1.eGFRについて
eGFR(推算糸球体濾過量)とは、あなたの腎臓の機能が今どれくらいあるかを示す値です。一般的な検査で使用される指標で、「血清クレアチニン値(血清Cr値)」「性別」「年齢」から推算された糸球体濾過量のことを指します。
1-1.糸球体濾過量とは
糸球体濾過量とは腎臓の機能を表す指標であり、「GFR(Glomerular Filtration Rate)」とも呼ばれています。これは、腎臓のなかにある糸球体(毛細血管の集合体)が1分間にどれくらいの血液を濾過して尿を作れるかを示しています。
1-2.クレアチニンとは
クレアチニン(Cr)とは、筋肉から出る老廃物の一つです。食べたものなどの影響を受けず、常に一定量が産生されています。腎機能が正常な状態であれば、クレアチニンは尿と一緒に排泄されます。また、腎臓以外からは体外に排出されないため、検査では腎臓の働きを表す指標として用いられています。
検査項目のクレアチニン値が高くなっている場合、老廃物をうまく尿に排出できていない可能性があり、腎機能の低下を示唆しているのです。
クレアチニンは筋肉から作られるものなので、筋肉量に比例して値が増減する性質があり、女性よりも男性のほうがやや高めの基準値に設定されています。
クレアチニン(Cr)の基準値
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男性:0.65~1.07mg/dl以下
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女性:0.46~0.79mg/dl以下
2.クレアチニン値を用いたeGFRの算出方法
血清クレアチニン(Cr)値を使ってGFRを推算した「eGFR」の式は、以下のとおりです。
【eGFRの計算式】
3.eGFRの正常値とは
eGFRの正常値は「60ml/分/1.73㎡以上」です。健康な人では、「100ml/分/1.73㎡前後」になります。
eGFRが60ml/分/1.73㎡未満の状態が一定期間続くと、慢性腎臓病(CKD)の疑いが出てくるのです。
【慢性腎臓病(CKD)の診断基準】
以下の(1)・(2)のいずれか、もしくは両方が3カ月以上続いた場合に、慢性腎臓病と診断されます。
なお、慢性腎臓病が進行すると末期腎不全となり、「人工透析」や「腎臓移植」といった治療が必要になります。
腎臓の機能は一度低下すると、残念ながらもとに戻る可能性が低いです。そのため、慢性腎臓病は早期発見・早期治療が大切です。定期的に自分の健康診断の結果をチェックしましょう。
定期的にeGFRをチェックして早期発見・早期治療を心がけましょう
eGFRは、大がかりな検査を省いて、簡易的に腎機能を測ることができる便利な指標です。
腎臓は血液中の老廃物を濾過し、尿として排出するなど重要な役割を担っています。ただし、腎臓の機能は一度低下してしまうと、残念ながら回復することはありません。
自分の腎臓を守るためには、腎臓の機能低下の早期発見・早期治療が大切です。いつまでも自分の腎臓でイキイキと過ごせるように、定期的に健康診断を受け、自分のeGFRの値をチェックしましょう。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。