五大栄養素とは?栄養素の働き・食事に含まれる栄養について

健康な毎日を送るためには、バランスの良い食事をとることが大切です。基本となる栄養素について知っておくと、栄養バランスのとれた献立を考えるときに役立つでしょう。

この記事では、「五大栄養素」に含まれる栄養素やその働き、食事に含まれる栄養素について解説します。

1.五大栄養素とは?

五大栄養素とは、食品に含まれている「炭水化物」「脂質」「タンパク質」「無機質(ミネラル)」「ビタミン」の5つの栄養素を指します。

五大栄養素はそれぞれ異なる働きを持っているため、どれも体に必要です。適量の栄養素をバランス良く摂取することが、健康維持につながります。

特定の食品だけで、五大栄養素をすべて摂取することはできません。食事のなかにいろいろな食品をまんべんなく取り入れることが、栄養バランスを整えるためのポイントです。

2.五大栄養素の働き

各栄養素は、どのように体に働きかけるのでしょうか。五大栄養素の働きを順番に見ていきましょう。

2-1.炭水化物

炭水化物はエネルギーをつくる栄養素の一つで、「糖質」と「食物繊維」に分類されます。このうちエネルギーの源になるのは、おもに糖質です。

糖質は体内でブドウ糖(グルコース)に分解され、赤血球や脳、神経などの組織に供給されます。ブドウ糖は脳にとって唯一のエネルギー源(※)であり、生命維持するうえで非常に大切な成分です。

※絶食が続くなど特別な場合を除く。

食物繊維についても、重要な働きが示唆されています。生活習慣病の発症率などと食物繊維摂取量との関連が報告されているほか、食物繊維の摂取量が排便に影響する可能性を示す研究もあります。

2-2.脂質

脂質も、エネルギー産生栄養素の一つです。このほかに、細胞膜や核膜の構成成分、生理活性物質としての働きも持っています。

脂質のうち、多価不飽和脂肪酸(n-6系脂肪酸やn-3系脂肪酸)は、体内ではつくられない脂肪酸です。これらの脂肪酸が不足すると皮膚炎などの症状が生じるため、多価不飽和脂肪酸は食事から摂取しなければなりません。

2-3.タンパク質

タンパク質は、生物の細胞を構成するおもな成分の一つで、皮膚・臓器・筋肉・毛髪などをつくる材料です。酵素・抗体・ホルモンなどの材料でもあります。

また、炭水化物・脂質と並び、エネルギー源としても利用されています。

タンパク質を構成するのは、20種類のアミノ酸です。このうち9種は、体内ではつくられない「必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)」のため、食品から摂らなければなりません。

2-4.無機質(ミネラル)

無機質(ミネラル)とは、生物の体をおもに構成する酸素・炭素・窒素・水素以外の物質の総称です。

厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、次の物質が無機質(ミネラル)に分類されています。それぞれの働きをごく簡単に紹介します。

多量ミネラル

  • ・ナトリウム:細胞外液の浸透圧の調節、量の維持など

  • ・カリウム:細胞内液の浸透圧や体液のpHバランスの調節、筋肉収縮や神経の興奮性への関与など

  • ・カルシウム:出血予防、歯や骨の形成、心筋の収縮作用増進など

  • ・マグネシウム:骨の形成、代謝のサポートなど

  • ・リン:歯や骨の形成、核酸や細胞膜の構成など

微量ミネラル

  • ・鉄:赤血球のヘモグロビンの構成など

  • ・亜鉛:各酵素の構成、DNAやタンパク質の合成への関与など

  • ・銅:エネルギーの生成、活性酸素の排除など

  • ・マンガン:骨の発育や皮膚代謝への関与など

  • ・ヨウ素:甲状腺ホルモンの構成など

  • ・セレン:抗酸化作用など

  • ・クロム:糖代謝のサポートなど

  • ・モリブデン:酵素の活性化のサポート、タンパク質やミネラルの代謝への関与

ミネラルはどれも体内でつくり出せない成分のため、食事から摂取する必要があります。

2-5.ビタミン

ビタミンは、体の機能を正常に保つために欠かせない栄養素です。体内ではあまりつくられないため、食事で摂取しなければなりません。

ビタミンは、血液などの体液に溶け込む「水溶性」と、水に溶けない性質を持つ「脂溶性」に分けられます。水溶性ビタミンは代謝に必要な酵素の機能をサポートし、脂溶性ビタミンは身体機能の維持に役立ちます。

3.食事に含まれる五大栄養素

五大栄養素をバランス良く摂取するためには、どのような料理にどういった栄養素が多く含まれるかを知っておくことが大切です。

次の表に、献立に含まれる料理のカテゴリと、それぞれのカテゴリで使われるおもな食材、おもに含まれる栄養素をまとめました。

料理カテゴリ おもな食材 おもに含まれる栄養素
主食 ごはん、パン、麺など 炭水化物
主菜 肉、魚、卵、豆製品など タンパク質
副菜 野菜、きのこ、いもなど 食物繊維、ミネラル、ビタミン
乳製品 牛乳、チーズ、ヨーグルトなど 脂質、タンパク質、ミネラル
果物 りんご、みかんなど ビタミン

このように、主食・主菜・副菜をそろえて乳製品や果物を添えれば、さまざまな食品を取り入れることができ、バランス良く五大栄養素を摂取できます。

五大栄養素をバランス良く摂取しよう

五大栄養素は、「炭水化物」「脂質」「タンパク質」「無機質(ミネラル)」「ビタミン」の5つを指します。これらはどれも、人が生きていくうえで必要な栄養素です。5つの栄養素はそれぞれ異なる働きを持っているため、すべての栄養素をバランス良く摂取することが重要です。

さまざまな食品を組み合わせた献立を考えると、五大栄養素をバランス良く摂取しやすくなります。健やかな日々を過ごせるよう、栄養バランスのとれた食事を意識しましょう。

監修者情報

氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医