1.下痢とは?
下痢(げり)とは、通常よりも水分が多い便や形のない便が、一日に繰り返し出る状態を指します。元気なときの便(普通便)に含まれる水分量は60~70%です。
便の水分量が80~90%になるとやわらかい便や泥状便に、90%を超えると水様便になります。下痢は珍しい症状ではなく、人によっては日によって便がやわらかくなることも少なくありません。
下痢には、便の色や臭いなどが通常と異なる場合もあります。例えば、黒っぽい便、白っぽい便、赤っぽい便など通常と違う色になっていたり、血液や粘液が混じったりすることもあります。
便の色や形、臭いは下痢の原因を探る際に重要なヒントになるため、症状が現れたときは便の形状をチェックしておきましょう。腹痛や発熱、吐き気や発疹などの症状の有無も、診断の際の手がかりとして役立ちます。
2.下痢の原因
下痢は、症状がどれくらい続くかで「急性下痢」と「慢性下痢」の2つに大きく分けられます。症状が現れて1週間ほどで改善するものが急性下痢、1カ月以上治らないものが慢性下痢です。
ここでは、急性下痢と慢性下痢が起こる原因について解説します。
2-1.急性下痢を起こす原因
急性下痢の原因には、次のようなものが挙げられます。
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・暴飲暴食
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・嗜好品など刺激物の摂り過ぎ
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・感染症
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・食中毒
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・薬によるもの
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・病気の初期症状 など
急性下痢の理由の多くは、食べ過ぎや刺激物の摂り過ぎなどによるものです。その他、細菌・ウイルスなどの感染症や食中毒による下痢があります。また、病気の治療で服用している薬(抗菌薬など)や、精神的ストレスによって引き起こされるケースも考えられます。
急性下痢は、まれに命に関わる病気の初期症状である場合もあるため、注意が必要です。下痢が起きたと思っていたら、敗血症(細菌感染が重症化した場合)や消化管出血だったというケースも報告されています。下痢症状に加えて、おなかや胸の痛み・血圧低下などショック症状があるときは早めの対処をしましょう。
2-2.慢性下痢を起こす原因
慢性下痢を起こす原因には、以下のものがあります。
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・炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)
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・過敏性腸症候群
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・乳糖不耐症
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・薬の副作用
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・精神的ストレス など
潰瘍性大腸炎ではおもに腸に炎症が起こり、血液や膿が混じった下痢、発熱、体重の減少がみられます。これらの炎症性腸疾患に加えて、近年では過敏性腸症候群による下痢に悩まされる人も少なくありません。
過敏性腸症候群とは、腸自体には炎症や潰瘍などはみられないものの、腸の働きに異常が現れて下痢や便秘、腹痛などを引き起こす病気です。腸に関わる神経が過敏になっていることが原因とされ、精神的ストレスも発症の一因と考えられています。
乳糖不耐症とは、乳製品を食べたり飲んだりしたあとに、おなかの調子が悪くなることです。乳糖を分解する消化酵素の働き方には体質によって差があり、この酵素の働きが弱いと、腸における水分吸収が阻害されて下痢を引き起こします。
その他、病気の治療で使っている薬で下痢の副作用を起こす人もいます。一時的なもののこともありますが、放置すると重症化することもあるため注意が必要です。泥状や水のような便、激しい腹痛、頻回の下痢、便に粘液や血液が混じっているなどの場合は、すみやかに医師に相談してください。
3.下痢は予防できる?
下痢の原因が、食中毒や感染症、何らかの病気などではない場合は、生活習慣の見直しで改善が見込めることもあります。
食生活では、暴飲暴食を控えて、おなかを温めるように心がけましょう。脂質の多い食べ物やコーヒーなどの刺激物も下痢の原因になるため、適切な量にとどめることが大切です。おなかのためにも、栄養バランスの良い規則正しい食生活を基本にしましょう。
また、精神的ストレスで下痢を引き起こすタイプの人は、こまめなストレス解消も重要です。十分な睡眠や、適度なウォーキングなどの運動習慣はストレス発散や腸の働きを整えることをサポートしてくれます。
下痢の予防のためにも、食事・運動・睡眠に注意して規則正しい生活を送りましょう。
下痢の原因に対処しておなかリズムを整えよう
下痢は、通常よりも水分量が多い便が続く状態を指し、誰にでも起こりうる症状です。下痢の原因には生活習慣や食中毒、感染症、病気などが挙げられます。
最近では、精神的ストレスが原因とされている、過敏性腸症候群によるおなかの不調に悩む人も少なくありません。
生活習慣による下痢の場合は、食事・睡眠・運動習慣を整えることで改善につながります。暴飲暴食や過度な刺激物を避け、栄養バランスの整った規則的な食事を心がけましょう。
十分な睡眠と適度な運動習慣は腸の調子を整えてくれます。下痢の原因に合わせた対策を行なって、おなかの調子を正常に保ちましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。