1.歯を健康に保つメリットとは?
食べ物を食べることは、生命維持はもちろん体や心の健康に欠かせません。健康な歯があると食事や会話を楽しめます。
歯で食べ物をしっかり噛むと、唾液が出て、消化・吸収を助けてくれます。また、咀嚼による健康効果もあります。咀嚼により期待される効果は、肥満の防止や味覚の発達、全身の体力向上などです。
高齢になっても20本以上の自分の歯を維持していれば、ほぼすべての食べ物をおいしく食べることができます。厚生労働省が進める「8020運動(ハチマルニイマルうんどう)」は、80歳になっても自分自身の歯を20本以上残そうという取り組みです。しかし現在、日本人の80歳時点での平均歯数は13.9本、20本以上の歯を維持できている人は38.3%にとどまっています。
歯をいつまでも健康に保つために、日頃から虫歯や歯周病などの予防を行ないましょう。
2.不健康な歯は体にさまざまな影響を与える
歯を失ってしまう最も多い原因は、歯周病です。歯周病になると、歯肉やあごの骨が徐々に破壊され、やがて歯がぐらつき、抜歯せざるを得ない状況になりかねません。
また、歯周病の影響を受けるのは、口のなかだけではありません。歯周病によって噛む機能が低下すると肥満になりやすくなり、メタボリックシンドロームのリスクが高まります。
歯周病による炎症はインスリンの働きを悪くさせ、糖尿病の悪化や、骨がもろくなったり、高血圧や脂質異常が進むと血管が厚く硬くなったりするおそれがあります。
歯の健康を保つことは、全身的な病気を予防し、健康維持に役立つのです。
3.歯の健康を保つにはどうしたらよいのか
体全体の健康のためにも、健康な歯は欠かせません。ここでは、歯の健康を維持するためのポイントを4つ紹介します。
3-1.歯を強くする食べ物を積極的に摂る
丈夫な歯をつくるためにはカルシウムやミネラル、良質なタンパク質、ビタミンが必要です。
カルシウムは、歯を強くしてくれる成分です。牛乳やチーズなどの乳製品や、海藻類などに含まれています。ビタミンAは、歯のエナメル質の強化に関わります。ビタミンAはにんじんやわかめ、のりなどに多く含まれています。
歯の象牙質をつくるためのサポートをしてくれるのが、ビタミンCです。
ビタミンCが豊富なピーマンや焼きのりなどを使った料理を、毎日のメニューに加えてみましょう。シイタケなどに含まれるビタミンDは、カルシウムが吸収されるのを助けてくれます。
また、ごぼうやにんじんなど繊維質の野菜や噛みごたえのある食べ物を食べると、咀嚼回数が増えるため、あごの骨が発達するほか、歯の表面に付いた汚れを掃除してくれます。
食事の際は、いろんな食品を取り入れ、栄養バランスの良いメニューになるよう心がけましょう。
3-2.歯磨きをする
歯磨きは、自分でできる口腔ケアの基本です。ここではブラッシングのポイントを紹介します。
特に、歯と歯ぐきの間、歯と歯の間、前歯の裏側、奥歯の後ろ側、奥歯の噛み合わせの面は、磨き残しが多い箇所です。十分に意識して磨きましょう。また、いつも磨く順番を決めておくと磨き残しを防げます。
虫歯も歯周病も、歯に付着した歯垢が原因です。正しい歯磨き方法で、歯垢をしっかり取り除きましょう。
3-3.定期的に歯科検診を受ける
どれほど丁寧に歯磨きをしても汚れは残ってしまうため、定期的に歯のチェックやクリーニングを行ないましょう。
歯科医院では、自分では除去できない歯石や歯周ポケットの歯垢をきれいにしてもらえます。
歯周病予防のためには、半年~1年ごとの検診が理想的です。また、かかりつけ歯科医を持っておくと、歯や歯ぐきの変化に気付きやすくなります。歯の健康を保つためにも、定期的に歯の状態を確認してもらいましょう。
3-4.禁煙
たばこは、歯周病の最大のリスクファクターです。喫煙は体の抵抗力を弱めるだけでなく、抹消の血管を収縮させるため、歯ぐきの血流悪化につながります。また、たばこに含まれるタール(ヤニ)が歯にこびりつくと歯垢が付きやすくなり、歯周病や虫歯のリスクを高めます。
ヘビースモーカーは、たばこを吸わない人に比べて5倍も歯周病になりやすいというデータがあります。歯の健康のためにも、禁煙しましょう。
元気な毎日のためには、まず歯の健康から
体の健康のためには、歯の健康を保つことが大切です。
歯や歯ぐきにトラブルが起こると、口のなかだけでなく体全体に影響をおよぼします。歯に良い食べ物を積極的に摂るほか、正しい口腔ケアを実施しましょう。
また、定期的に歯科医師に歯をチェックしてもらうことも大切です。歯科医院でのクリーニングでは、自分では取り除けない汚れを除去してくれます。
いつまでも元気な生活を続けるために、健やかな歯の維持を心がけましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医