1.過呼吸(過換気症候群)の原因
いわゆる「過呼吸」とは「過換気症候群」のことで、緊張・不安などの精神的なストレスがおもな原因です。
呼吸は、無意識でも行なえるように脳でコントロールされていますが、強い緊張や不安を感じるなどして精神が不安定になると、呼吸が乱れて息苦しく感じます。息苦しさを感じることにより、必死に呼吸をしようとして過呼吸に陥ってしまうのです。
また、過呼吸は精神的なストレスだけでなく、睡眠不足や肉体的な疲労など身体的な不調がきっかけとなり生じるケースもあります。
2.過呼吸のおもな症状
過呼吸によって速く浅い呼吸を繰り返すと血液中の二酸化炭素が少なくなり、次のような症状が発生します。
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• 呼吸困難
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• 手足の指先のしびれ
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• めまい
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• 頭痛
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• 胸部の不快感や圧迫感
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• 動悸
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• 吐き気
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• 失神
その他、「テタニー症状」を起こすことがあるでしょう。テタニー症状は、筋肉に継続的に起こる硬直やけいれんのことで、顔の引きつり・手指のこわばりなどが見られます。
3.過呼吸が起きた際の対処法と注意点
一般的な傾向として、過呼吸は若い世代に起きやすく、特に男性よりも女性に多く見られます。過呼吸そのものが命に関わることはないものの、過呼吸が起きた際には、適切に対処しなければなりません。
それでは、過呼吸が起きた際の対処法と注意点を見てみましょう。
3-1.対処法
過呼吸の症状は通常数十分~数時間程度で自然に改善しますが、過呼吸が起きたら静かに座った状態で、吸った息を10秒ほどかけてゆっくりと吐く方法が有効です。このとき、緊張や不安の原因となることは考えず、息を吐くことに集中しましょう。
また、できるなら息を数秒ほど止めてみると、呼吸が落ち着きやすくなります。
過呼吸になると、呼吸しているのに空気を吸えていないような感覚になり、パニックに陥るケースが少なくありません。症状が悪化しないよう周囲の人は慌てず、過呼吸を起こしてしまった人に優しく声をかけるなどして落ち着かせてください。
3-2.注意点
過呼吸が起きた際の対処法として、以前は「ペーパーバッグ法」が有効とされていました。ペーパーバッグ法とは、紙袋で口や鼻を覆ってそのまま呼吸し、吐いた息を再度吸い込む方法を指します。
しかし前述のとおり、過呼吸が起きている最中は、体内の二酸化炭素が少ない状態です。そのようなときに紙袋で口や鼻を覆ってしまうと、体内の二酸化炭素が急増したり、酸素が急激に低下したりする危険性があります。実際、過去にはペーパーバッグ法によって窒息してしまうケースも発生しています。
現在では、過呼吸の治療として効果があるといえないことから、ペーパーバッグ法はおすすめできません。
過呼吸の原因と対処法を把握し慌てずに対処できるようにしておきましょう
過呼吸のおもな原因は、強い緊張や不安による精神的なストレスです。速く浅い呼吸を繰り返すことで血液中の二酸化炭素が少なくなり、さまざまな症状が突発的に発生します。
過呼吸が起きた際には、吸った息をゆっくりと吐いていく方法が有効です。ペーパーバッグ法は窒息の危険性があるため、行なわないようにしましょう。
過呼吸になると、うまく呼吸できず不安になるかもしれませんが、過呼吸自体は命にかかわることはありません。まずは心を落ち着かせて、ゆっくりと深く呼吸することを心がけてください。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医