1.食物繊維について
まずは食物繊維の概要と種類を説明します。
1-1.食物繊維とは?
食物繊維は脂質、タンパク質と並んで3大栄養素の一つである炭水化物の一種です。
糖質が体内の消化酵素で消化されエネルギー源となる「消化できる炭水化物」であるのに対し、食物繊維は消化酵素で「消化されない炭水化物」で、カロリーはほとんどありません。しかし、整腸作用など体の中で有用な働きをすることが注目されており、脂質、タンパク質、炭水化物、ビタミン、ミネラルと並んで「第6の栄養素」とも呼ばれる栄養素です。
おもな働きは便通を整えるほか、食物繊維の一種であるオリゴ糖は腸内の善玉菌であるビフィズス菌を増やす効果があります。
また、脂質・糖類・ナトリウムを体外へ排出する役割があるため、肥満や脂質異常症、糖尿病といった生活習慣病の予防にも役立ちます。
食物繊維が多く含まれているおもな食品は、乾燥きくらげやしいたけなどのきのこ類、切り干し大根やごぼうなどの野菜、いんげん豆や大豆などの豆類です。その他、穀物類、いも類、でん粉類にも多く含まれています。
1-2.食物繊維の種類
食物繊維は、水に溶けない不溶性食物繊維と水に溶ける水溶性食物繊維の2種類に分けられます。
不溶性食物繊維には、植物の細胞壁にあるセルロースやヘミセルロース、 ごぼうに含まれるイヌリン、 えびやかにの殻にあるキチンなどがあります。 胃や腸で水分を吸収して大きく膨らみ、腸を刺激して便通を促進します。また、しっかりと噛んで食べる必要があるものが多いため、満腹感を感じやすく、早食いや食べ過ぎを予防する効果もあります。
一方、水溶性食物繊維には、果物や野菜などに含まれるペクチン、昆布やわかめなどのぬめり成分であるアルギン酸、こんにゃくや山芋などに含まれるマンナン、アガロースやポリデキストロースなども挙げられます。糖質の吸収を緩やかにして、血糖値の急激な上昇を抑えたり、コレステロールの排泄を促したりする効果があります。
なかには、納豆のように水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方をバランス良く含む食品も存在します。
このように、食物繊維の種類によって期待できる効果が違うため、一定の食品から摂取するのではなく、できるだけ多くの食品を摂取するとよいでしょう。
2.食物繊維の一日の摂取目安量
次に、食物繊維の一日あたりの摂取目安量を紹介します。
日本人の食事摂取基準(2020年版)によると、18歳以上の目標量は、一日あたり男性が21g以上、女性が18g以上です。65歳以上では男性が20g以上、女性が17g以上になります。(目標量とは、生活習慣病を予防する観点から設定された摂取量のことです。)
しかし、生活習慣病の予防を意識する場合は、成人の方で一日24g以上、1000kcalにつき14g以上摂取するとよいでしょう。
欧米の研究によると、食物繊維を一日24g以上摂取したところ、2型糖尿病などの発症リスクが低下したことがわかっています。
日本人の食物繊維の摂取量は減少傾向にあり、1950年頃には一人あたり一日20g以上摂取していたのに対し、現在は穀類や芋類、豆類を食べなくなったことから約14gに下がっています。
一方、過剰摂取の心配は基本的にないと考えられていますが、サプリメントなどで摂取する場合は用量を守って使用しましょう。
3.食物繊維が不足するとどうなる?
ここからは、食物繊維が不足した場合のおもな症状を紹介します。
3-1.便秘になりやすくなる
食物繊維が不足すると、腸内環境が悪化しやすくなるため、便秘や痔などのリスクも高くなります。
3-2.肥満になりやすくなる
食物繊維は脂質や糖を吸収して体外に排出する効果があるため、不足すると肥満になるおそれがあります。
また、食物繊維の豊富な食品は低カロリーなのに食べ応えのあるものが多く満足感も高いため肥満を防ぐことができますが、これらを食べない場合は食事で満腹感を得にくく、食事量が増え肥満になりやすいといったことも理由の一つです。
意識的に摂取してお腹周りの健康を維持しよう
食物繊維には、おもに便通を整える効果や生活習慣病の予防・改善など、さまざまな効果が期待できます。
食物繊維の一日あたりの摂取目標量は、18歳以上の男性で21g以上、女性で18g以上、65歳以上で男性20g以上、女性17g以上です。
生活習慣病の予防を意識する場合は、成人の方で一日24g以上、1000kcalにつき14g以上摂取するとよいでしょう。
しかし、不足すると便秘や痔、肥満などの生活習慣病になる可能性が高まります。そのため、意識的に摂取して健康状態を維持しましょう。
また、食物繊維の種類によって得られる効果は異なるため、複数の食品から摂取することが大切です。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。