立てます。腕は伸ばし、手のひらを床に向けて体の両脇に置きましょう。
-
2. 息を吐きながら、胸から膝までが一直線になるようゆっくりお尻を持ち上げます。このとき、背中が反らないよう注意してください。
-
3. ひと呼吸おき、息を吸いながら床につかない位置までゆっくりお尻を下ろして止め、「2」を繰り返します。
-
4. 5~10回を1セットとして、2~3セット行なってください。
2-4.腹筋を鍛えるトレーニング
腹筋を中心に、体の前面を鍛える上体起こし運動です。
2-5.スロートレーニング
ゆっくりした速度で行なう筋トレをスロートレーニングと総称します。体にとって軽めの負荷ではあるものの、ゆっくりとした動きをすることで筋肥大・筋力増強効果が期待できるでしょう。
スロートレーニングは「5秒程度のスパンで上げて、5秒程度のスパンで下げる」という動作がポイントです。
例えば、スクワットでは完全に立ち上がらずにもとの姿勢に戻る、腕立て伏せでも完全に腕を伸ばす前にもとに戻すというのがスロートレーニングにあたります。
筋力トレーニングで筋力低下を予防しよう
今回は、筋力低下を改善する筋力トレーニングを5つ紹介しました。
体に大きな負担をかけなくても、正しいトレーニングを心がけることが筋力を向上させることにつながります。
中高年になってからだと、「今から鍛えたところで無駄ではないか」と思われる方もいるかもしれませんが、筋肉を構成する筋繊維は年齢を重ねたとしても影響を受けにくい組織です。いくつになっても筋力アップは期待できるので、ご自身に合ったトレーニング法を取り入れてみてください。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医