「ビタミンA」の働きとは?
役割や含まれる食べ物、一日の摂取許容量について解説

ビタミンAは健康を維持するために重要な栄養素です。ビタミンAが不足することで、健康面にさまざまな悪影響があるため、適切な量の摂取を心がけましょう。

今回は、ビタミンAの働きや役割、含まれる食べ物、一日の摂取許容量について解説します。

1.ビタミンAとは

ビタミンAは水には溶けにくいものの、油には溶けやすい特徴を持つ脂溶性ビタミンに分類される栄養素です。動物性食品に多く含まれ、体内でレチノール、レチナール、レチノイン酸の3種類に変換されます。

具体的には、レチノールが酸化したものがレチナールで、次いでレチナールは、レチノイン酸へと変換することになります。

ビタミンAは、皮膚や粘膜、目の機能維持、細胞の成長・分化に関与するものです。そのことから、ビタミンAの不足が起こると、皮膚・粘膜の乾燥、胎児の奇形などにつながることが示唆されています。ビタミンAは、レチノールとして食品に含まれるほか、ビタミンAの前駆体であるプロビタミンAとしても摂取可能です。

なお、プロビタミンAとは、おもに体内でビタミンAに変換される物質の総称です。プロビタミンAの一例として、にんじんやかぼちゃに豊富に含まれる、カロテノイドなどがあります。

プロビタミンAカロテノイドは約50もの種類があり、特にβ-カロテンは他のカロテノイドよりもレチノールへの変換効率が良い物質です。また、β-カロテンには抗酸化作用もあり、熱を加えることで体内への吸収が良くなるとされています。

2.ビタミンAのおもな働き

ビタミンAのおもな働きは、目や皮膚、粘膜のサポートや細胞の成長促進です。レチノール・レチナールは、目の網膜細胞を保護する作用があります。また、視覚に関わる視細胞において、光の刺激を受けたときの反応にも重要な役割を果たす物質です。

一方、レチノイン酸は細胞の成長促進に関わる物質で、細胞内にある核内受容体と結合して、細胞の増殖や代謝などを制御すると考えられています。

3.ビタミンAが不足することによるおもな疾患

一般的には、長期的にビタミンAを含まない食品を摂らない限り、欠乏症のリスクはおおむね心配ありません。
実際に、成人が4ヵ月間ビタミンAの含まれていない食事を摂取した場合でも、肝臓内に貯蔵されているビタミンAが20μg/g 以上ある状態が維持できれば欠乏症状は見られないとされています。

また、過度のアルコール摂取も肝臓にダメージを与え、ビタミンAの貯蔵量を減少させるため、ビタミンA不足につながりやすいといえるので適量の飲酒を心がけましょう。

欠乏症の具体的な症状として見られるのは、比較的軽度の症状であれば免疫機能の低下などです。また、目の角膜や粘膜が正常な機能を維持できなくなるため、視力の低下が見られるのも特徴で、悪化すると失明する危険性もあります。

4.ビタミンAの一日の摂取目安量

一日に必要となるビタミンAの摂取量は下表のとおりです。

性別 男性 女性
年齢 推奨量(μgRAE/日) 推奨量(μgRAE/日)
0~5ヵ月 300※ 300※
6~11ヵ月 400※ 400※
1~2歳 400 350
3~5歳 450 500
6~7歳 400 400
8~9歳 500 500
10~11歳 600 600
12~14歳 800 700
15~17歳 900 650
18~29歳 850 650
30~49歳 900 700
50~64歳 900 700
65~74歳 850 700
75歳以上 800 650
妊娠後期(付加量) +80
授乳期(付加量) +450


※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)

4-1.ビタミンAの過剰摂取と過剰症

ビタミンAは脂溶性で肝臓に貯蔵されるため、過剰摂取によって蓄積量が増えると、さまざまな健康障害を起こす可能性があります。成人であれば、短期的には吐き気やめまい、頭痛、目のかすみなど、長期的には肝機能の異常、中枢神経系への悪影響、骨・皮膚の変化などの症状を呈することもあるようです。

一方、子どもの過剰摂取では、頭蓋内や骨格に異常が発生する可能性があります。また、妊娠中の女性では、胎児の奇形に関連があるとされているため注意が必要です。

ただし、プロビタミンAであるβ-カロテンの場合は、腎機能が低下した方が大量に摂取した場合に起こる代謝性アシドーシスなどを除いて、過剰症は報告されていません。β-カロテンは体内のビタミンAが不足したときに必要な量だけが変換され、他は脂肪組織に蓄積されたり、排泄されたりするため、通常の食事で接種する量では危険性は低いと考えられています。

しかし、サプリメントで大量に摂取しすぎず、適正量を守って使用しましょう。

5.ビタミンAを多く含む食べ物

ビタミンAは、肝臓や卵などの動物性食品に多く含まれます。一方、プロビタミンAであるカロテノイドは植物性食品に多く、特に緑黄色野菜や果物に豊富に含まれているのが特徴です。

5-1.植物性食品

食品名 1食当たり の重量(g) ビタミンA(μgRAE)
1食当たり 100g当たり
にんじんジュース 200 740 370
ほうれん草(ゆで) 80 360 450
小松菜(ゆで) 80 208 260
にんじん(皮なし、ゆで) 20 146 730
すいか(赤肉種) 200 138 69
にら(油炒め) 30 114 380
みかん 100 84 84
味付けのり 3 81 2,700

(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より引用)

5-2.動物性食品

食品名 1食当たり の重量(g) ビタミンA(μgRAE)
1食当たり 100g当たり
うなぎ(かば焼き) 80 1,200 1,500
ぎんだら(水煮) 70 1,260 1,800
ほたるいか(ゆで) 30 570 1,900
くろまぐろ(赤身) 70 588 840
くろまぐろ(脂身) 50 135 270
鶏卵 卵黄(ゆで) 20 104 520
鶏卵 全卵(ゆで) 55 94 170
アイスクリーム(高脂肪) 90 90 100

(文部科学省「日本食品標準成分表2020年版 (八訂)」より引用)
※くろまぐろ 別名 本まぐろ

バランスの良い食事を心がけよう

ビタミンAは、目や皮膚や、粘膜の正常な維持、細胞の成長・分化に関与している栄養素です。ビタミンAが不足すると免疫機能の低下などが起こる可能性がありますが、通常の食生活であれば不足する心配はほとんどないでしょう。

一方、ビタミンAを過剰に摂取すると短期的には吐き気やめまい、頭痛、目のかすみなどが、長期的にはや肝機能や中枢神経系などに悪影響をおよぼす可能性があります。

ビタミンAは卵などの動物性食品に、プロビタミンAのカロテノイドはにんじんやかぼちゃなどの植物性食品に豊富に含まれています。一日の必要量を知り、他の栄養素も含めてバランスの良い食事を心がけましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。