高齢者の転倒は危険|転倒の原因とケガ予防のためにできることを解説

高齢になると、体の老化にともない転倒しやすくなります。転倒はケガの原因となり、ときに介護が必要な状態へとつながるケースも少なくありません。

高齢者がハツラツとした生活を続けるためには、転倒への対策を講じることが重要です。

今回の記事では、高齢者の転倒が危険な理由と、転倒の原因と対策方法を解説します。

1.高齢者の転倒が危険とされる理由

1年間の統計で見てみると、自宅で生活する65歳以上の人で約2割、施設で生活する人で3割以上が転倒すると報告されています。

また、男女で比べてみると、女性は男性よりも転倒事故を起こす割合が高く、年を重ねるにつれて転倒の確率が高くなります。80歳以上に起こる思わぬ事故による死亡のうち、転倒が3割近くを占めています。

転倒は、頭部外傷や骨折といった大きなケガにつながりやすく、転倒の結果、要介護状態となることも少なくありません。高齢で骨折すると、症状が軽くても回復に時間がかかります。そのうえ、一度転倒すると、また転ぶのではないかという不安や恐怖で物事に取り組む気持ちややる気が低下してしまいます。

そして、活動性の低下が次の転倒リスクを高めるという悪循環に陥りかねません。高齢者の転倒は、その後の生活の質にも関わる大きな問題です。

2.高齢者の転倒の原因

高齢者の転倒原因は、大きく分けると高齢者自身の原因(内的要因)と、周りの環境(外的要因)の2つが挙げられます。

内的要因には、加齢による体の機能の衰えや病気・薬の影響、運動不足などがあります。年を重ねると、筋力やバランス能力、体の柔軟性、瞬発力、持久力が低下し、いざというときに素早く力強い反応をすることが難しくなります。また、自分が思い描く動きと実際の動きに差が生じると、転倒へとつながりかねません。

さらに、高齢者は複数の病気を治療している人が多く、多種類の薬を服用している場合があります。薬の影響でめまいやふらつきが現れると転倒リスクも高まるため、定期的に薬の内容を医師や薬剤師に相談しましょう。

外的要因としてはおもに、高齢者の生活環境にあります。部屋のなかに段差や障害物がある、部屋が暗くて足元が見えにくいといった状況なども、転倒の原因です。

転倒の原因は一つだけでなく、いくつかの要因が関連していることが少なくありません。転倒リスクを軽減するためにも、これらの要因を取り除いていきましょう。

3.転倒によるケガ予防のためにできること

転倒を予防するために、内的要因と外的要因で改善できることを紹介します。

まず内的要因として、下半身の筋力アップやバランス機能を改善するためには、運動が効果的です。それぞれの歩行能力に応じて、適切なトレーニングを行ないましょう。
片足立ちやスクワットなどの運動も、自分の筋力・体力に合わせて安全な範囲で始めてください。柔軟性を高めるストレッチ運動や活動量を上げる体操、腰痛や膝の痛みの対策となる運動も有効です。

また、ビタミンDは、骨の成長に大切なカルシウムや筋肉の生成をサポートします。筋力向上のためにも、ビタミンDを適切に摂取しましょう。

外的要因として、住環境の見直しを行うことで転倒を予防し、骨折などのケガを防ぐことにつながります。具体的には、屋内の段差をなくし、暗い廊下やトイレには自動で点灯する照明を設置するなど、高齢者が暮らしやすい工夫を取り入れましょう。

高齢者が転倒しないよう生活習慣や住環境を見直しましょう

高齢者の転倒は骨折につながるおそれがあり、場合によっては寝たきりなどの要介護状態に陥ることがあります。高齢者の骨折を防ぐためには、運動習慣による筋力アップや、カルシウムをサポートするビタミンDの摂取などが重要です。

また、転倒しないための住環境づくりも大切です。転倒は内的要因と外的要因の両方によって起こるため、双方の改善を意識して取り組みましょう。

転倒の危険性を高齢者本人だけでなく、周りの人も理解して、転倒対策を行なうことが重要です。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。