高齢者の貧血の原因とは?世代別にみる貧血の特徴についても解説

貧血というと、めまいや立ちくらみなどの症状が現れる、鉄分不足によって起こるといったイメージがあるかもしれません。しかし、若者と高齢者では症状の出方や原因に違いがあることをご存じでしょうか。

ただの貧血だと思っていたら、病気の症状の一つだったというケースも少なくありません。高齢者が貧血を起こす原因を知って、正しい対応をしましょう。

今回の記事では、世代別のおもな貧血の特徴を解説するとともに、高齢者における貧血の原因を紹介します。

1.貧血とは?

貧血とは、ヘモグロビンと呼ばれる赤血球の血色素濃度が低下した状態です。貧血を引き起こす原因はいくつかあり、原因によって貧血の種類を分けられます。

血液の大切な働きの一つは、体中に酸素を運ぶことです。ヘモグロビンは「ヘム」と呼ばれる鉄を多く含んだ色素と、「ヘムタンパク質」というタンパク質がくっついたものです。このヘモグロビンが酸素と結び付いて、体のすみずみまで酸素を運んでいきます。

ヘモグロビンの原料となる鉄が不足すると、ヘモグロビンを作れなくなり酸素を運ぶ力が弱まってしまいます。その結果、疲れやすくなったり、運動機能が低下したり、息切れや頭痛が起こりやすくなったりします。

ヘモグロビンが十分にあるかどうかを確認するには、採血による検査が必要です。血液検査をすることで、貧血の有無や程度、種類がわかります。男女ともに、ヘモグロビン値が11.0g/dLを下回る場合は貧血と考えるとよいでしょう。

また、加齢とともに赤血球を作る能力は衰えていく傾向にあるため、特に高齢者は貧血に注意が必要です。

2.【世代別】貧血の特徴

貧血のおもな原因は若者と高齢者で異なります。ここでは、それぞれの貧血の特徴を紹介します。

2-1.若年者の貧血の特徴

若者に起こる貧血で最も頻度が高いのは、鉄欠乏性貧血です。鉄欠乏性貧血とは、鉄分の摂取量が少なかったり、出血によって血液を作るための鉄が足りなくなったりして、起こる貧血を指します。このような状態に陥る原因は、食事の栄養バランスが偏っていて鉄分不足にあることや、消化管から持続的な出血があることなどが多いとされています。

女性の場合は、月経での多量の出血も貧血の一因です。そのほか、妊娠中は胎児の成長発育のために、授乳中は母乳を作り出すために、鉄をはじめとするミネラルやビタミンが多く使われます。このような時期は、栄養バランスを特に意識した食生活を心がけましょう。

2-2.高齢者の貧血の特徴

高齢者の貧血は、若者に比べると発症が穏やかであるという特徴があります。若者と同じく鉄欠乏性貧血も起こりますが、高齢者に起こる貧血全体のおよそ80%は続発性貧血と呼ばれるものです。

続発性貧血とは、何らかの病気が原因になって起こる貧血を指します。そのため、貧血の理由を探っている途中で、今まで気付かなかった病気が判明するケースもあります。

3.高齢者に多い貧血の原因

高齢者に多い貧血の原因は、次のとおりです。

  • ・鉄欠乏性貧血

  • ・慢性炎症性疾患にともなう貧血

  • ・骨髄の病気にともなう貧血

  • ・老人性貧血

  • ・胃の全摘にともなう貧血

高齢者における鉄欠乏性貧血では、鉄分の摂取不足による出血で起こることもあります。このような病気の早期発見のためにも、定期的な血液検査を受けましょう。

感染症など慢性的な炎症が起こる病気では、体内に鉄分があっても血液をうまく作れなくなり、貧血症状が生じてしまいます。

その他に、貧血原因がわからない場合は、老人性貧血と判断されるケースがあります。赤血球を産生する能力の衰えや、赤血球に影響をおよぼすホルモンへの反応が悪くなることが原因です。

これらの病気以外にも、胃を全摘してビタミンB12が不足したり、葉酸・亜鉛・ビタミンB6が必要量を下回ったりすると、貧血を引き起こすことになりかねません。

高齢者の貧血には重大な病気が隠れている場合があるため、体調に異常を感じたら、早めに病院を受診しましょう。

高齢者の貧血は原因を知って健康的な生活につなげよう

貧血は、酸素を運ぶ赤血球の働きが低下することで起こりますが、その原因はさまざまです。若者の場合は鉄分不足による鉄欠乏性貧血が多い傾向にあり、高齢者の場合は他の病気をともなう続発性貧血が大半を占めています。

骨髄の病気による貧血の場合もあるため、貧血症状を感じたら早めに医師へ相談することが大切です。

高齢者の貧血の原因と対策法をもとに、健康的な生活へとつなげましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医