1.ビタミンB6とは
ビタミンB6は複数の化合物の総称です。ビタミンB6として働く化合物には、ピリドキサール、ピリドキシン、ピリドキサミンがあります。
さらに、これらの化合物にリン酸が結合したピリドキサール5́-リン酸(PLP)、ピリドキシン5́-リン酸(PNP)、ピリドキサミン5́-リン酸(PMP)も消化の過程でビタミンB6になるため、体内に吸収後はビタミンB6として働きます。なお、体内ではPLP、PMPの状態で存在していることが多いでしょう。
また、ビタミンB6は水溶性ビタミンの一種で、体内で血液といった体液に溶け込み、余分なものは尿として排泄される性質があります。
2.ビタミンB6のおもな働き
ビタミンB6は、およそ100種類もの酵素に対する補酵素としての役割を担っています。具体的な働きは以下のとおりです。
どれも健康の維持には欠かせない働きです。そのため、ビタミンB6の摂取量に過不足があると、さまざまな不調を引き起こすことがあるでしょう。
3.ビタミンB6の不足
ビタミンB6が単独で不足することはほとんどありません。一般的には、ビタミンB12や葉酸など他のビタミンB群の不足と同時に起こるとされています。
ビタミンB6は水溶性ビタミンで余剰分は尿中に排出されるため、普段の食事で過剰摂取となることはほとんどありません。ただし、「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、上限量が設けられています。
4.ビタミンB6の一日の摂取量
ビタミンB6の一日あたりの推奨量・目安量は下表のとおりです。
性別 |
男性 |
女性 |
年齢 |
推奨量(単位mg/日) |
推奨量(単位mg/日) |
0~5ヵ月 |
0.2※ |
0.2※ |
6~11ヵ月 |
0.3※ |
0.3※ |
1~2歳 |
0.5 |
0.5 |
3~5歳 |
0.6 |
0.6 |
6~7歳 |
0.8 |
0.7 |
8~9歳 |
0.9 |
0.9 |
10~11歳 |
1.1 |
1.1 |
12~14歳 |
1.4 |
1.3 |
15~17歳 |
1.5 |
1.3 |
18~29歳 |
1.4 |
1.1 |
30~49歳 |
1.4 |
1.1 |
50~64歳 |
1.4 |
1.1 |
65~74歳 |
1.4 |
1.1 |
75歳以上 |
1.4 |
1.1 |
妊婦(付加量) |
─ |
+0.2 |
授乳婦(付加量) |
─ |
+0.3 |
※1歳未満は目安量
※推奨量:ある性・年齢階級に属する人々のほとんど(97~98%)が1日の必要量を満たすと推定される1日の摂取量
※目安量:推定平均必要量・推奨量を算定するのに十分な科学的根拠が得られない場合に、ある性・年齢階級に属する人々が、良好な栄養状態を維持するのに十分な量
※上限量:ある性・年齢階級に属するほとんどすべての人々が、過剰摂取による健康障害を起こすことのない栄養素摂取量の最大限の量
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定検討会「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
2019年の国民健康・栄養調査において、ビタミンB6の摂取量は男性で平均1.26mg/日、女性で平均1.09mg/日となっており、成人の推奨量で考えると男女とも少し足りません。
なお、妊娠中は胎児の成長のためにたんぱく質の必要量が増し、その代謝に使われることから普段より多くのビタミンB6が必要です。また、母乳中にビタミンB6が含まれるため、授乳中の方にも付加量が設定されています。
ビタミンB6不足にならないよう、表を参考に適切な量の摂取を心がけましょう。
5.ビタミンB6を含む食べ物
ビタミンB6を豊富に含む食べ物は、お肉、魚、ジャガイモやサツマイモなどのでんぷん質の野菜、柑橘類を除く果物などです。以下に、ビタミンB6を豊富に含み、日常的に摂取しやすい食べ物をまとめているので参考にしてみてください。
5-1.肉類
食品名 |
ビタミンB6含有量 (100gあたりmg) |
ビーフジャーキー |
0.85 |
豚ヒレ(焼き) |
0.76 |
鶏むね 皮なし(焼き) |
0.66 |
鶏ささみ(ゆで) |
0.63 |
鶏ひき肉(焼き) |
0.61 |
5-2.魚類
食品名 |
ビタミンB6含有量 (100gあたりmg) |
びんちょうまぐろ(生) |
0.94 |
かつお(生) |
0.76 |
むろあじ(開き干し) |
0.59 |
まさば(焼き) |
0.54 |
さんま 皮つき(焼き) |
0.42 |
5-3.穀物、イモ類
食品名 |
ビタミンB6含有量 (100gあたりmg) |
フライドポテト |
0.35 |
さつまいも(蒸し) |
0.27 |
ポップコーン |
0.27 |
じゃがいも(蒸し) |
0.22 |
玄米 |
0.21 |
5-4.野菜、果物
食品名 |
ビタミンB6含有量 (100gあたりmg) |
ブロッコリー(花序 油いため) |
0.52 |
かぶ(漬物) |
0.42 |
ししとう(油いため) |
0.40 |
バナナ(生) |
0.38 |
モロヘイヤ(生) |
0.35 |
文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」より引用)
このように、ビタミンB6は幅広い食べ物に含まれています。好みやライフスタイルなどに合わせながら、日々の食生活に取り入れてみるとよいでしょう。
ビタミンB6を適正量摂取しよう
ビタミンB6は、体内のさまざまな代謝に必要なビタミンです。
ビタミンは体内でほとんど作られないので、食品から摂取する必要があります。ビタミンB6はお肉や魚、ジャガイモなどに多く含まれますが、さまざまな栄養素を適切に摂取するためにはバランスの良い食事を摂ることが大切です。この機会に、食生活を見直してみてはいかがでしょうか。
監修者情報
氏名:井林雄太(いばやし・ゆうた)
総合病院勤務。大分大学医学部卒。
日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。