「喘息(ぜんそく)」の原因や症状、予防法・対処法について解説

喘息(ぜんそく)は気管支喘息とも呼ばれ、空気の通り道である気管支が慢性的に炎症を起こすことで気道が過敏な状態になり、咳、喘鳴(ぜんめい/ヒューヒュー、ゼーゼーという音)、呼吸困難などの症状を特徴とします。

喘息の症状は大変苦しく生活の質が著しく悪化するだけではなく、最悪のケースでは死に至ることもあるため、適切な治療や対策が不可欠となります。

今回は、喘息の原因、症状、予防法や対処法について詳しく解説していきますので、喘息に悩まれている方はぜひ参考にしていただければと思います。

1. 喘息(ぜんそく)とは

喘息とは、アレルギー反応などが原因となって気管支に慢性的な炎症が生じることで気道が過敏になり、狭くなることで、咳、たん、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーという音)、呼吸困難をともなう発作を特徴とする疾患です。

喘息の程度はさまざまで、年に数回程度の咳や喘鳴が見られる軽度なケースもありますが、重症例では週1~2回、苦しさのあまり動けなくなるほどの発作が起こり、最悪の場合、死に至るケースもあります。

喘息というと子どもの病気というイメージがあるかもしれませんが、2006年に行なった成人20~45歳を対象とした全国調査では、以下のような結果が出ています。

・有症率(喘鳴を有する頻度):9.3%

・有病率(医師により診断され、治療中もしくは症状のある喘息):5.3%

このように、喘息は子どもだけでなく、大人にまで症状が見られる疾患なのです。

2. 喘息(ぜんそく)のおもな症状

喘息のおもな症状は以下のようなものになります。

2-1. 発作性の喘鳴(ぜんめい)

喘鳴とは呼吸するときに出る、ゼーゼーヒューヒューといった音を指します。気道が炎症を起こすことで狭くなり、この狭くなった気道を空気が通る際に気道壁を振動させることで独特の音を生じさせるものです。

2-2. 呼吸困難

喘鳴と同様に炎症によって気道が狭くなることで、空気の流れ(気流)が制限され、呼吸がしづらい、息が詰まるといった呼吸困難の症状が現れます。

2-3. 夜間・早朝の息苦しさ、咳

夜間から早朝にかけての息苦しさや咳が見られるのも、喘息の代表的な症状です。夜間や早朝は日中と異なり副交感神経の働きが活発になることで気道が狭くなり、息苦しさなどの症状が出やすくなります。

2-4. 運動時、冷気や煙にさらされたときの息苦しさ、咳

喘息の患者さんでは激しい運動や長時間にわたる運動をしたときに息苦しさや咳が生じることがあり、運動誘発喘息とも呼ばれます。また、冷気、タバコ、煙なども喘息の患者にとっては刺激です。それらにもよって息苦しさや咳などの症状が現れる場合もあります。

3.喘息(ぜんそく)が起きるおもな要因

喘息の要因は個体因子と環境因子とに大きく分けられ、これらが複雑に絡み合うことで発症するとされています。

3-1. 喘息の要因となる個体因子

個体因子は、遺伝子素因、アトピー素因、気道過敏性、性差、肥満度などがあげられます。

例えば、喘息には遺伝の要素が大きいとされており、喘息持ちの両親から生まれた子どもはそうでない子どもと比較して喘息発症リスクが3~5倍高くなるとされています。

そのほか、男児は女児に比べて喘息患者数が1.5倍多く、肥満傾向の人はそうでない人よりも喘息になりやすいなど、喘息の発症には個体因子が大きく関わっているのです。

3-2. 喘息の要因となる環境因子

喘息を引き起こす環境因子には喫煙、アレルゲン、大気汚染、食品・食品添加物、呼吸器感染症などさまざまなものがあげられます。

環境因子は個体因子と違ってご自身の努力や工夫によって除去したり改善したりすることが可能なため、喘息の予防や治療には重要な役割を果たします。

4.喘息(ぜんそく)を悪化させてしまう疾患

以下のような疾患は喘息を悪化させる可能性があるため、併発している方は特に注意する必要があります。

4-1. COPD(慢性閉塞性肺疾患)

COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、長期にわたる喫煙によって肺に炎症が起こり、息切れ、息苦しさ、咳、たんなどが生じる病気です。

