1.ミネラルについて
ミネラルとは、ヒトの体をおもに構成する炭素・酸素・窒素・水素以外を総称したものです。「無機質」と呼ばれることもあります。
歯や骨などの構成に大きく関わり、体内のさまざまな働きに必要な栄養素ですが、体内では生成されないため、食事から摂取しなければなりません。
不足した場合にはさまざまな不調の要因となり、過剰になった場合には過剰症を起こすことがあります。
ミネラルは相互作用する場合があるため、バランスの良い摂取を心がけましょう。
2.ミネラルの種類とそれぞれの働き
冒頭で触れたとおり、ミネラルは、多量ミネラルと微量ミネラルの2つに大きく分かれます。それぞれの種類と働きについて見てみましょう。
2-1.多量ミネラル
多量ミネラルに分類されるのは、以下の5つです。
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ナトリウム
体内では細胞外液におもに存在し、浸透圧の調整をする役割があります。
ナトリウムは食事からだと、食塩として摂取されることがほとんどです。通常の食事をとっている場合には、欠乏することはないとされています。
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カリウム
細胞内液の浸透圧のバランスを保つ働きがあるミネラルです。ナトリウムを体外に排出す働きがあるため、塩分を多く摂った際の調整に有効でしょう。
カリウムは幅広い食品に含まれています。一般的な食事をしていれば、不足することはほぼありません。
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カルシウム
ヒトの体に含まれる量は、ミネラルのなかでも最も多く、おもに歯や骨の形成に関わっている栄養素です。
カルシウムの一部は、血液や神経、筋肉内で「カルシウムイオン」として存在します。心筋の収縮作用を増やして筋肉の興奮を抑制したり、血液を凝固させたりする働きなどを持ちます。
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マグネシウム
骨の形成に関わり、体内のさまざまな代謝をサポートするミネラルです。体温・血圧を調節するほか、神経情報の伝達や筋肉の収縮などにも関わっています。
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リン
体内に含まれるミネラルのなかではカルシウムの次に多く存在し、歯や骨の形成に関わっています。細胞の浸透圧やpHバランスを保つ作用などもあります。
2-2.微量ミネラル
微量ミネラルに分類されるのは、以下の8つです。
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鉄
血中のヘモグロビンに多く含まれ、酸素の供給に関わるミネラルです。不足すると酸素の供給が十分に行なわれず、貧血を招くことがあります。
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亜鉛
体内でタンパク質などと結合し、体内のバランス形成に関わる栄養素です。欠乏すると成長障害や味覚障害、食欲不振などの要因となります。
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銅
エネルギー産出に関与したり、特定のタンパク質と結合して鉄分の働きをサポートしたりするなどの作用があります。
特に貧血ぎみの人は、鉄分と併せて摂取することが大切です。
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マンガン
体内ではエネルギーやタンパク質をつくる酵素の構成成分として存在するほか、石灰化を促進する役割もあります。
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ヨウ素
甲状腺ホルモンの構成成分です。ヨウ素を含む甲状腺ホルモンは、生殖や発達などのプロセスに関わり、エネルギー代謝を高める働きがあります。
体内のヨウ素は、その7~8割が甲状腺に存在しています。
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セレン
ヒトの体内では、甲状腺ホルモン活性化に必須で、抗酸化作用も併せ持つ重要なミネラルです。
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クロム
脂質と糖質の代謝をサポートする重要なミネラルです。日本人は不足しにくいといわれています。
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モリブデン
特定酵素との結合によって、脂質・糖質の代謝や鉄分の働きをサポートするミネラルです。
ミネラルは体にとって重要な栄養素
ミネラルは歯や骨の形成に関わっていたり、甲状腺ホルモンの材料となったりと、体内で重要な役割を果たしている栄養素です。ただし、体内では合成されないため、食品から摂取しなければなりません。
ミネラルは相互作用することがあるため、決まった種類だけを摂るのではなく、バランス良く摂ることが大切です。
不足しても摂りすぎても体が不調をきたすため、ミネラルは適量を摂るようにしましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医