1.汗の働きと汗の種類
普段、何かの拍子に出る汗ですが、汗には人間の体調を整える大切な役割があります。汗が体を調節する仕組みと、汗の種類を見ていきましょう。
1-1.汗の働き
多くの人の平熱は36~37度です。体温が体調に与える影響は大きく、わずか2度上がるだけでも体調を崩し、ときに命に関わることもあります。このように一定の体温を保ち続けることは、生命維持のうえで重要です。
汗は、人間の体温を一定に保つ役割を持ちます。汗はほぼ水でできており、汗をつくるのは皮膚表面に存在する汗腺という器官です。
体の温度が上がると、汗腺から体内の水分を汗として放出します。汗が蒸発する際、皮膚の熱が気化熱として奪われるため、皮膚表面の温度が下がります。
夏の暑い日や激しいスポーツをすると発汗量が増えるのは、体温の過剰な上昇を防ぐためです。
1-2.汗の種類
汗とひと言でいっても、汗が出るシチュエーションによって、大きく3種類に分けられます。
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・温熱性発汗:暑いときにかく汗
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・精神性発汗:ストレスを感じたときにかく汗
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・味覚性発汗:辛いものを食べたときにかく汗
温熱性発汗は、体温を調節するための汗です。気温が高い環境や、スポーツや労働で体温が上がったときに、体温を下げるために発汗します。
精神性発汗は、緊張や不安、怒り、痛みを感じたときに手のひらや足の裏にじわっとかく汗です。汗で手のひらや足の裏を濡らすことで、摩擦力や手足のセンサー感度を上げる目的があるともいわれています。
味覚性発汗は、刺激物を口にしたときに、おもに顔や頭にポツポツと噴き出す汗です。トウガラシに含まれるカプサイシンが口のなかに存在する温度センサーを刺激することで熱と痛みを感じ、発汗神経を刺激して発汗につながります。
2.良い汗をかく方法
汗のなかには、いわゆる「良い汗」と呼ばれるものがあります。ここでは、良い汗をかくと得られるメリット、良い汗をかくための方法を紹介します。
2-1.「良い汗」とは
良い汗は、さらっとした汗です。少しずつ汗をかくと、塩分が少なくべたつきの少ない良い汗になります。また、汗をかき始めるタイミングが早いため、体温の上がりすぎを防ぎ、心拍数の増加も抑えられます。汗の臭いが気になる方もいるかもしれませんが、良い汗の場合はほとんど臭わないのが特徴です。
2-2.良い汗をかく方法
運動をすると人間は汗をかきますが、運動を続けていると暑さに順応しやすくなって、さらっとした良い汗をかきやすくなります。つまり、良い汗をかくためには運動習慣の継続が大切です。目安としては、軽く汗ばむ程度(中等度以上の強度)の運動を毎日1回、90分よりやや長めに行なうとよいでしょう。
運動中はもちろん、運動前後も水分やミネラルの補給を忘れないでください。屋外の気温を利用して一日2~3時間ほど自然に発汗することや、湯船につかる習慣も有効です。
普段の生活で汗をかくクセがついていないと汗を出す汗腺の機能が衰え、汗が出にくくなり、必要なときに体温調節がうまくできなくなるおそれがあります。汗腺の働きを良くするためにも、運動習慣を身につけましょう。
汗をかくような運動習慣を日常生活に取り入れよう
汗には蒸発するときに皮膚の熱を奪うことで、体温を一定に保つ働きがあります。気温が高いなかでの作業など、いざ発汗が必要な場面で上手に汗をかけないと体調を崩すことにつながりかねません。
汗腺の機能を鍛えるためにも、毎日の運動習慣は大切です。運動を続けることで、べたつきや臭いの少ない良い汗を出しやすくなります。
良い汗をできるだけたくさんかいて、暑さに負けない体をつくりましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医