1.腸内細菌とは?
腸内細菌とは、大腸に存在している細菌のことです。
ヒトの大腸には、おおよそ1,000種類の腸内細菌が生息しています。これは、体内に存在する細菌の9割ほどを占め、その数は100兆から1000兆個にも及ぶと言われています。人体を構成する細胞数がおよそ60兆個と言われているため、腸内細菌の数はそれを上回ることになります。
腸内細菌は、大きく分けて善玉菌・悪玉菌・日和見菌という、3つの種類があることも特徴です。腸内細菌の種類は人それぞれ異なり、食生活や在住国の違いによっても変動します。
また、腸内細菌の数は年齢によって増減しますが、菌の種類そのものが一生で変わることはほとんどありません。抗菌薬の服用などで一時的に変動するものの、時間が経つと元通りになります。
2.3つの腸内細菌の特徴
3つの腸内細菌は、それぞれ以下のような特徴を持っています。
2-1.善玉菌
善玉菌はヒトの体を守ってくれる腸内細菌で、乳酸菌やビフィズス菌などのことを指します。糖分や食物繊維を発酵させて酢酸・乳酸などを生成し、腸内を弱酸性に保つのがおもな働きです。
腸内が酸性になると、後述する悪玉菌の増殖を抑えられるようになります。その結果、腸内で毒性物質が生成されることを防ぎつつ、腸の運動をより活発にすることが可能です。
また、善玉菌は大腸に備わっている、腸管免疫のシステムにも寄与しています。病原菌やウイルスを防ぐためには、腸内の善玉菌を増やすことが大切です。
2-2.悪玉菌
悪玉菌は、体に悪影響をもたらす腸内細菌のことです。おもに、大腸菌(有毒株)やブドウ球菌、ウェルシュ菌などを指します。
腸内の悪玉菌が増えすぎると、毒性物質が生成されるため、結果的に健康を損なってしまいます。悪玉菌は、タンパク質・脂質メインの食事や便秘、ストレスなどにより増加するため、注意が必要です。
しかし、悪玉菌には肉類などのタンパク質を分解し、便として処理・排泄するという重要な働きもあるので、一概に不要な菌とはいえません。
2-3.日和見菌
日和見菌は、善玉菌・悪玉菌のうち優勢なほうと同様の働きをする腸内細菌です。おもな菌種としては、大腸菌(無毒株)やバクテロイデスなどが挙げられます。
3つの腸内細菌において、日和見菌は最も数が多い存在です。腸内環境を健康に保つためには、日和見菌を善玉菌優勢の状態にする必要があります。
3.腸内の善玉菌を増やすにはどうしたらいい?
腸内の善玉菌を増やす方法としては、以下の2種類が挙げられます。
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・「プロ」バイオティクスの摂取
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・「プレ」バイオティクスの摂取
プロバイオティクスは、体に良い影響を与える「生きた善玉菌」です。ヨーグルトや乳酸菌飲料、漬物など、乳酸菌やビフィズス菌を含む食品から直接摂取できます。これらの菌は腸内に存在し続けることはないため、毎日継続して摂取しましょう。
一方、プレバイオティクスは「腸内に存在する善玉菌を増やす成分」です。こちらは、オリゴ糖を含むたまねぎ・アスパラガス・大豆・バナナなどから摂取できます。
腸内細菌の善玉菌を増やすことは健康への近道
健康の維持・促進を図るためには、腸内細菌の一つである善玉菌を増やすことが大切です。悪玉菌の増殖を抑えて、腸内環境を整えてくれるため、結果として病気の予防につながることが期待できます。
善玉菌は、プロバイオティクスとプレバイオティクスを摂取することにより、増やすことができます。ぜひ、日々の食事メニューに該当する食品を取り入れてみましょう。
監修者情報
氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。