1.しじみに多く含まれる栄養素とその働き
しじみから摂取できる栄養素の概要、体内でのおもな働きについて解説します。
1-1.鉄分
しじみには、鉄分が多く含まれています。
鉄分はミネラルの一種であり、赤血球内のヘモグロビンに多く含まれるものです。ヘモグロビンは、体内で酸素を運ぶという重要な役割を担っていますが、鉄分が減るとヘモグロビン値も低下するため、酸素供給が滞ってしまいます。
酸素供給が滞ると、頭痛や息切れが起こりやすくなったり、運動機能が低下したりすることがあります。
1-2.アミノ酸
しじみは、タンパク質の合成に欠かせない「必須アミノ酸」を豊富に含んでいます。
アミノ酸はタンパク質の構成に関わる20種類の有機化合物であり、このうち9種類が必須アミノ酸、残りの11種類が非必須アミノ酸です。1種類でも欠けた場合、タンパク質を合成できなくなってしまいます。
必須アミノ酸は体内で生成できないため、しじみをはじめとする必須アミノ酸を含んだ食べ物から摂取しなければなりません。
また、しじみはアミノ酸の一種である「オルニチン」や「タウリン」の含有量が多いことも特徴です。これらは肝臓の働きを助ける効果があるとされているので、お酒を飲むよく人の健康をサポートしてくれます。
1-3.ビタミンB12
しじみは貝類のなかで、ビタミンB12を最も多く含んでいます。生のしじみより、水煮のほうが多く含むことも特徴です。
ビタミンB12は赤血球の形成やタンパク質の生合成、アミノ酸や脂肪酸の代謝といった役割を担っています。
2.しじみで効率良く鉄分を摂る方法
しじみに含まれる鉄分は、体への吸収率が高い「ヘム鉄」です。生より水煮のほうが鉄分を多く含んでいるので、より効率良く摂取することができます。
しじみは丸ごと食べたほうが多くの鉄分を摂取できるため、汁物にした場合は、出汁だけではなく身も食べることが大切です。
鉄分不足を防ぐためにも、スープやパエリアなどさまざまな料理にしじみを取り入れてみましょう。
3.しじみなどの食べ物で鉄分の吸収率を上げるポイント
鉄分の吸収率を上げるためには、以下の2つのポイントを意識しましょう。
3-1.ビタミンCを一緒に摂る
鉄分は、ビタミンCと一緒に摂ると、吸収されやすくなります。
また、植物性食品に含まれる非ヘム鉄は、しじみなどの動物性食品に含まれるヘム鉄より吸収率が低めです。ヘム鉄とともに摂取すれば、非ヘム鉄の吸収率も上がるため、できるだけ一緒に摂ることを意識しましょう。
以下は、ビタミンCや非ヘム鉄を多く含む食べ物の一例です。
【ビタミンC】
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・かぼちゃ
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・カリフラワー
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・小松菜
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・みかん
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・グレープフルーツ
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・いちご
【非ヘム鉄】
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・ひじき
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・納豆
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・油揚げ
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・木綿豆腐
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・小松菜
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・切り干し大根
メニューを考えるときは、上記の食べ物を意識して取り入れましょう。
3-2.鉄分の吸収を阻害するものは控える
鉄分の吸収を阻害するものは、タンニン・不溶性食物繊維・加工食品です。
タンニンは茶類に多く含まれるので、食前食後の30分や食事中は、コーヒーや濃いお茶を飲まないようにしたほうがよいでしょう。
食物繊維は「水溶性」と「不溶性」に分類されますが、後者の不溶性食物繊維を摂ると鉄分がともに排出されてしまいます。不溶性食物繊維を多く含む食べ物は、下記のとおりです。
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・玄米
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・おから
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・ふすま
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・根菜類
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・きのこ類
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・豆類
また、以下のような加工食品には、鉄分の吸収を妨げる「リン酸塩」が多く含まれています。
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・ハム
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・ソーセージ
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・練り製品
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・清涼飲料水
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・スナック菓子
しじみから効率良く鉄分を摂取したいときは、これらの飲み物・食べ物を控えたほうがよいでしょう。
しじみで鉄分不足を解消しましょう
現代の日本人には、鉄分不足が多く見られます。体内の鉄分が足りなくなると、赤血球のヘモグロビン値も低くなります。その結果、酸素がきちんと供給されにくくなってしまうため、日頃から鉄分をしっかり摂取して防ぎたいところです。
しじみは鉄分に加えて、タンパク質を構成する必須アミノ酸、赤血球の形成などに関わるビタミンB12が豊富なので、体に必要な栄養素をまとめて摂取できます。
健康の維持・促進のためにも、ぜひ日頃の食事メニューにしじみを取り入れてみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。