食後に痰が絡むのはなぜ?
痰の役割について解説

食事中や食後に、痰が絡んでガラガラ声になったり、痰が出るのが気になったりしていないでしょうか。不快に感じるその症状、実は“あなたの健康を守るための防御反応”でもあるのです。

今回は、食後に痰が絡む理由と痰の役割を紹介します。痰や咳が長く続く場合は、何か病気が潜んでいるかもしれません。疑われる病気や症状についても解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

1.食後に痰が絡む理由

食後に痰が絡む症状は、飲み込む力の衰えによって起こる嚥下障害の一つです。飲み込む力が衰えると、のどに食べ物が残ってしまってしまいます。のどに残った食べ物をそのまま放置していると、気管に唾液が入り込む危険性があるのです。

そのような事態を招かないためにも、体はのどに残った食べ物を体外に排出しようとして、痰を出します。

2.痰の役割とは?

痰の役割は、体内に侵入した外敵(ウイルス・細菌・異物など)を口から外に追い出し、体を守ることです。

私たちが吸い込んだ空気は、気道を通って体内に入ります。空気内に潜む外敵から身を守るために、気道は常に分泌液を出して濡れた状態をキープし、気道に外敵が侵入した場合は、分泌液の量を増やして外敵を包み込みます。

分泌液に包まれた外敵は、気道表面の流れ(常に肺からのどへ細かく運動している流れ)にのって、肺→のど→口へと送り出され、痰として体外へ排出されるのです。

痰をいち早く体外へ追い出すために、咳をともなうこともあります。

3.痰や咳が続く場合は病気の可能性も

痰が出る病気では、多くの場合は咳をともないます。

咳が続いている期間によって、以下のように大まかな原因と病気が予想されます。

【咳の期間と疑われるおもな病気】

咳の期間 原因 疑われる病気
3週間未満 多くが感染によるもの 風邪
インフルエンザ など
3週間以上8週間未満 多くが感染後の名残によるもの アレルギー
胃酸逆流 など
8週間以上 多くが感染以外によるもの 咳ぜんそく
アトピー咳嗽
副鼻腔気管支症候群
胃食道逆流症 など

参照:公益財団法人長寿科学振興財団「健康長寿ネット

3-1.摂食嚥下障害

摂食嚥下障害は、おもに食事中に「飲み込みにくい」「むせる」といった症状が現れるものです。しかし、食事中の症状がない場合も多く見られます。

摂食嚥下障害で見られる痰や咳の症状は、以下のとおりです。

  • ・夜間に咳込む

  • ・食後の痰絡み

  • ・痰が絡んだようなゴロゴロとした声

3-2.逆流性食道炎(胃食道逆流症)

痰や咳が続く場合は、逆流性食道炎(胃食道逆流症)の疑いもあります。痰や咳のほかに、以下のような症状がある場合は要注意です。

  • ・胸やけ

  • ・のどの違和感

  • ・苦い液体がのどに上がってくる

  • ・お腹の張り

  • ・げっぷ など

3-3.アトピー咳嗽(がいそう)

咳が3週間以上続く場合は、アトピー咳嗽の疑いがあります。おもな症状は、咳や痰の絡んだような感じ、のどのイガイガ感などです。

就寝時や起床時、深夜から早朝に症状が出ることが多く、引き金となる要因には、次のようなものが挙げられます。

  • ・気温の変化

  • ・タバコの煙

  • ・運動

  • ・会話

  • ・ストレス など

3-4.副鼻腔気管支症候群

痰をともなう咳が2カ月以上続く場合は、副鼻腔気管支症候群が疑われます。副鼻腔気管支症候群は、下気道の炎症性の病気(慢性気管支炎など)と慢性副鼻腔炎が合併した状態です。

3-5.咳ぜんそく

咳ぜんそくは、慢性的に咳だけが続く病気です。痰や発熱といった風邪症状は治まっているものの、咳が2カ月経過しても治まらない場合は、咳ぜんそくが疑われます。

ぜんそくと同様に、気管や気管支があらゆる刺激に過剰に反応して狭くなることが原因です。

刺激となるおもな要因には、以下が挙げられます。

  • ・ハウスダスト

  • ・花粉

  • ・ペットの毛

  • ・気温の変化

  • ・カビ

  • ・タバコの煙

  • ・運動

  • ・ストレス など

痰や咳が続く場合は、早めの受診で適切な治療を

食後に痰が絡むのは、体を守るための防御反応によるものです。加齢などにより飲み込む力が衰えると本来食道を通って胃に進むべき食べ物が気道に入ってしまうことがあり、肺に入ると誤嚥性肺炎を起こします。それに対して、咳や痰を出して食べ物が気道の奥に入るのを防いでいます。

食後の痰や咳が長く続く場合は、治療が必要な病気が潜んでいるおそれもあるため、早めに受診して適切な治療を受けましょう。

監修者情報

氏名:高橋健太郎(たかはし・けんたろう)
循環器内科医として臨床に関わりながら、心血管疾患のメカニズムを解明するために基礎研究に従事。現在はアメリカで生活習慣病が心血管疾患の発症に及ぼす影響や心血管疾患の新しい治療法の開発に取り組んでいる。国内・海外での学会発表や論文報告は多数。
日本内科学会認定内科医、日本循環器学会所属。