一日に水はどれくらい飲めばいい?
摂取量の目安とおすすめの摂取タイミング

よく「水分補給は大切」といわれますが、その理由や具体的な摂取量の目安について、明確にわからない方もいるでしょう。

比較的安静に過ごす場合や、あまり汗をかかない季節でも、一日に失われる量と同じ量の水分を補う必要があります。

今回は、水分補給が必要な理由をあらためて確認するとともに、水の一日当たりの摂取量目安や、おすすめの摂取タイミングを解説します。

1.水分補給が必要な理由

成人の場合、体重の約60~65%を水分が占めています。例えば、体重60kgの成人男性の場合、単純計算で約36~39kg分が水分です。

また、体のなかでも脳や筋肉、腸、腎臓、肝臓などの水分含有量は、80%程度と多いのが特徴です。

体内の水は、栄養素や代謝物を運んだり、体温の調節を行なったりと、生命の機能を保つ役割を担っています。したがって、健康を維持するためには、こまめな水分補給が欠かせません。

体内から水分が1%失われるとのどの渇きを感じ、2%失われると、めまいや吐き気、食欲減退などが見られます。さらに、10~12%の水分が失われると筋けいれんや失神が現れ、20%の水分損失で生命に危機がおよびます。

仮に、水を1滴も飲めない場合、2~3日で生命の維持が難しくなるでしょう。

2.水の一日摂取量の目安

水は、栄養素のように摂取基準量が定められていないため、一日の水分の出入りから摂取量の目安を考える必要があります。

成人の体内の水分は、尿や便、汗として排出されたり、呼気や皮膚から自然に蒸発したりして(不感蒸泄)、一日当たり約2.5ℓ失われています。これは、比較的安静にしていた場合の数値のため、普通に生活を送っていても、一日に失われる量と同じ約2.5ℓの水分を補わなければなりません。さらに、運動や温熱環境下で発汗量が増えたときは、より多くの水分補給が求められます。

摂取する水分には、飲料水のほか、食べ物に含まれる水分や、体内で栄養素がエネルギーになるときに生成される水分(代謝水)があります。あくまでも目安ですが、平均的な食事から約1ℓの水分、食べ物が分解されてエネルギーになるときに約0.3ℓの水分を摂取できるため、残りの約 1.2ℓを飲料水から摂取しましょう。

水分補給は欠かせませんが、だからといって過剰に摂取すれば良いわけではなく、排出量と摂取量のバランスを保つことが大切です。

3.水を飲むおすすめのタイミング

先述のとおり、体内から水分が1%失われるとのどの渇きを感じます。すなわち、のどの渇きを感じたときは、すでに脱水が始まっている状態です。

のどの渇きを感じる前に、次のようなタイミングで水を飲みましょう。

  • ・起床時:睡眠中に呼気や皮膚を通して水分を失う

  • ・運動時:発汗により水分やミネラルを失い、脱水や熱中症になりやすい

  • ・入浴時:入浴にともなう発汗で水分を失う

  • ・就寝時:睡眠中の水分不足を緩和するため、就寝前も水分を補給する

なお、一度に大量の水を飲むと、体内のナトリウム濃度が低下し「水中毒」になるおそれがあります。コップ1杯(150~250mℓ程度)の水をこまめに飲むようにしましょう。

一日に必要な水分量を知り水分不足にならない生活を心がけましょう

水分不足になると、栄養素・代謝物の運搬や体温調節などが行なえなくなり、生命の機能維持に支障が出ます。

健康を維持するためには、普通に生活を送っていても、成人で一日当たり約2.5ℓの水分を補給しなければなりません。

食べ物に含まれる水分や、食べ物が分解されエネルギーになるときに摂取できる水分を考慮し、健康成人の場合、目安として一日当たり約 1.2ℓ程度を飲料水から摂取してみましょう。起床時・運動時・入浴時・就寝時といったタイミングでこまめに水分を補給しましょう。

監修者情報

氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。