1.鉄とヘム鉄・非ヘム鉄の違いとは?
食品に含まれている鉄には、大きく分けてヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。鉄の基本的な役割を説明しながら、この2つの鉄にはどのような違いがあるのかを確認していきましょう。
1-1.鉄(Fe)の役割
鉄はヒトに欠かせないミネラルの一種で元素記号はFeです。血液に含まれるヘモグロビンの構成成分であり、体内での酸素の運搬に重要な役割を果たしています。
体内に存在する鉄の割合は、骨髄や肝臓などに貯蔵されているものが約3割、筋肉内のミオグロビンや血液中のヘモグロビンが約7割です。
1-2.ヘム鉄について
ヘム鉄は、赤身肉や魚などに多く含まれ、タンパク質と結合した状態で存在する鉄成分です。非ヘム鉄に比べて、体内での吸収率が高いという特徴があります。
1-3.非ヘム鉄について
非ヘム鉄は、野菜や牛乳、卵などに多く含まれている鉄成分で、ヘム鉄と異なり、タンパク質に結合していない無機鉄のことを指します。
鉄はミネラルのなかでも吸収率が低い成分とされていますが、特に低いのが非ヘム鉄です。非ヘム鉄の吸収率を高めるには、ヘム鉄を利用したりビタミンCと合わせて摂取したりすると、良いとされています。
2.鉄の一日の摂取目安量
鉄の必要量は、年齢や性別、月経の有無によって異なります。厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」を見てみると、一日の摂取目安量は以下のようになっています。
男性
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・18~74歳:7.5mg
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・75歳以上:7.0mg
女性
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・18~49歳:10.5mg
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・50~64歳:11.0mg
月経のない女性
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・18~64歳:6.5mg
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・65歳以上:6.0mg
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
鉄は日本人にとって欠乏しやすい栄養素であり、先述したようにミネラルのなかでも吸収率が低いため、積極的に摂取したほうがよいでしょう。一般的な食事では、鉄を摂り過ぎることはめったにないため、過剰摂取を心配する必要はあまりありません。
3.鉄不足が引き起こすおもな症状
鉄が不足すると、おもに以下のような症状が現れます。
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・貧血(鉄欠乏性貧血)
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・集中力の低下
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・食欲不振
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・頭痛
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・疲れやすい
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・筋力低下
鉄が欠乏した場合、赤血球に含まれるヘモグロビンが減少し、赤血球数も減るため「鉄欠乏性貧血」となり、体に十分に酸素が供給されなくなります。貧血になると、集中力の低下や食欲不振、頭痛などの症状を引き起こします。
また、筋肉に存在するミオグロビンが減少すると、疲れを感じたり筋力が低下したりするおそれがあります。
鉄不足による貧血を予防するには、吸収されやすいヘム鉄を積極的に摂取するほか、吸収率を高めるタンパク質やビタミンCなどを一緒に摂取することが重要です。その他、赤血球の合成に関わる葉酸やビタミンB12も摂りましょう。
鉄を補給して貧血を予防しよう
今回は、ヘム鉄・非ヘム鉄の違いや一日の摂取目安量、欠乏時に現れるおもな症状を紹介しました。
含まれる鉄の種類は食品によって異なり、赤身肉や魚などに多く含まれるのがヘム鉄、野菜や牛乳、卵などに多く含まれるのが非ヘム鉄です。
ヘム鉄は非ヘム鉄よりも吸収率が良いことが知られています。タンパク質やビタミンCなどと一緒に摂取することで、非ヘム鉄でも吸収率を高めることができます。
鉄不足になると、鉄欠乏性貧血になり集中力の低下や頭痛を引き起こしたり、筋肉のミオグロビンが減少して疲れやすくなったりします。
現代の日本人にとって鉄は不足しやすい栄養素とされているので、日々の食事で意識的に摂取していく必要があるでしょう。ぜひ、一日摂取量の目安を参考に普段の食習慣を見直してみてください。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。