1.カルシウムが不足するとどうなる?
カルシウムの摂取量が一時的に足りなくなっても、短期的には健康上の問題はほとんど起こりません。それは、不足したとしても骨のカルシウムが血中に溶け出し、カルシウム濃度が一定に保たれるためです。
とはいえ、長期間カルシウム不足が続くと歯や骨が弱くなってしまい、骨折のリスクが高まります。
さらに、深刻なカルシウム不足が続くと、少しの刺激で筋肉や神経が過剰に興奮し、手指のうずきやしびれ、けいれんを引き起こします。加えて、脈拍に異常をきたす可能性もあり、これをしっかり処置しないと生命予後を左右することにもなりかねません。
なお、これらの症状のほとんどは重大な持病などを抱えている方や治療中の方に現れやすいのが特徴です。
2.カルシウムの一日あたりの摂取推奨量
ここまで、カルシウム不足がどのような影響をおよぼすのかを説明してきました。ここからは、一日あたりに必要なカルシウムの摂取量について説明していきます。
2-1.男性の場合
男性の一日あたりのカルシウム推奨量は以下のとおりです。
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・18~29歳:789mg
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・30~49歳:738mg
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・50~64歳:737mg
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・65~74歳:769mg
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・75歳以上:720mg
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-2.女性の場合
女性の一日あたりのカルシウム推奨量は以下のとおりです。
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・18~29歳:661mg
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・30~49歳:660mg
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・50~64歳:667mg
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・65~74歳:652mg
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・75歳以上:620mg
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が一日の必要量を満たすと推定される一日の摂取量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2-3.【世代別】カルシウム平均摂取量
これらの推奨量に対して、令和元年の国民健康・栄養調査におけるカルシウムの平均摂取量は、世代別にみた場合、以下のように各年代、男女ともに不足傾向にあることがわかります。
男性
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20歳以上:503㎎
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65~74歳:558㎎
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75歳以上:561㎎
女性
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20歳以上:494㎎
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65~74歳:567㎎
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75歳以上:525㎎
引用:令和元年「国民健康・栄養調査の概要」
ただし、カルシウムの摂りすぎにも注意が必要です。カルシウムの過剰摂取は、ときに健康への悪影響を招くことから、性別問わず18歳以上で一日2,500mgの耐容上限量が設けられています。
3.カルシウムを摂取する方法
これまで説明したとおり、男女ともに全世代を含めカルシウムの摂取量が、推奨量に達していないのが現状です。そこで、カルシウムを効率的に摂取することが求められるため、豊富なカルシウムを摂取できる食べ物について解説していきましょう。
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大豆製品
豆腐や大豆などは、多くのカルシウムを含むものです。特に、カルシウム塩で作られる豆腐は、優れたカルシウム源になります。
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野菜
小松菜・ケール・ブロッコリー・白菜などがカルシウムの摂取に適しているでしょう。
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海産物
骨まで食べられる小魚やイワシ、サーモンの缶詰は、非常に良いカルシウム源です。その他、ひじきや昆布、わかめなどの海藻類にも豊富に含まれています。
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乳製品
牛乳やチーズ、ヨーグルトなどにも、カルシウムは多く含まれています。吸収率も高く、一回の摂取量も多いため効率良くカルシウムを摂りたい方におすすめです。
さらに、より効率良くカルシウムを吸収するためには、ビタミンDの存在が重要です。ビタミンDには、腸内でカルシウムの吸収を促す作用があります。
ビタミンDを多く含む食品(イワシ、サケ、しいたけなど)を摂取したり、日光を浴びたりすることで体内で生成されるため、カルシウムの吸収や利用効率を高めるためにもビタミンDを積極的に取り入れたり、外で運動したりするようにしましょう。
カルシウム不足を解消して健康的な毎日を過ごそう
カルシウムが不足すると歯や骨がもろくなったり、筋肉や神経にも影響が出たりする可能性があります。特に骨がもろくなると、やがては骨折のリスクを高め、生活の質をも落としかねません。
しかし、カルシウムの摂取量は、男女ともにすべての年代で推奨量に達していないのが実情です。また、カルシウムは単独では吸収されにくいため、カルシウムの吸収を促すビタミンDの摂取も重要になります。
カルシウムは乳製品、大豆、野菜に、ビタミンDは魚類やきのこ類に多く含まれており、これらの食品を積極的に摂取してカルシウム不足を解消し、健やかな毎日を過ごしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。