MCVの数値が高い原因とは?
考えられる貧血の種類や予防法について解説

血液検査の結果表にはさまざまなデータが列挙されていますが、「MCV」「MCHC」などの項目は何を意味するのか、よくわからないという方も多いでしょう。

貧血にはさまざまな種類があり、MCVなどの検査値はどの種類の貧血なのかを判断するときに重要となります。

今回はMCVの基準値や異常高値のときに推測される貧血のタイプなどを解説します。

1.MCVとは

血液検査の結果表にも記載されるMCVとはそもそもどういうものなのか、概要や基準値を確認していきましょう。

1-1.MCVについて

MCVとは平均赤血球容積のことで、赤血球1個あたりの平均的な大きさを表す指標です。MCVは血液検査で得た赤血球数とヘモグロビン、ヘマトクリットの検査データから算出されます。計算式は、ヘマトクリット値(%)÷赤血球数(106/mm3)×10です。

MCVは貧血の種別を調べる指標の一つであり、MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)、MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)とともに、どの種類の貧血であるかを推測するのに役立ちます。なお、MCV、MCH、MCHCの3つは、赤血球恒数と呼ばれています。

再生不良性貧血のように、貧血の種類によってはMCVがおおむね基準値内となることもあります。

1-2.MCVの基準値

MCVの基準値は、80~98flです。ただし、医療機関や健診機関によって、基準値がやや異なる場合もあります。

2.MCVの数値が高い原因と貧血の種類

MCVが高い場合の、貧血の種類やおもな原因を解説します。

2-1.MCVの数値が高い場合に疑われる貧血の種類

MCVが基準値よりも高い場合には、巨赤芽球性貧血(きょせきがきゅうせいひんけつ)や骨髄異形成症候群などの可能性があります。

2-2.おもな原因

巨赤芽球性貧血のおもな原因は、ビタミンB12の欠乏や葉酸の不足などによってDNAの合成障害が起こるためです。ビタミンB12と葉酸は、赤血球が作られるときに必要とされます。ビタミンB12や葉酸の欠乏は食品からの摂取不足だけでなく、代謝異常や吸収障害によって起こることもあります。

稀に骨髄疾患によってMCVが基準値よりも高くなる場合もありますが、その他の検査項目も含めて総合的に判断します。気になる場合は内科を受診してください。

3.貧血を予防するためにできること

貧血を予防するためには、赤血球を生成するために必要な栄養素であるビタミンB12や葉酸の豊富な食品を積極的に摂り、栄養バランスのとれた食事を心がけることが重要です。

ビタミンB12を含む食品としては、しじみや焼きのり、はまぐり、カキなどが挙げられます。葉酸はホウレンソウや納豆、ブロッコリーなどが豊富に含まれています。

妊娠期や授乳期の女性は、胎児の発育や母乳の栄養保持のためにビタミンや鉄分の必要量が増すため、栄養不足や貧血への対策が特に重要となります。

なお、貧血を改善するには食生活の改善だけでなく、医療機関での治療が必要となる場合もあります。MCVをはじめとした検査データ項目に異常が見られる場合は、医療機関に相談しましょう。

貧血が気になる方はビタミンB12や葉酸を意識して摂取しましょう

MCVは赤血球の平均体積を表す指標であり、MCH、MCHCとともに貧血の種類を示します。MCVが高値となるときは巨赤芽球性貧血や溶血性貧血の場合があり、注意が必要です。

ビタミンB12や葉酸が不足すると赤血球の生成が妨げられて巨赤芽球性貧血につながる可能性があるため、日頃の食生活で意識的に摂取することが大切です。

バランスの良い食生活を心がけ、検査値の異常や気になる症状がある場合には医療機関へ相談しましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医