花粉症のおもな症状|原因となる植物や対策方法について解説

毎年、花粉が飛ぶ時期になると、くしゃみや鼻水、目のかゆみなどで悩まされている方は少なくないでしょう。いまや花粉症は、日本人のうちおよそ4人に1人の割合で発症しているといわれています。

今回は、花粉症に見られるおもな症状、原因となる植物の種類や花粉の飛散時期、症状軽減のためにできる対策方法を紹介します。

1.花粉症について

花粉症とは、植物の花粉が原因で起こるアレルギー症状のことです。鼻や目に症状が現れやすく、花粉が飛ぶ季節のみ発症するため、「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれることもあります。

花粉が体内に入り、免疫機能が異物と判断すると、異物に対抗するためIgE抗体(アイジーイーコウタイ)がつくられ、この抗体は花粉と接触するたびにつくられていきます。体内に抗体が溜まっていき、その量がある一定量を超えると、花粉に対してアレルギー反応を起こす物質が分泌されて、くしゃみや鼻水などの症状を起こします。

このように、花粉症のさまざまな症状は、体に入ってきた花粉に対して過剰に免疫機能が反応した結果、引き起こされるものです。「今年初めて発症した」という方は、体内に溜まったIgE抗体の量が一定量を超えて、症状が出始めたといえます。

2.花粉症のおもな症状

花粉症の症状には次のようなものがあり、その年の花粉飛散量などにより、症状の度合いが変わります。

2-1.鼻の症状

花粉症における代表的な鼻の症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりです。くしゃみは何回も連続で起こり、鼻水はいくらかんでも鼻から垂れるなどして、すぐに出てくるのが特徴です。

鼻づまりは粘膜が膨張し、血流が悪化することで起こります。ひどい場合は、鼻の穴が両方とも完全につまるため注意が必要です。

2-2.目の症状

激しいかゆみや涙が出たり、結膜が充血したりする症状が中心です。目の異物感や目やに、まぶたの腫れが見られる場合もあります。

2-3.全身の症状

症状が重くなると、微熱や皮膚のかゆみ、倦怠感などを訴える方もいます。また、頭痛、のどの違和感、咳、いら立ち、集中力の低下など、全身に多くの症状が見られるため、QOL(生活の質)に多大な影響をおよぼす場合もあります。

3.花粉症の原因となる植物

花粉症の原因としては、スギやヒノキがよく知られていますが、それ以外にも花粉症を引き起こす植物はあります。花粉の飛散時期と合わせて見ていきましょう。

なお、飛散時期は地域により差がありますが、おもに関東・関西地域で多く飛散する時期を挙げています。

原因植物 花粉の飛散時期 特徴
スギ 2月~4月 花粉症の代表的な原因植物。本州・四国・九州に広く分布する。
ヒノキ 3月~4月 スギ花粉と似たアレルギー物質を持ち、福島以南の本州・四国・九州に分布する。
イネ科 5月~10月 春から秋にかけて、次々と花粉飛散の時期がやってくる。例えば、5月~6月はカモガヤ、6月~8月はオオアワガエリ、9月~10月はススキなど。
ブタクサ 8月~9月 秋に起こる花粉症の代表的な原因植物。日本全体に分布するが、東北以北は少ない。
ヨモギ 9月~10月 秋に起こる花粉症の原因植物で、日本全体に分布する。
ハンノキ 1月~4月 日本全体に分布しているが、湿地帯に多い。
カナムグラ 8月~10月 日本全体に分布しているが、関東地方で多く見られる。
シラカンバ 3月下旬~6月 本州の中部以北と北海道に分布している。北海道では、スギ花粉症はあまり見られないかわりに、シラカンバ花粉症が多い。

4.花粉症の症状を軽減するためにできること

花粉症の症状をできるだけ軽減し、少しでも快適に過ごすには、早めの受診とセルフケアがポイントです。

4-1.初期療法

症状が重くなりやすい方は、花粉が飛び始めた時点か、少しでも症状が見られた時点で、速やかに医療機関を受診して治療を開始する、初期療法が有効です。

花粉症の診療は、内科やアレルギー科などでも受けられますが、耳鼻咽喉科や眼科など、症状に合った診療科の受診も可能です。

4-2.おすすめのセルフケア

セルフケアでは、花粉になるべく接触しないために、次のような対策が有効です。

  • 花粉飛散情報を確認する

    毎日の花粉飛散状況を確認し、花粉症対策に役立てましょう。特に花粉が多く飛散している日は、外出を避けるなどの対策も有効です。

  • マスクやメガネを着用する

    マスクやメガネには、鼻や目に入る花粉の量を減らす効果があるとされているため、症状の軽減が期待できるでしょう。普段はコンタクトレンズ着用の方も、花粉の時期はメガネの使用がおすすめです。また、頭部にも花粉が付着しやすいので、帽子の着用も有効です。

  • 衣類はつるつるした素材を選ぶ

    ウールのセーターやコートなど、花粉が付着しやすい素材の服は避けましょう。ポリエステルなど、表面がつるつるした素材の衣類がおすすめです。

  • 帰宅時には付着した花粉を落とす

    帰宅時は家に入る前に、衣類の花粉を払い落としましょう。また、すぐにうがいと洗顔をして、鼻をかんでおきます。鼻や目を洗う方法もありますが、刺激して症状が悪化する場合もあるので注意してください。

  • 室内に花粉を入れないようにする

    花粉の飛散が多いときは窓を開けないようにし、布団や洗濯物も外に干さないようにしましょう。また、室内の花粉量を減らすために、こまめに拭き掃除をするのもおすすめです。

  • 規則正しい生活を心がける

    免疫機能を低下させないためには、十分な睡眠をとって適度に運動するなど、規則正しい生活を意識しましょう。

花粉症の飛散時期にはセルフケアで少しでも症状を和らげましょう

花粉症は、いまや日本人の4人に1人が発症しているといわれるアレルギー症状です。

原因とされる植物は数多くあり、それぞれ花粉が飛散する時期が異なるため、まずは医療機関を受診して自身の花粉症の原因植物を確認してみましょう。

花粉症の治療は、医療機関での治療に加えて、花粉が飛散する時期には、できるだけ花粉との接触を避けて症状の悪化を防ぐ、セルフケアが重要です。

生活習慣にも注意しながら、少しでも症状を和らげて、つらい花粉症の時期を乗り切りましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。