1.基礎代謝量とは?
基礎代謝量(basal metabolism rate)とは、覚醒している状態で必要な最小源のエネルギーのことです。早朝のおなかが空いているときに、室温などが適切で過ごしやすい室内において安静仰臥位で測定します。
人間の24時間あたりの総エネルギー消費量は、基礎代謝量・身体活動量・食事誘発性熱産生の3つに大きく分けられます。基礎代謝量は全体のおよそ60%を占めていますが、これは3つのエネルギー消費量のうち最も大きな割合です。
また、安静時に必要なエネルギー量は臓器によっても異なります。安静時の代謝量が高い臓器は、骨格筋・肝臓・脳などです。一方で、脂肪組織の代謝量は低い値となっています。
基礎代謝量は、生命維持のために最低限必要なエネルギーです。そのため、極端なダイエットなどで体調を崩すのを防ぐためにも、自分の基礎代謝量を把握しておくことが大切です。
基礎代謝量は、体格、年齢、性別だけでなく運動習慣やホルモンなどさまざまな因子の影響を受けます。同じ人物であっても、筋肉トレーニングによる筋肉の増加や月経周期によって、基礎代謝量は変動することを知っておきましょう。
2.年齢ごとの基礎代謝量
基礎代謝量は人それぞれの体の大きさや年齢、性別などによって変わってきます。基礎代謝量の計算式は次のとおりです。
基礎代謝基準値(kcal/kg体重/日)×参照体重(kg)=基礎代謝量
基礎代謝基準値とは体重1kgあたりの基礎代謝量の代表値、参照体重とは該当する年齢における平均的な体重を指します。下表で、自分の性別・年齢における標準体重での基礎代謝量を確認してみましょう。
性別・年齢別の基礎代謝量
年齢(歳) |
男性 |
女性 |
参照体重(kg) |
基礎代謝量(kcal/日) |
参照体重(kg) |
基礎代謝量(kcal/日) |
1~2 |
11.5 |
700 |
11.0 |
660 |
3~5 |
16.5 |
900 |
16.1 |
840 |
6~7 |
22.2 |
980 |
21.9 |
920 |
8~9 |
28.0 |
1140 |
27.4 |
1050 |
10~11 |
35.6 |
1330 |
36.3 |
1260 |
12~14 |
49.0 |
1520 |
47.5 |
1410 |
15~17 |
59.7 |
1610 |
51.9 |
1310 |
18~29 |
64.5 |
1530 |
50.3 |
1110 |
30~49 |
68.1 |
1530 |
53.0 |
1160 |
50~64 |
68.0 |
1480 |
53.8 |
1110 |
65~74 |
65.0 |
1400 |
52.1 |
1080 |
75以上 |
59.6 |
1280 |
48.8 |
1010 |
この表から、基礎代謝量のピークは男性では15~17歳、女性では12~14歳であることがわかります。一般的に、年を重ねるにつれて基礎代謝量は低くなる傾向にあります。
3.基礎代謝量に関係する要素
基礎代謝量はさまざまな影響で変動しますが、一般的には次の8つの要因に左右されます。
-
1.体表面積
体表面積が広いほうが基礎代謝量は高くなります。体表面積が広いと、放熱量が比例して多くなるためです。
-
2.年齢
年齢が若いほうが基礎代謝量は大きくなります。若者では、成長などによって体内の代謝が高まっているためです。
-
3.性別
女性よりも男性のほうが基礎代謝量は高くなります。女性に比べて男性のほうが、筋肉量などが多く代謝が活発なためです。
-
4.体格
筋肉質の人のほうが基礎代謝量は高くなります。そのため、筋肉質で運動習慣がある人の基礎代謝量は補正が必要です。
-
5.体温
体温が高い人のほうが皮膚からの放熱量が大きいため、基礎代謝量が高くなります。体温が1度上がると代謝量は13%増加します。
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6.ホルモン
甲状腺ホルモン・副腎髄質ホルモンの分泌量が多いと代謝が活発になるため、基礎代謝量も上がります。
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7.季節
一般的に基礎代謝量は夏場に低くなり、冬場に高くなります(体温を上げようとするため代謝量が冬場は上がります)。
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8.月経周期
月経が始まる2~3日前に基礎代謝量は最高に達し、月経中に最も低くなります。エストロゲンなどの女性ホルモンの分泌量変化が原因です。
基本的に、基礎代謝量は年齢を重ねるにつれて低下していきますが、これらの要因によって個人差が現れます。
自分の基礎代謝に適切な生活習慣を心がけよう
基礎代謝量は、生命を維持するために必要な最低限のエネルギーであり、性別や年齢、体格などに左右されます。一般的には、女性よりも男性のほうが基礎代謝量は大きくなり、若くて筋肉質なほど代謝が良いとされています。
その他、季節や月経周期も基礎代謝量の変動に関わる因子です。過度のダイエットなどで、摂取エネルギーが基礎代謝量を下回ると、体調に影響をおよぼすことがあります。
健康な生活のためにも、自分の基礎代謝量を把握して、食事や運動など適切な生活習慣を心がけましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。