「大豆イソフラボン」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取上限量について解説

さまざまな健康効果が期待されている大豆イソフラボンは、サプリメントなどの健康食品としても注目されています。

大豆イソフラボンの働きや多く含まれる食品、推奨される摂取量など、大豆イソフラボンの上手な取り入れ方を紹介します。

1.大豆イソフラボンとは

大豆イソフラボンとは、大豆、特に大豆胚芽(芽になる部分)に多く含まれる成分で、フラボノイドの一種です。女性ホルモンの一つであるエストロゲンと分子構造が似ているため、植物性エストロゲンとも呼ばれています。

また、大豆イソフラボンは、大豆由来のほとんどの食品に含まれていますが、原料とした大豆の種類や加工食品の製造方法などによって、含有量は変わります。

具体的な食品に対する含有量は、次章にて解説します。

2.大豆イソフラボンの含有量が多い食べ物

前述のとおり、大豆イソフラボンは、大豆を原料とする食品のほとんどに含まれています。代表的なものでいえば、豆腐、納豆、おから、きな粉、ゆば、煮豆などのほか、調味料である味噌や醤油など、日本の伝統的な食生活を支えてきた食品ばかりです。また、近年は豆乳などの飲料も好んで飲まれるようになってきました。

大豆イソフラボンの含有量は、原料である大豆の種類や製造方法によって異なります。なお、大豆は食品中では糖が結合した「大豆イソフラボン配糖体」という形で存在しますが、腸内細菌により分解されると「大豆イソフラボンアグリコン」という物質に変換されます。食品中に含まれる大豆イソフラボンの含有量は、データによってはこの大豆イソフラボンアグリコンに換算した量で示すこともあります。

食品安全委員会がまとめた評価書によると、各食品中100gあたりに含まれる大豆イソフラボン(アグリコンとして)の量は以下のとおりです。

(大豆イソフラボンアグリコンとしてmg/100g)

品名(検体数) 含有量 平均含有量
大豆(11検体) 88.3~207.7 140.4
煮大豆(3検体) 69.0~74.7 72.1
揚げ大豆(1検体) 200.7 200.7
黄粉(2検体) 211.1~321.4 266.2
豆腐(4検体) 17.1~24.3 20.3
凍り豆腐(1検体) 88.5 88.5
おから(1検体) 10.5 10.5
金山寺みそ(1検体) 12.8 12.8
油揚げ類(3検体) 28.8~53.4 39.2
納豆(2検体) 65.6~81.3 73.5
味噌(8検体) 12.8~81.4 49.7
醤油(8検体) 0.7~1.2 0.9
豆乳(3検体) 7.6~59.4 24.8

(厚生科学研究(生活安全総合研究事業):食品中の植物エストロゲンに関する調査研究(1998)より)

3.大豆イソフラボンのおもな働き(期待されている効果)

大豆イソフラボンには、さまざまな健康効果が期待されています。大豆イソフラボンの摂取によりどのような効果が期待できるのか、その働きを解説します。

3-1.更年期のサポート

更年期とは、女性の場合、閉経の前後10年間をさします。閉経の平均年齢は50.5歳であり、40代頃からが更年期に該当します。更年期にさしかかると、女性ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の分泌が急激に減少するため、ホルモンバランスの変化によりさまざまなゆらぎが現れます。

大豆イソフラボンアグリコンは、エストロゲンと似た化学構造を持つため、摂取することでエストロゲン受容体に結合し、エストロゲンに似た作用を呈すことが知られています。

ゆえに、更年期のゆらぎを緩やかにするには、大豆イソフラボンが有用であるといえるでしょう。

3-2.骨形成をサポート

骨は、食べ物から摂取したカルシウムが血液から骨へと運ばれる「骨形成」と、古くなった成分を壊して骨のしなやかさを保つ「骨吸収」により新陳代謝を行なっています。

しかし、特に女性では、骨形成を促進して骨吸収を抑え丈夫な骨の形成を維持する働きのあるエストロゲンの分泌量が閉経により低下し、それにともなって骨量は減少する傾向です。

植物性エストロゲンである大豆イソフラボンは、骨のエストロゲン受容体(エストロゲンが結合する部位)を介して骨自体に直接作用するため、骨の健康を保つ効果があると考えられています。

3-3.生活習慣病の改善

大豆イソフラボンは、生活習慣病の予防・改善においても注目されています。大豆イソフラボンは、細胞内に脂肪が蓄積するのを抑えたり、脂肪酸の燃焼を促進したりする働きがあります。大豆イソフラボンを含む大豆タンパク質を1~3ヵ月継続摂取したところ、血中総コレステロールおよびLDLコレステロールの濃度を有意に低下させたという報告もあります。

4.大豆イソフラボンの摂取量と注意点

さまざまな健康効果がある大豆イソフラボンでも、摂取量の上限を守って食生活に取り入れることが大切です。大豆イソフラボンの摂取量の上限や、摂取するときの注意点を説明します。

4-1.大豆イソフラボン摂取量の上限

食品安全委員会が2006年にまとめた「大豆イソフラボンを含む特定保健用食品の安全性評価の基本的な考え方」によれば、大豆イソフラボンの摂取目安量の上限は70~75 ㎎/日となっています。

ただし、これは一日70~75mgという量を長期間摂取する場合の平均値としての上限であること、大豆食品からの摂取量がこの上限値を超えたとしても、ただちに健康被害が起こるわけではないということも併せて記されています。

なお、特定保健用食品として大豆イソフラボンを食事以外に上乗せして摂取する場合の上限は、30mg/日となっています。

4-2.大豆イソフラボンの過剰摂取について

大豆イソフラボンはエストロゲンと似た作用を示すものの、それが人間の身体にとってプラスに働くこともあれば、何らかの有害事象が発生する可能性も否定できません。

ただ、日常的に大豆食品の食経験がある日本人において、これまで大豆食品の摂取による特別な問題は報告されていません。毎日、長期間にわたって大豆イソフラボンの摂取目安量の上限を超えてしまうような状況でない限り、大豆イソフラボンの摂取がただちに健康に悪影響を及ぼすとは考えにくいでしょう。

例えばサプリメントなどから大豆イソフラボンを摂取する場合は、一日の摂取目安量を超えないようにしましょう。また、ほかの大豆イソフラボン含有サプリメントとの併用もご注意ください。

大豆イソフラボンを摂取して健康的な毎日を

大豆イソフラボンの摂取には1日あたりの摂取量には上限の目安が示されています。上限を超えると直ちに健康被害が出るという報告はありませんが、サプリメントを併用する場合などは摂取量にご注意ください。

しかしながら、大豆イソフラボンは、体内でエストロゲンと似たような働きをすると考えられていることから、更年期のサポートをはじめ、さまざまな健康効果が注目されています。毎日の食生活に、大豆食品や大豆イソフラボンを上手に取り入れるとよいでしょう。

監修者情報

氏名:河村優子(かわむら・ゆうこ)
アンチエイジングをコンセプトに体の中と外から痩身、美容皮膚科をはじめとする様々な治療に取り組む医師。海外の再生医療を積極的に取り入れて、肌質改善などの治療を行ってきたことから、対症療法にとどまらない先端の統合医療を提供している。