特に高齢の方ではCOPDと喘息を合併することが多く、合併すると喘息の症状が悪化することが知られています。COPDの治療は薬物療法が基本です。

4-2. アレルギー性鼻炎

アレルギー性鼻炎は喘息と同様に気道に炎症が生じる疾患であるため、合併すると喘息の症状が悪化しやすくなるといわれています。

アレルギー性鼻炎を適切に治療することで喘息の症状の改善が見込めることもあるため、鼻に症状を覚えたら、早期に治療することがおすすめです。

4-3. 副鼻腔炎

副鼻腔炎は、副鼻腔という空洞部分に炎症が生じる病気です。急性副鼻腔炎と慢性副鼻腔炎とに分けられます。

慢性副鼻腔炎では、鼻汁がのどにまわる後鼻漏が起こりそれによって咳が出るため、喘息の悪化につながりやすくなるとされています。

また、好酸球性副鼻腔炎と呼ばれる副鼻腔に好酸球が増えるタイプも、喘息を合併しやすいといわれているため注意が必要です。

4-4. 好酸球性中耳炎

耳の一部である中耳と呼ばれる部分に白血球の一種である好酸球が増加することで炎症を起こす疾患です。好酸球性副鼻腔炎に合併して起こることが多く、喘息を悪化させる要因として考えられています。

4-5. 胃食道逆流症

胃食道逆流症は胃の内容物が逆流を起こす病気です。胃食道逆流症になると胸やけなどの症状に加えて慢性の咳が生じることもあり、喘息を悪化させる原因となります。

喘息患者さんの45~71%が胃食道逆流症を有していることから、胸やけ、咳が長引くなどといった症状がある場合は、医師と相談し、胃酸の分泌を抑える薬を服用するなどの対処を行ないましょう。

5.喘息(ぜんそく)の予防法・対処法

喘息を完治させることは難しいかもしれませんが、適切な予防法や対処法を実践することで発作の起こる頻度を減らしたり、健康な人と同等の生活をしたりすることが可能です。以下に喘息の基本的な予防法・対処法をご説明します。

5-1.禁煙する

喫煙は喘息の大敵であり、呼吸機能を低下させるだけでなく喘息治療薬の効き目を下げるともいわれています。

また、ご自身はタバコを吸われなくても周りの人が吸ったタバコの煙を吸い込むことによる受動喫煙でも喘息は悪化します。最近は分煙が進んでいますが、普段からタバコの煙のある場所は意識的に避けるようにすることが大切です。

5-2. 感染症対策を行なう(手洗い、うがい、マスク着用の励行)

感染症のなかでも特に風邪やインフルエンザなどの呼吸器に関わる感染症は喘息の症状を悪化させてしまいます。手洗い、うがい、マスク着用など基本的な感染症対策を徹底し、感染症にかからないようにしましょう。

5-3.適度な運動やバランスの良い食生活を心がける(肥満やメタボリックシンドロームを避ける)

肥満やメタボリックシンドロームは喘息を発症・悪化させる要因であることが知られています。肥満体型では標準体型と比べて内臓脂肪が多く、内臓脂肪中の脂肪細胞から分泌される物質が喘息を起こしやすくするためです。

このため、適度な運動やバランスの良い食生活を心がけることで肥満を解消して健康的な体に戻すようにしましょう。

しかし、喘息が酷くなると運動自体がリスクとなる危険性もあるため、まずはかかりつけの医師に相談することをおすすめします。

5-4. 医師に相談して喘息の症状に適した薬を処方してもらう(長期管理薬、発作治療薬の服用)

喘息の薬は大きく長期管理薬(コントローラー)と発作治療薬(リリーバー)の2種類に分けられます。

長期管理薬とは発作の有無に関わらず毎日使用することで、気道の炎症を抑えて発作を起こしにくくする効果があります。

一方の発作治療薬には即効性があり、発作時に使用することで発作を素早く鎮めることが可能です。

喘息で使用する薬は、一人ひとりの重症度に応じた処方が行なわれます。治療のステップによって増減するため、自己判断で中止せず医師の指示に従って飲み続けることが大切です。

喘息は完治が難しい!予防法や対処法で発作を抑えよう

今回の記事では喘息の原因、症状、予防法・対処法などについて基本的な事項を解説しました。

喘息は完治させることは難しいかもしれませんが、きちんとした予防法や対処法を実践することによって発作を抑え、安定した日常生活を送ることが可能な疾患です。

今回の記事を参考にし、医師や薬剤師などの専門家の指導も受けたうえで適切に喘息をコントロールして、快適な日常生活を送られるようにしてください。

監修者情報

氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。