1.原因が特定できない腰痛
腰痛でクリニックを受診する人の8割以上が、「非特異的腰痛」を抱えているとされています。非特異的腰痛とは原因は明らかではないものの、心配すべき異常や病気がなく、危険ではないとされる腰痛です。俗にいうぎっくり腰(腰椎捻挫)なども画像検査での原因特定が難しいため、非特異的腰痛に含まれます。
非特異的腰痛の原因の一つが、椎間板の髄核(椎間板にあるゼラチン状の組織)のズレです。前かがみや猫背といった悪い姿勢が続くと中心にあるべき髄核が後方にズレます。髄核が後ろにズレると腰に痛みやだるさを感じます。
一方で、ハイヒールで立ち続けたり、腰を反らしたりした状態は髄核が前にズレて腰痛につながります。その他にも、腰に負担がかかる体勢で何かを持ち上げるのも髄核がズレる原因です。
また、心理的ストレスは痛みを和らげる脳内物質の分泌を低下させて痛みを感じやすくさせるほか、自律神経の乱れによって腰痛や肩こりなどの症状を引き起こすと考えられています。
非特異的腰痛を予防するためには、正しい姿勢を心がけ、ストレスをためないようにしましょう。また、髄核のズレが軽いうちはストレッチによって改善できます。立ち仕事などで腰を反らすクセがある人は腰をかがめる、デスクワークで猫背になりやすい人は腰を反らすなどの体操で髄核を中心に戻しましょう。こまめに髄核のズレを戻すことで、ぎっくり腰などの予防につながります。
2.原因が特定できる腰痛
診察や 画像診断で原因が特定できる腰痛を「特異的腰痛」といい、腰痛全体の約15%を占めています。特異的腰痛の代表例とされるのが椎間板ヘルニアです。
また、変形性脊椎症などもあります。その他、循環器科、泌尿器科、消化器科、婦人科などの幅広い病気が腰痛の原因になりえます。
腰痛を引き起こす病気はさまざまであり、それぞれに治療法が異なるため正しい診断が大切です。長引く腰痛や、症状が悪化する場合は早めに病院を受診しましょう。
3.特異的腰痛の症状と考えられる原因
特異的腰痛の原因と症状には、次のようなものがあります。腰痛がある方は、自身の症状と照らし合わせて参考にしてください。
考えられる原因 |
症状 |
骨折 |
・転倒後に痛み、日常生活に支障がある など |
圧迫骨折 |
・鎮痛薬を使用しても長期間痛みがとれない、脊椎以外の病気がある など |
椎間板ヘルニアによる重い神経症状 |
・肛門や性器周囲の熱感やしびれ ・尿が出にくい ・尿漏れ など |
椎間板ヘルニアによる筋力低下・脳や脊髄の病気 |
・足の脱力感があって歩きづらい など |
椎間板ヘルニアによる神経症状(坐骨神経痛) |
・痛みやしびれがお尻からひざ下まで広がる など |
参照:東京大学医学部附属病院 22世紀医療センター「非特異的腰痛とは」
ここで紹介しているのはあくまでも一例です。上記の症状がある方は、速やかに整形外科を受診するようにしましょう。
腰痛対策は原因と症状に合わせたものを
腰痛には原因がわかる特異的腰痛と、原因がわからない非特異的腰痛があります。腰痛の多くは非特異的腰痛で、悪い姿勢やストレスなどによって引き起こされます。
腰痛対策のためには、日頃から正しい姿勢を心がけるとともに、ストレッチで体のズレを元に戻すことが大切です。また、ストレスをためずにこまめに発散することも腰痛対策になります。
一方で特異的腰痛では、腰痛の原因となっている病気や怪我の治療が必要です。正しい腰痛治療のためには、検査や診断が欠かせません。
長引く症状や激しい痛みがある場合は自己判断せずに、医師に相談しましょう。
監修者情報
氏名:梅村 将成(うめむら・まさなり)
外科医として地方中核病院に勤務中。
消化器外科のみならず総合診療医として、がん治療(手術・抗がん剤・緩和治療/看取り)を中心に、幅広く内科疾患・救急疾患の診療を行なっている。
資格:医師免許・外科専門医・腹部救急認定医